「フリーダム号、郡山入り〜っと」
福島県を北へ。白河を抜け、走りに走って郡山へ突入。
道中は大きなトラブルもなく順調。
だが、旅の目的は“宗谷岬での祝杯”だけじゃない。
「おまえのメシ、探しに来たんだぜ」
助手席のコハクが「わふ」と短く鳴いた。
郡山。
福島県内でも屈指の交通の要衝であり、物流の拠点都市。
市内には複数の工業団地がある。
食品関連、ペット関連、日用品。
どれかひとつでも、ドッグフードが残ってるセンターがあれば──
「可能性はある。ゾンビだらけのスーパーより、こっちの方が現実的だ」
まず目指したのは、旧・郡山南部の工業団地エリア。
広い道に、どこまでも続く倉庫と配送センター。
ただし、駐車場にはところどころ放置車両があり、建物は静まり返っている。
「……やってた感、あるな。問題は中身だ」
フリーダム号を建物の裏手に駐め、コハクには車内で待機してもらう。
念のため、拳銃を腰に携えて、倉庫の一つへ近づく。
建物のシャッターは開いていた。
中は薄暗く、空気がこもっている。
だが、目を凝らすと……段ボールが山積みになった棚。
「うお……物流倉庫、当たりかもしれん……」
食品、雑貨、薬品……様々なジャンルの段ボールがある。
慎重にラベルをチェックしていく。
【ペットフード】──あった!
中身を確認。
出てきたのはドライフード大袋×5。
保存状態は……見た目にカビや変色はなし。
封も切られていない。密閉パック。問題なし。
「やった……! これでコハクの食料問題、しばらく安泰だ」
その場で一袋を開け、サンプルとして小袋に詰め、フリーダム号へ戻る。
助手席にいたコハクが、ドアの開く音に耳をピクリ。
「はい、おまちどうさん。ドッグフードだぜ?」
器に盛ると、コハクは勢いよく顔を突っ込む。
「……どうだ?」
「わふわふっ!」
その様子を見て、俺はひと安心。
「よし、これでしばらく、お前の飯に困ることはなさそうだな」
フリーダム号に戻り、荷台に残りの袋を積み込む。
さすが物流センター、まだまだ漁れば何か出てきそうだ。
でも今日はもう十分。
「コハク、お前の笑顔が見れたら、それでいいよ」
助手席で満腹顔の柴犬が、満足げにしっぽを振る。