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第14話 次なる目的地は温泉──箱根へ!

 渋谷観光、完了。

 スクランブル交差点も109も、見た。

 ハチ公にも挨拶した。


 ──目的、達成。


「……って言うほど達成感もないけどな」


 なんとなく、達成したら世界が変わるかと思ってた。

 でも、特に何も起こらなかった。


「……まあいいや。ちょっと疲れたな」


 そんな時、ふと頭に浮かんだ。


「そうだ、温泉行こう!」


 旅で汗かいて、歩き回って、命の危機もあって。

 そんなときに求められるのは──

 湯気と静寂と、いいお湯だ!!


「決まりだ、次の目的地は箱根だ!!」


 早速、フリーダム号を発進。

 南へ、南へ──新たな湯けむりを求めて。


 ◆◆◆


 渋谷から、まずは三軒茶屋方面へ。


「道は簡単。首都高渋谷線の高架下をトレースすりゃいいだけだ」


 地面は割れ、標識は消えてるけど、橋脚は残ってる。

 それが、今の俺にとっての“道標”。


 目印を頼りに進み、用賀を過ぎたところで視界が開けた。


「よーし、多摩川越えるぞー!」


 橋は途中で崩れていたが、脇にあった旧道の鉄橋をうまく使って川を渡る。


 そして突入、川崎エリア。


「工業の街、川崎……昔は夜になると工場のネオンが輝いてて観光名所になってたんだってな」


 でも今は、静まり返った煙突と、錆びたタンクが風に軋んでいるだけ。

 まぁ、内陸を走ってる今のルートじゃ見えないけど。


 そのまま進めば、横浜。


「……海、見えないな」


 こっちは住宅街と倉庫の連続。

 だが、地名だけで気分は上がる。


「横浜ってだけで、中華街とかランドマークタワーとか連想しちまうよな……」


 ……そして、腹が鳴る。


「中華……チャーハン、餃子、小籠包……どうすんだコンニャロー……!!」


 絶望的に食欲が湧く。

 でもゾンビがうようよいる横浜中華街に突撃する勇気はない。


「食べたい……でも死にたくない……このジレンマ!」


 車内で意味のない悶絶を繰り返しつつ、進路は南西へ。


 現在地、大和付近。


「ここから素直に西に行けば箱根。だけど……せっかくだから海、見ようぜ」


 そう、せっかくここまで来たなら──

 湘南ルートで箱根へ向かおう!


「湘南、そして江ノ島!波と風とサザンが似合う街だぜ!」


 陽気なドライブが、まだまだ続く。

 温泉へ、ビールと中華の夢を抱きつつ、フリーダム号は海へ向けて走り出す。

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