どうも、皆さん初めまして。
私立井中高校1年Eクラス
異能力名:
それは、それとして……
後ろの電柱に隠れているつもりの三人がすごく気になる!!
バレていないと思っているのかどう見ても、昨日転入してきた三人組がどう見てもバレバレな感じで僕の後をつけていた。後ろを振り向いて声をかけようとするも三人は電柱に隠れて(バレバレである)話しかけにくい状態になる。何なんだよもう……
話しかける勇気もなく僕は帰路へと戻ろうとすると丁度、近所のおしゃべりなおばさんたちとすれ違った。
ぼそぼそと僕と三人を見ながら通り過ぎていったのを最後に僕はもう辛抱できずに勇気をもって三人に話しかけることにした。
「あ、あの……」
三人は僕と目が合うや否や視線をそらし知らないふりをしていた。
いや、どう考えてもごまかせないだろ……
再度三人に話しかけると三人は後ろを振り向き何やら作戦会議を始めてしまった。
どうすんだよ、とか、これはもう逃げるしか、とか丸聞こえだった。
「あ、あの僕に何か用が……?」
一人、自己紹介でツッコまれていた黒瀬くんと言う生徒がこっちを向いてしゃべりかけてきた。
「単刀直入に聞く。君、何か巻き込まれていないか?」
残り二人はしまったという顔をして黒瀬くんの頭を思い切りはたく。
「どうしてお前はそんなやり方しかできなんだよ!?」
「気を付けろとも言われていたでしょう?!」
「む。すまない…ということで今のは忘れてくれ。」
「え?」
話についていけない。
結局三人は逃げるように僕の前から去っていった。
「コントの練習かな?」
その理由以外、一人で納得する方法がなかった。
こう言っては何だが、僕は今いじめられている。
原因は簡単に "金をもっていて、弱そうだったから”だ。
首謀者は昨日の転入生異能力検査で赤っ恥をかいていた夕暮 虎くんだ。
突然、放課後に体育館裏に呼ばれたときはまさかいじめに会うとは思っていなくて、そのまま虎くんにその日の食費とかを脅し取られてパシリにされ始めた。
「はは……僕ってそんなに弱そうに見えるかな?」
きっとさっきの三人も何かしら僕に言おうとしたのだろうか。
でも、何か巻き込まれていないか心配されていたような感じだったし
「まさかね…」
一つの希望を自分でつぶしておきながら僕は肩を落としいつもの河川敷へと急ぐ。
今日は塾があるから本当はそれを優先しないといけないんだけど虎くんを怒らせると明日どんな目に合うかわかったもんじゃない。
僕は急いでその足を河川敷へと向かわせた。
────────────
「む……」
「どうした黒瀬。」
「いや、昨日のクラスの雰囲気と言いさっきのターゲットと言い…あのクラスはおかしいとは思わないか?」
本気で悩んでいるようで黒瀬は先ほどから深く長考していた。
その様子に燃も昨日のことを振り返ろうと考え始めるが難場が本を読みながらさも当たり前のようにその答えを言い放つ。
「クラスカーストですよ。」
「何だそりゃ。」
「あのクラス事態にも何かクラス分けされているということか?」
再びさも当たり前のように難場は答える。
「まぁ、半分は正解じゃないかと…でも半分は間違い。」
難場曰く、クラスの”陽キャ”と呼ばれる部類の人間がクラス事態を引っ張ってクラス事態を勝手に仕切ってあたかも自分が王の如く君臨しているそうだ。それ以外は”陰キャ”など呼ばれ”陽キャ”集団に目をつけられたら最後、死ぬまでおもちゃにされるという。
「何だそりゃ人間のコミュニティの話か?どっかの動物の群れの話じゃないのか?」
「人間も動物ですよ。燃。」
黒瀬、燃、難場は元BLACK D.O.Gである。
少数精鋭部隊BLACK D.O.Gは異能犯罪者を殲滅するために作られた政府公認の秘密部隊である。
そんな部隊内ではいちいち「あいつは弱いからおもちゃにしよう」とか「あいついじったら楽しそう」とかそんなことを考える暇はなかった。というか、隊長と副隊長がそんな”人”ではなかった。
三人がそんな狭いコミュニティで培ったのは、同じコミュニティ内の”人”は”仲間”という意識が強かった。
なので”クラス内”という狭いコミュニティで”仲間同士”が”いじめ合う”という感情が理解できなかった。
「てか、お前、そんな知識どこから仕入れた。」
「本ですよ。ライトノベル、純文学、携帯小説、古典文学、少年漫画、少女漫画etc.……で学びました。」
「なるほど、その勉強法はなかった。」
「俺にも今度その”らいとのべる”とやらを貸してくれ。」
「いいですよ。」
二人が納得して感心していると、どこの道を通ったか三人は川辺に出てきた。
河川敷で近くには公園などもある。
人通りはあまりなくご老人たちや学校帰りの小学生が数名である。
三人はその光景に少しほっこりしつつ先ほど目の前から逃げてしまった竹林 植が高架下へ急いで入っていくのが目に入った。
その慌てように三人はすぐに任務モードへ入りすぐに後をつける。
────────────
河川敷の高架下の奥に行けば行くほど人気はなくなり、人を脅したり、殴ったり、最悪殺されたりとそのくらい人気はない。
僕は息を切らしながらコンビニで買ってきた、たばこやお酒を虎くんに渡そうと差し出す。
虎くんはその手をはたき落とし、その場に酒やたばこが散乱する。
「遅い。のろま」
そういうと取り巻きの二人が僕へ近寄り両腕を羽交い絞めされる。
抵抗しようと僕は暴れるが二人の力はものすごく僕は次第に抵抗を辞めた。
虎くんが近くにきてストレッチを始める。指や首の骨を鳴らし少し拳を打ち出しシャドーボクシングをする。そして、準備が終わったのか笑顔で距離を詰める。
「さて、遅刻した竹林君にはペナルティ……俺の連続パンチでーす!!」
二人がフゥ↑とかやっちゃえ!とか野次を飛ばす。
そして、虎くんは片腕を虎に変え拳を打ち出す。
みぞおちへ当たるその拳は僕の意識を飛ばすのに十分だった。
けど、意識が飛ぶことも許されない。
再び痛みと共に僕は目を覚ます。そして腹部の激痛と共に泣き叫ぶ。
「ははっ!こいつ泣いてやんの!」
虎くんは笑ってまた拳を打ち出す。
何度も撃ち込まれる拳に僕の意識はもうろうとしてきた。
今日は何かおかしい。いつもは能力を使って一発殴られれば終わりなはずなのに……
そして、思い出す。昨日の転入生の異能テストでの失態。
虎くんは相当ストレスが溜まっているはずだ。
あぁ……ダメだ。
多分、今日、死ぬかも……
そんなことを思っていると虎くんの後ろに素早い影が三人目にも止まらぬ速さで迫ってきた。
僕の記憶はそこで途切れた。
────────────
三人は、高架下に入りきらないところでその様子を見ていた。
二人が竹林のことを羽交い絞めにした瞬間、燃がすぐに動こうとしたが難場が止める。
「んだよ…」
「まぁ、待ってください。まずは動画を取りましょう。」
「そんな余裕ないだろう。燃と俺に任せてくれ。」
「それではあの三人が被害者ヅラして僕らの部が悪くなるんですよ。」
そういうと難場は動画を回し始めた。
夕暮 虎が能力を使い竹林を殴り始めたところで難場も我慢の限界だったのか動画を止めて二人に合図を送る。ハンドサイン”速やかに””制圧”をすると燃と黒瀬の二人はうなずき三人は気づかれぬように素早くその背後に影にように動いた。
竹林が完全に気を失うと三人は殴り終わった夕暮とその取り巻きを目にも止まらぬ速さで背後からつかみかかる。もちろん三人の顔がわからないようにそれぞれ視線を隠して完全に視界を奪う。
慌てふためき、不良三人は暴れるが転入生三人はそのままバラバラに不良共を別々のところへ連れていき気を失ってもすぐに回復する程度に叩きのめした。
無音のそのわずか数分の間に三人は竹林を高架下から連れ出し、近くの公園のベンチへ運んだ。そして、ベンチに横たわった竹林を見つめて黒瀬は二人を見つめる。
「さて、どうする。」
「そうするったって…このままだとまずいだろう。」
「でも、彼の僕らに対する評価は今、不審者レベルでしょう。」
「むぅ……」
三人は竹林を見つめて頭を抱えた。
Ep4:FIN