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第41話 山道と海岸線と、ふかひれ上湯スープ

「フリーダム号、国道45号線に乗ったぞ」


 この道を北上すれば、気仙沼まで一直線。

 ただし、山道多め。

 だが、オレのフリーダム号は4WD。ぬかるみも崖も、なんでも来いや!


 問題は山じゃない。

 野生動物だ。


 狼──コハクを狙っていた連中。

 あいつら、まだどこかで見てるかもしれない。

 熊? いや、想像したくない。


「……おいコハク、窓から顔出すなよ? 招き犬になるぞ」


「わふっ」


 ◆◆◆


 峠を抜けると視界が一気に開けた。

 南三陸の海だ。


「ふぉおお、これぞ絶景ドライブ! コーナー、クリアァッ!!」


 グワン!とハンドルを切る。


 もちろん安全運転。でも気分はラリー気取り。


 助手席のコハクが「わふふふ」とノッてきてる。たぶん。


 道中、45号線の看板がところどころ消えてる。

 でも海岸線沿いに北上していけば、間違う心配はない。


 そして──着いた。


 気仙沼。


「港周辺に向かうぞー」


 目印は──巨大な魚のオブジェ。

 かつての観光名所『お魚いちば』の名残だろう。


 看板は風化し、文字は途切れているが、間違いない。


「よし、探索スタートだ。コハク、ここで待ってろな」


「わふ(了解)」


 中は静まり返っていた。

 床には発泡スチロールの箱。

 中身は……たぶん、魚だった“何か”。


 もはや形を保たず、乾ききった状態。


「うん、腐ってるよりマシ。臭くないのは偉い」


 店の奥へ、奥へと進む。

 棚、冷蔵庫、カウンターの下。

 あれもない、これもない。


 ──が!


 あった!


「おいおいおい、マジかよ! ふかひれ上湯スープ、レトルトパウチ!!」


 しかも箱ごと!


「よっしゃーー! レトルトで十分! ていうか、正直、乾燥フカヒレの戻し方とか知らん!」


 箱を抱えて、意気揚々とフリーダム号へ戻る。


「見ろコハク、これが“気仙沼の勝利”だ」


「わふっ!」


「袋の裏に“熱湯で5分”って書いてあるぞ……このシンプルさ、愛してる」


 今夜は中華だ。

 スープにしてもよし、ご飯にかけてもよし、麺を入れてもよし。


「終末世界にも……贅沢はある」


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