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第2話 缶詰め、冷凍食品

 フリーダム号を駐めたのは、ドラッグストア跡地だった。


「よーし、物資探し第一弾、行ってみようか!」


 そう言って、俺──松本秀人(まつもとしゅうと)は、意気揚々とドアを開けた。


 外は静まり返っている。

 ゴミと砂埃だけが、寂しげに風に舞っている。


「……おっかしいな。ゾンビ、出ないんだ?」


 拍子抜けしつつ、店の中へ。

 案の定、電気は通っていないが、昼間の光でそれなりに見える。壁にはひび割れ、床は雑草が割れ目から生えている。


 食品エリアを見つけた俺は、サクサクと物資探索を始めた。棚に並ぶホコリだらけの缶詰、袋菓子、インスタント麺。宝の山じゃないか!


「うわー、これ、全部タダとか最高すぎる!」


 リュックに手当たり次第詰め込む。が、問題は保存食だけじゃない。水、医療品……は真っ先に荒らされてる、それより何より……冷蔵食品!


「凍らせときゃ、ワンチャンいけるんじゃね?」


 そんな淡い期待を抱きながら、店員しか入れない「従業員専用」エリアへ向かう。


 暗い通路の奥。目指すは冷凍倉庫だ。


「冷凍ピザとか、アイスとか……あったら神だな」


 ウキウキしながら重い扉を押し開け──その瞬間、背筋が凍った。


 真っ白な霜に包まれた倉庫の奥。

 そこに、立っていた。


 全身霜まみれ。

 顔面も指もガチガチに凍り、青黒くなったゾンビが、カチ……カチ……と、不器用に首を傾げてこちらを見ている。


 ──おいおい、冷凍保存ゾンビって聞いてないぞ。


 一瞬たじろいだが、ゾンビの動きはスローモーションだ。

歩くというより、滑るようにヨロヨロと足を運んでくる。


「……遅っ!」


 思わずツッコミを入れる。


「……ま、いっか」


 余裕をぶちかましながら、冷凍食品の棚に近づく俺。

 ゾンビがカクカクとこちらに近づく間に、冷凍チャーハンをゲット。


 さらに一歩。冷凍餃子、ゲット。


 さらに──「冷凍たこ焼き!勝ち申した!!」


 ゾンビはようやく俺の数メートル手前まで来ていた。

 指先を伸ばしてくるが、あまりにも鈍すぎて迫力ゼロだ。


「はいはい、そこでストップなー」


 軽くスウェイで交わしつつ、戦利品をリュックに詰め込む。(※誰に言っているわけでもないが、ノリは大事だ)


 それにしても、ここまで接近されてもビビらない自分に、俺はちょっと感心した。


「……これ、もしかして、俺、ゾンビ耐性バリ高?」


 そう自画自賛しながら、最後に冷凍唐揚げをつかんだ。


「ありがとなー。君たちのおかげで冷凍食品補給できました!」


 軽口を叩きつつ、悠々と冷凍倉庫を後にする俺だった。

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