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第36話 フードを求めて工業団地へ

「フリーダム号、郡山入り〜っと」


 福島県を北へ。白河を抜け、走りに走って郡山へ突入。

 道中は大きなトラブルもなく順調。

 だが、旅の目的は“宗谷岬での祝杯”だけじゃない。


「おまえのメシ、探しに来たんだぜ」


 助手席のコハクが「わふ」と短く鳴いた。


 郡山。

 福島県内でも屈指の交通の要衝であり、物流の拠点都市。

 市内には複数の工業団地がある。


 食品関連、ペット関連、日用品。

 どれかひとつでも、ドッグフードが残ってるセンターがあれば──


「可能性はある。ゾンビだらけのスーパーより、こっちの方が現実的だ」


 まず目指したのは、旧・郡山南部の工業団地エリア。


 広い道に、どこまでも続く倉庫と配送センター。

 ただし、駐車場にはところどころ放置車両があり、建物は静まり返っている。


「……やってた感、あるな。問題は中身だ」


 フリーダム号を建物の裏手に駐め、コハクには車内で待機してもらう。

 念のため、拳銃を腰に携えて、倉庫の一つへ近づく。


 建物のシャッターは開いていた。

 中は薄暗く、空気がこもっている。


 だが、目を凝らすと……段ボールが山積みになった棚。


「うお……物流倉庫、当たりかもしれん……」


 食品、雑貨、薬品……様々なジャンルの段ボールがある。

 慎重にラベルをチェックしていく。


【ペットフード】──あった!


 中身を確認。

 出てきたのはドライフード大袋×5。


 保存状態は……見た目にカビや変色はなし。

 封も切られていない。密閉パック。問題なし。


「やった……! これでコハクの食料問題、しばらく安泰だ」


 その場で一袋を開け、サンプルとして小袋に詰め、フリーダム号へ戻る。


 助手席にいたコハクが、ドアの開く音に耳をピクリ。


「はい、おまちどうさん。ドッグフードだぜ?」


 器に盛ると、コハクは勢いよく顔を突っ込む。


「……どうだ?」


「わふわふっ!」


 その様子を見て、俺はひと安心。


「よし、これでしばらく、お前の飯に困ることはなさそうだな」


 フリーダム号に戻り、荷台に残りの袋を積み込む。

 さすが物流センター、まだまだ漁れば何か出てきそうだ。


 でも今日はもう十分。


「コハク、お前の笑顔が見れたら、それでいいよ」


 助手席で満腹顔の柴犬が、満足げにしっぽを振る。


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