図書室の中心。
鳴島マオこと俺は、ノゾミちゃんに近づいていく。
「………こない、で」
ノゾミちゃんに繋がっているらしい本のような束が飛んできたけど、斬り捨てた。
「こない、で、って、いってる、の、に」
電子音のように歪んだノゾミちゃんの声が聞こえる。
それでも俺は彼女に近づく。
「ノゾミちゃん、俺だ。鳴島マオだ」
「…………ま、お、く、ん………?」
「あぁ、そうだ。マオだ。ノゾミちゃん、俺がわかるか!?」
「まお……くん……」
攻撃が止んだ。
ノゾミちゃんは俺を敵じゃないと思ってくれているらしい。
「どうしたんだい! そんなバケモノみたいになっちゃって!」
「わ、たし、……あいつ、ら、が、きえ、れば、いい、なんて、ねがった、から、あん、な、こと、に、なった、って……」
「あいつらって……龍胆、飛田、隅原の三人組のことか!?」
「そう。まお、くん、だって、おもってた、ん、で、しょう?」
「そうだとも。でも、あれは俺たちが願ったからそうなったわけじゃないんだ! 偶然の一致なんだ!」
「ぐう、ぜん、だった、の?」
ノゾミちゃんが言う。
「ノゾミちゃん。将棋トリオが消えてから、誰か君に接触したか教えてくれるか?」
「………。はく、い、を、き、た、おと、こ、が、わ、たし、に、いった、の」
白衣の男……!?
「――お前が望みさえすれば、この世界をお前の思うように変えれるとね」
ノゾミちゃんの背後から、ゆらりとその白衣の男が姿を表した。
「お前か! ノゾミちゃんをバケモノに変えたのは!」
「そのとおり。……君とは初対面かな」
俺の感情に強く反応したのか、刀が蛮刀のような姿に変わる。
「おやおやおや。少し穏やかじゃあないみたいだねぇ」
気がつくと、俺はその蛮刀を振るっていた。
白衣の男を斬り裂いたと思いきや、その男は斬られたところから縫合するように再生したのだ。
「全く……。君は少し乱暴がすぎる」
「邪魔だ。どけ」
「どかないよ」
「どけ」
「どかないよ」
「ど、け」
この男を斬り裂かねば怒りが収まらないほどに、キレていた。
それぐらい俺は怒りの感情に支配されていた。
「おお、こわいこわい。だけど、君みたいな人間に対してこういうのを用意できるのさ」
マサムネが燃やし尽くしたダークネスリリカと、リリカの仲間であるアストレアが闇堕ちしたような姿をしたバケモノが現れた。
「……消えろ」
ダークネスリリカとダークアストレアを一太刀で霧散させる俺。
「ふぅむ……ダメか。ならば……」
霧散したリリカとアストレアが縫合したようなバケモノが俺の目の前に現れる。
「そんなものを用意して、俺の意志を砕こうっていうのか? 自分はよ」
「さあてね。それは君の考え方次第だよ」
あのバケモノはさしずめ『悪意縫合ルミエトレア』というところか。
だが、そんなことは俺に関係なかった。
――バケモノは斬り捨てる。
「そんな悪意で俺の心を砕こうなどと!」
蛮刀は再び姿を変え、光の剣となり、縫合されたリリカとアストレアは、その光の刃の前に消えた。
「そんなにこの女の子が大事かい?」
「当たり前だ!」
「そうかい。なら、僕を倒して……」
白衣の男が言い切る前に、淡い光を放つ刃が飛んできた。
「おっと……」
「マオ、その白衣の男は私たちに任せて、君はノゾミという女の子を救って!」
「ユキミさんか! すまない」
光の剣を携えながら、俺はノゾミちゃんと再び対峙する。
「ノゾミちゃん……俺が君を救う」
剣の刀身に手を添える。
「――フラッシュブレード」
刀身をなぞると、より一層の光を放つ。
その光は青く輝き、ノゾミちゃんに寄生するバケモノを斬れるほどになった。
「
こういう必殺技には、こういう掛け声が必要だと思っているのが、俺のポリシー。
青白い閃光の刃は、ノゾミちゃんとバケモノをバラすことに成功したのだ。
「チィッ……。次はこう上手く行くと思うなよ、クソガキ共が!!」
バケモノは消え去り、校舎が元に戻りつつあった。
それが消えたあとも、俺の手にした武器はキーホルダーに姿を変えて残っていたのだ。