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第25話 琥珀色の奇跡を求めて

 甲府の街を抜け、フリーダム号は北へ向かって走っていた。


「いや〜、ワイナリー探してたはずなんだけどな……。気がつけばウイスキーまっしぐらよ」


 そんな独り言を呟いていると、左手に異質な建物が現れた。


 高いコンクリートの塀。

 鉄条網。

 見張り台。

 柵、柵、柵、そして柵。

「……なんか、柵しかないんだけど」


 すぐにピンと来た。


「これ、甲府刑務所か……!」


 いまや終末世界、出られない=入れない。

 逆に言えば、中にゾンビいない可能性、ある。


 もしかして、生存者が拠点にしてるかも?

 もしくはゾンビ駆逐して、安全地帯化してるかも?


 ……と、妄想だけは壮大に膨らむ。


「いや、でもな……武器、ないんだわ。なにと戦う気だよ俺……」


 いま突っ込んだら、普通にゾンビだらけで泣く未来しか見えん。


「とりあえずウイスキー飲もうぜ!」


 正義のように唱えたその一言で、刑務所は華麗にスルー決定。

 武器のない旅人にできるのは、逃げる判断の早さだけ。


 韮崎を通過。

 山が増えてきた。空が高い。

 どんどん気分が“飲むぞ!”モードに入ってくる。


「そういや、道の駅はくしゅうってこの辺だよな……」


 かつて湧き水が有名で、ライダーやキャンパーが集っていたあの場所。


「あえてスルーするのがツウ。今は蒸溜所一直線!」


 ◆◆◆


 そしてついに、見えてきた。


 巨大な看板。SUNTORY 白州蒸溜所。


 山の中腹に抱かれたその建物は、終末世界でも凛として残っていた。


 ガラスが割れてる箇所もあるが、石造りの構造は健在。

「……きたぜ。ここが聖地か」


 フリーダム号をそっと駐める。

 あたりは静か。ゾンビの気配も、いまは感じない。


「頼むぞ……瓶が残っててくれ……琥珀色の……夢が……!」


 勝手に緊張しながら、秀人はフリーダム号を降りた。

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