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第3話 呼び込みくん作戦発動!

 冷凍たこ焼きと唐揚げを手に入れ、上機嫌で店を出たその瞬間──


「……うわ、マジかよ」


 フリーダム号がゾンビに囲まれていた。


 十体、二十体じゃきかない。

 うじゃうじゃ、ガチャガチャ、フリーダム号に集まってはドアを叩いたり、窓を舐めたりしている。

 やめろ、不衛生だぞ!


「……いや、無理無理、あの数はさすがに笑えんて」


 俺は一歩下がり、深呼吸した。


 焦り? ない。

 武器? ない。

 でも──アイデアならある。


「さて、どうしたもんか……雑貨屋とかあったっけ?」


 ドラッグストア内をぐるっと見渡し、目についたのは雑貨エリア。


 割れて崩れたガラスの隙間から、懐中電灯で棚を照らす。

 食品コーナーの隣、BGM機器・販促用品の棚──その片隅に、あった。


『呼び込みくん』

~あの店先で流れてる耳に残るメロディをあなたの手に~


「見っけた!」


 小さなスピーカーに、陽気なループ音源。

 電池式で、スイッチを入れるだけ。


「これは……ゾンビホイホイだな」


 俺は4台の呼び込みくんを手に取り、単三電池と一緒にレジ袋に放り込んだ。


 ◆◆◆


 10分後、俺は店の外、フリーダム号から50メートルほど離れた位置にいた。

 柱の陰にしゃがみながら、呼び込みくん4台を等間隔に設置する。


 スイッチを同時に──


 ピロピロピロ〜 ピロリロリ〜♪

 ピロピロピロ〜 ピロリロリ〜♪


 軽快なリズムが、ドラッグストアの廃墟にこだまする。


「……来た来た来た!」


 ゾンビたちの群れが、一斉に首をもたげる。

 フリーダム号を忘れたかのように、足を引きずって音の方向へトボトボと歩き始めた。


「……マジで呼び込まれてるやん……」


 呆れつつも作戦成功にガッツポーズ。


 ゾンビたちが呼び込みくんに群がっている隙を見て、俺はフリーダム号にダッシュ!

 ドアの前に立つ数体を避け、手のひらをパネルにタッチ。


 認証完了──ようこそ、松本秀人様。


 自動ドアが「シュン」と開いた。


「ただいま、フリーダム号!!」


 飛び込んだ瞬間、ドアが自動で閉まり、隔絶された安全空間。

 汗だくになった体をソファに沈めた俺は、天井を見上げてぽつりと呟いた。


「……やっぱ、あのメロディ最強だな」


 呼び込みくんの効果は絶大だった。

 ゾンビは単純。音に釣られる。

 そして俺は、少しずつこの世界での“サバイバルのコツ”を掴みつつある──そんな気がした。


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