「よし、ここを……キャンプ地とする!!」
たからかに宣言した俺の声が、だだっ広い空き地に虚しく響いた。
夜間移動はゾンビが活発になるからNGだ。
食って、寝て、明日動く。これがフリーダム式サバイバル。
今日の寝床は、富士山を遠くに望む見晴らしのいい場所。
月明かりに照らされたフリーダム号が、まるで小さな城のように見える。
気分は完全にキャンプだ。というか、この世界ではキャンプしかない。
満腹の腹をさすりながら、ベッドにもぐり込む。
「伊勢海老もカツオもマグロも、完璧だったな……」
明日の朝、また残り汁温めて飲もう。
そう思いつつ、心地よい疲労感と満腹感に包まれながら眠りについた。
◆◆◆
朝。
目覚ましの代わりに、ゾンビのうめき声ではなく鳥の鳴き声。
「お……今日は平和か?」
眠気まなこでキッチンへ向かい、昨夜の鍋をコンロにかける。
「残り汁……最高の朝食って、コレのことだよな……」
湯気の立ち昇る味噌汁をカップに注ぎ、一口。
「ふぅう……しみる……。オレは今、確かに“生きてる”って感じる……」
温泉よし。
海鮮よし。
となると――次は酒だ。
「日本人だもの。温泉・グルメ・酒。この三本柱は外せない」
旅の次なる目的地は決まった。
甲府! 甲州ワインだ!!
ワインは年代物が良いとよく聞く。
ってことは、むしろ今こそが飲み頃かもしれない(※個人の願望です)。
「問題は、見つけられるかどうか……だな」
でもな、ワインは瓶詰め、密閉、冷暗所保存が基本。
望みはある。むしろ腐らずに熟成してるかもしれない。
ルートは、富士→富士宮→富士山の裾野をかすめて山を越えていく。
「そういや、この辺……“ふもとっぱら”があるな」
キャンプアニメの聖地だ。
『ゆるキャン』のあの草原……今じゃ誰もいないけど、むしろ本来のキャンプ地感ある。
「でも今の俺、どこでもキャンプだからな」
ふもとっぱらに敬意を払いながら、軽く一礼して通過する。
道中、富士五湖のあたりを通ると、空気が変わる。
山道は荒れ放題。アスファルトの上に雑草が生え、電柱は倒れ、建物はツタに覆われていた。
「完全に……自然に還ってんな」
特に、青木ヶ原樹海の近くに入ったとたん、空気が違った。
深く、湿り気を含んだ空気。
木々が密集して、空の光も入ってこない。
「GPSも地図も役に立たねぇ。道があるのかも怪しいな……」
フリーダム号の装甲は無敵でも、行き止まりに入ると面倒くさい。
慎重に、少し遠回りして樹海エリアを迂回する。
山を越え、やがて甲府盆地が見えてきた。
「来たぞ……葡萄とワインの都、甲州!」
遠くに見えるぶどう畑は、もはや荒れ地のように広がっていた。
でもどこかの酒蔵、ワイナリーの地下に──生きたワインが眠っているはずだ。
「いざ、ワインハント!」
葡萄の香りに包まれる予感にテンションが上がる。