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最終話 解放されたから、もう笑い話でいいよ

 俺はあのぶっちゃけから一ヵ月で家を出た。

 元々荷物が少ないのもあったが、父さんが出来るだけ早く手配してくれたのもある。

 んで最低限の家具等々の荷解きだ、新品の家具はいいな……そしてさようなら俺の貯金。

 まあしょうがないか。


「幸紀、何思い出にふけってるんだ?」

「いや何、新しい新生活にワクワクしているのさ」

「まあ気持ちはわかる、あの家は地獄だったろ?」

「あー……終わればいい思い出と思えるよ」

「美化すんなよ?」

「ああそうだな」


 コイツは親友の神奈川かながわ祐樹ゆうきだ。

 モノ作りが得意な奴でなんか手広くやっている。

 証拠集めも祐樹が居たから思いついたものだ。


「そいや家族とはどうなったんだ?」

「どうなったとは?」

「関係性とか?」

「ああ……別に変わらんよ? だだ……」

「ただ?」

「各々色々とあったようだが」

「ふむ、聞いていいなら聞かせてくれ」

「今まで手伝ってくれたしな」


 んじゃ語っていくか。


「両親は変わらないかな? 妙に優しくなったけど、そこにつけあがらないようにしないとな」

「お前は本当に人間出来てるな、俺なら恨み通してるよ」

「いやいや、両親はそんなに悪くないだろ? 元凶じゃないんだから」

「ま、保護者としてどうかなって感じ?」

「まあまあ落ち着けよ、両親にはそこまで怒ってない」

「ふむ……お前が言うならいいのか」

「そうそう」


 父さんに恨みは多少あったけども……それもいい思い出って奴になった。

 父さんも大人だ、流石人の上にして立つ立場で仕事をしている人だ。


 俺にも悪い所はあった、文句の一つでも言えばよかった。

 つまりは我慢しすぎたんだ……これは他の家族にも言える事だが。

 長女と次女は今の所許せないな、まあこちらから何かすることは無い。


「じゃあ優香さんは?」

「ああ、都合のいい家政婦が居なくなって四苦八苦しているらしい」

「お前も口が悪いねぇ」

「陰口は本人に聞こえない所でするものだ」

「ふむ、確かにそうだ」


 長女はあれから苦労しているようだ、まあ大学生だし働いてもいる。

 家事出来なくとも代行サービスとか使えばいいだろう。

 ま、ざまあみろって感じだ、やはり追い詰め過ぎるのは良くない。

 俺にまた不幸が襲い掛かったらたまったもんじゃない、逆恨みとかな。


「千里さんは?」

「ああ……なんか取り巻きに事情聴取された」

「は? 千里さんが? どの取り巻きに?」

「ああ、俺にだよ、千里の取り巻きが俺に質問してきたの」

「なるほどなるほど、何て答えたんだ?」

「知らない、家族でも俺は異性だ、君達が力になってくれと」

「おお、それっぽい返答だ、てか千里さんはどうなったんだ?」

「ああ……精神的ショックで部活を休んでいるらしい」

「お前アレいったのか?」

「アレ?」

「『お前創作物の暴力系ヒロインかよ』ってさ」

「ああー」


 そいや中学生の時にそん事を思ったな、次女はラノベとか読むタイプだった。

 俺も漫画とかアニメとかオススメされて……めっちゃ否定したなぁ。

 この暴力女のキャラクター嫌いと。


「いや、言わなかったよ」

「偉いな、俺には無理だ」

「考えてみろ? 背中刺されたら終るだろ?」

「……確かにな、有り得ない話ではない」

「でもビックリしたよ、千里に小言を言ったら謝ってきて……なんかもういいかなって」

「謝っている人間を追い詰めないか」

「家族のおかげで人を見る目は鍛えられたからな」


 商店街でバイトや地域のボランティアが功を奏したな。

 まあそれはいいや。


「でもこのご時世にさ、取り巻きが居たのはビックリした」

「まあ取り巻きなんてそんなもんだろ? 好き勝手解釈して崇拝して、崇める価値が無くなったら捨てる奴ら」

「お前も口が酷いな」

「親友の前だからだ、んで妹さんは?」

「ゆりか? ああ……うーん、少々怖がられているけど……変わらないかな」

「そうか、妹さんは何もしてなかったしな」

「ああ、少々昔勉強出来ないと笑われただけだ」

「他に比べたら全然だな」


 本当にそうだ、妹と母さん以外は……と思っていたんだが。

 性分なのか……もう許していいような感じがする。

 グチグチ終わった事を言うより、自分の為に使った方がいいわ。


「んで、これからどうするんだ?」

「無難に高校生やるよ」

「それもあるが晩御飯だな」

「ああ……んじゃちょいと奮発して外食だな」

「いいぜ、一人暮らし祝いだな」

「ああ」


 俺の復讐はひょんなことで終わった。

 ま、この話を聞いたら納得しない人達も居るだろうけども……

 これは俺の物語だ。

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