「ようやく、晴れたな」
何日ぶりだろう、雨じゃない朝。
雲ひとつない青空に、気分も自然と上向く。
よし、今日は走るぞ。思い切り北へ。
国道4号線を北上。
古河、小山、そして宇都宮。
「快調快調。青空ドライブ、最高じゃねぇか」
フリーダム号もご機嫌だ。道路も乾いている。
久々に気持ちいい旅の流れに、鼻歌が自然と出る。
だが、その流れは──突然、途切れた。
「あれ……なんだ?」
遠くの路肩に、小さな影が走っている。
その後ろに、いくつも──いや、群れ。
「……狼!? うそだろ……?」
こんなところに、野生の狼の群れ。いや、よく見るとどこかで見たような特徴。毛並みが荒れて、痩せた体。
おそらく、どこかの動物園が崩壊して野生化した個体たちだ。
その群れに追われているのは……柴犬。
「……放っておけるかよ!」
アクセルを踏む。フリーダム号、加速!
前方の狼の群れを一気に抜き去り、柴犬の横に並ぶ。
扉をスライドオープン。
「いまだッ! のれーーーっ!」
一瞬の判断だった。
柴犬は駆けながら、ぴょんと飛び──扉をすり抜けた!
車内にアナウンスが流れる。
「未登録の柴犬が乗車しました。脅威がないので排除対象外です」
「おいおい、排除なんて物騒なこと言うなよな……」
扉を閉めて、アクセル全開。
フリーダム号、狼の群れを後方に置き去りにして走り去る。
「おまえ、よく無事でいたな」
「わふっ、わふわふ!」
柴犬は興奮気味にしっぽをブンブン振っている。
体は薄汚れているが、怪我はなさそうだ。
「ここにいるなら、行儀良くしろよ」
「わふ!」
「元気いいじゃないか、相棒。よろしくな」
終末世界に、新しい旅の仲間が加わった。
頼れるかはわからない。言葉も通じない。
けど、こいつは……信じていい気がする。