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第38話 寄り道!コハクと猪苗代湖一周ドライブ

「コハク、ちょっと寄り道しようぜ」


「わふっ?」


 フリーダム号は今、福島県の中心部を北上中。

 だが気づけば、東北旅の雰囲気がシリアス寄りになっていた。


 装備整えて、倉庫で生存者の痕跡を見つけて、心がちょっと重い。


 だからこそ、気分転換が必要だ。


「ここに来たなら猪苗代湖、一周するしかないっしょ!」


 観光地あるあるを、終末風味で味わうのが俺の旅の流儀。

 フリーダム号は国道49号を西へ、それから南下して湖をぐるりと回るコースへGO!


 最初に見えてきたのは、かつての観光駐車場。


 放置された観光バスが2台。

 記念写真の看板「ようこそ、猪苗代湖へ!」


「おー、こりゃ定番だな。コハク、ちょっと顔出してくれ」


 顔ハメパネルに、柴犬をそっと押し当ててみる。


「はいチーズ!って、誰も撮ってないけどな!」


「わふわふっ(若干迷惑そう)」


 次は湖岸を走る一本道。

 かつてはレンタサイクルのコースだったらしい。


「まさかキャンピングカーで走る日が来るとは……」


 途中に“絶景スポット”と書かれた看板。


「よし、ここで記念写真──って、誰が撮るんだよ!!」


 セルフタイマーのカメラも電池切れ。

 スマホは通信もクラウドも死んでる。

 でも気分は大事。


「コハク、脳内でアルバム作っとけよ」


「わふ」


 道の駅猪苗代の看板が見えたが、今日はスルー。


「前回、道の駅でゾンビに囲まれたからな。今回は一周が目的だ!」


 途中で観光ボート乗り場らしき場所を発見。

 船は……完全に転覆していた。


「……湖上遊覧は無理だったな……残念だな、コハク」


「わふわふっ(尻尾ぱたぱた)」


 ぐるりと回って湖の南端。

 やたら広い砂浜に到着。

 まるで海のように波が押し寄せている。


「ここで昼飯にするか。今日は……カップ麺だな」


 フリーダム号のキッチンで湯を沸かす。

 その間、コハクが湖を見つめてじっとしている。


「……まさか、お前……泳ぐ気か?」


 ザッ!


 コハク、突進。


「おいまて待て待て冷たいだろお前!!」


 ジャバジャバジャバーッ!


 数分後、濡れた柴犬と共にフリーダム号へ帰還。


「バスタオルどこだよぉ……!」


 そんなこんなで、笑いあり、記念なし、飯はカップ麺の猪苗代湖一周旅。

 でも、心はずいぶん軽くなった。


「コハク、たまにはこういう寄り道も悪くないだろ?」


「わふっ(くしゃみ)」


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