「フリーダム号、国道45号線に乗ったぞ」
この道を北上すれば、気仙沼まで一直線。
ただし、山道多め。
だが、オレのフリーダム号は4WD。ぬかるみも崖も、なんでも来いや!
問題は山じゃない。
野生動物だ。
狼──コハクを狙っていた連中。
あいつら、まだどこかで見てるかもしれない。
熊? いや、想像したくない。
「……おいコハク、窓から顔出すなよ? 招き犬になるぞ」
「わふっ」
◆◆◆
峠を抜けると視界が一気に開けた。
南三陸の海だ。
「ふぉおお、これぞ絶景ドライブ! コーナー、クリアァッ!!」
グワン!とハンドルを切る。
もちろん安全運転。でも気分はラリー気取り。
助手席のコハクが「わふふふ」とノッてきてる。たぶん。
道中、45号線の看板がところどころ消えてる。
でも海岸線沿いに北上していけば、間違う心配はない。
そして──着いた。
気仙沼。
「港周辺に向かうぞー」
目印は──巨大な魚のオブジェ。
かつての観光名所『お魚いちば』の名残だろう。
看板は風化し、文字は途切れているが、間違いない。
「よし、探索スタートだ。コハク、ここで待ってろな」
「わふ(了解)」
中は静まり返っていた。
床には発泡スチロールの箱。
中身は……たぶん、魚だった“何か”。
もはや形を保たず、乾ききった状態。
「うん、腐ってるよりマシ。臭くないのは偉い」
店の奥へ、奥へと進む。
棚、冷蔵庫、カウンターの下。
あれもない、これもない。
──が!
あった!
「おいおいおい、マジかよ! ふかひれ上湯スープ、レトルトパウチ!!」
しかも箱ごと!
「よっしゃーー! レトルトで十分! ていうか、正直、乾燥フカヒレの戻し方とか知らん!」
箱を抱えて、意気揚々とフリーダム号へ戻る。
「見ろコハク、これが“気仙沼の勝利”だ」
「わふっ!」
「袋の裏に“熱湯で5分”って書いてあるぞ……このシンプルさ、愛してる」
今夜は中華だ。
スープにしてもよし、ご飯にかけてもよし、麺を入れてもよし。
「終末世界にも……贅沢はある」