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第34話 狼を超えて、相棒を乗せて

「ようやく、晴れたな」


 何日ぶりだろう、雨じゃない朝。

 雲ひとつない青空に、気分も自然と上向く。

 よし、今日は走るぞ。思い切り北へ。


 国道4号線を北上。

 古河、小山、そして宇都宮。


「快調快調。青空ドライブ、最高じゃねぇか」


 フリーダム号もご機嫌だ。道路も乾いている。

 久々に気持ちいい旅の流れに、鼻歌が自然と出る。


 だが、その流れは──突然、途切れた。


「あれ……なんだ?」


 遠くの路肩に、小さな影が走っている。


 その後ろに、いくつも──いや、群れ。


「……狼!? うそだろ……?」


 こんなところに、野生の狼の群れ。いや、よく見るとどこかで見たような特徴。毛並みが荒れて、痩せた体。

 おそらく、どこかの動物園が崩壊して野生化した個体たちだ。


 その群れに追われているのは……柴犬。


「……放っておけるかよ!」


 アクセルを踏む。フリーダム号、加速!


 前方の狼の群れを一気に抜き去り、柴犬の横に並ぶ。

 扉をスライドオープン。


「いまだッ! のれーーーっ!」


 一瞬の判断だった。

 柴犬は駆けながら、ぴょんと飛び──扉をすり抜けた!


 車内にアナウンスが流れる。


「未登録の柴犬が乗車しました。脅威がないので排除対象外です」


「おいおい、排除なんて物騒なこと言うなよな……」


 扉を閉めて、アクセル全開。

 フリーダム号、狼の群れを後方に置き去りにして走り去る。


「おまえ、よく無事でいたな」


「わふっ、わふわふ!」


 柴犬は興奮気味にしっぽをブンブン振っている。

 体は薄汚れているが、怪我はなさそうだ。


「ここにいるなら、行儀良くしろよ」


「わふ!」


「元気いいじゃないか、相棒。よろしくな」


 終末世界に、新しい旅の仲間が加わった。

 頼れるかはわからない。言葉も通じない。

 けど、こいつは……信じていい気がする。


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