装備は、整った。
拳銃はグロック。
M4にはマガジン3本。
フリーダム号の荷台にはアメリカンなミリ飯と、白州のウイスキー。
まさに完璧な終末装備。
だけど、ふと思った。
「……わざわざ危険、冒す必要ある?」
カルト? ヒャッハー?怖いじゃん。
関わらなければ何も起こらないじゃん。
今は終末世界。
誰が正義とか、どこが正しいとか、関係ない。
生きてる奴が勝ち。生き残る奴が正解。
「ならさ……このまま旅して、逃げ切るのがベストじゃね?」
フリーダム号がある。
飯もある。酒もある。武器もある。
最強のキャンピングカーがあるのに、なぜ修羅場に突っ込まなきゃいけない?
「いいじゃないか……逃避行。北だ、北に行こう。目指すは北海道!」
宗谷岬で乾杯する。
キャンピングカーで大地を踏みしめながら旅する。
途中でうまいもんを探す。
「ロマンって、そういうことだろ?」
武器はちゃんと準備する。
グローブボックスに、グロックをマガジン入りでセット。
「……で、今出るのはナシだな。陽も落ちてきたし」
今日も、ここをキャンプ地とする!
ミリ飯を広げてみる。
「見せてもらおうか、アメリカのミリ飯の性能とやらを……」
メニュー:
• 豆の煮込み
• クラッカー
• ジャム
• ビーフジャーキー
• 粉末ジュース
• ナプキン
• プラスチック製スプーン
「ふむ……これで1200キロカロリーか。自衛隊のミリ飯の方が豪華だったって話もあるが……」
クラッカーにジャムを塗る。
ひと口。
「甘いな……さすがアメリカ。砂糖で栄養を取らせる気満々か」
豆の煮込みは、まあ、想像通り。
食えるだけありがたい。
ジャーキーは旨味が強くて、唯一ホッとする。
粉末ジュースを水で溶かす。
「……オレンジ風? いや、これは何味だ……?」
色はついてるが味が定かじゃない。
でも、のどが潤えばそれでいい。
◆◆◆
「……ふぅ。腹は満たされた。命もある。装備もある。旅の目的地も決まった」
今日は、もう寝よう。
朝になったら北を目指す。
終末の日本縦断、フリーダム号の冒険が始まる。