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第42話 フカヒレと白州と極上の夜

 気仙沼のお宝──ふかひれ上湯スープを手に入れた俺は、

海が見える高台にフリーダム号を止めた。


 風は穏やか。雲は紅に染まり、海面をゆらす。

 最高の眺望。今夜はここを──キャンプ地とする!


 まずは身体を清める。

 フリーダム号のユニットバスでシャワーを浴び、旅の汗と疲れを流す。


「っくぅ〜! これこれ、こういうのが……いいんだよ!」


 全身スッキリ。風呂上がりのテンションで、調理開始。


 ふかひれ上湯スープ、湯煎!

 そしてその間に、コハクのドッグフードディナーを準備。


「お待たせ、相棒。今夜はごちそうだぞ」


「わふっ!」


 犬の満腹音って初めて聞いた気がする。


 湯煎が終わり、器にスープを注ぐ。


 琥珀色のスープにふかひれの繊維が泳ぎ、なんと溶き卵まで浮かんでいる!


「……お前、完成度高すぎだろ……」


「コハク、いただきます」


「わふわふ!」


 一口すくって口へ運ぶ──


「……っはぁああ〜……プチプチの繊維が……たまらん!」


 舌の上でふかひれが細かく弾け、その隙間から濃厚な上湯スープが染み渡ってくる。


 鶏ガラに金華ハム、確かにそんな味がする。

 この塩梅、まさに“中華の頂”。


「……これは……もう一袋、いくしかないだろ」


 即・追加湯煎。


 その間に忘れていたものを思い出す。


「白州だッ!!」


 キャンプに白州。極上の夜に乾杯だ。


 そして俺は次の一手に出る。


 白飯をレンチンし、ふかひれ上湯スープをぶっかける。


「……いいのか? こんな贅沢、終末世界で……」


 いいんです!!!


 米にスープが染み込み、噛むたびに旨味が口に広がる。


「これは日本人じゃないとわからんだろ……」


 静かに、ゆっくりと食べ進め、旨味の余韻を──白州で流す。


 グラスの中で揺れる液体に、今夜の満足を浮かべる。


「たまんねぇな……生きてるって、こういうことだよな……」


 横でコハクもぐっすり。


「……今夜も、極上の夜をありがとう」


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