報告書
某日、校外にてターゲットが暴走。
事前情報でターゲットはクラスメイト3人組に暴行や恐喝等をされていたようでそのストレスが爆発したと思われる。ターゲットへ暴行や恐喝をしていた一人は右足の関節から切断寸前の状態で発見されたが命に別状はなかった。今回、負傷者が一人出たがこちらも命に問題はない。
ターゲットが暴走し始めた痕跡としてターゲットのクラスの机にターゲットの能力で生成されたと思しき竹槍が刺さっていた。その傍にターゲットが使った(もしくは使われた)と思しき注射器も見つけた。
後にターゲットの首筋を確認すると注射器の針と一致する注射痕と思われる小さな傷を見つけた。
ターゲットは隊員の格闘技で気を失わせた後、けがをした隊員と共に学校の医務室を借りた。
この報告書の後日になるがターゲットの容体を改めて確認するためターゲットは政府の医療機関へ引き渡す。
以上 執筆者 我楽 多
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昨日の竹林の暴走が嘘だったかのように学校はいつも通りに開校していた。
ただ、噂で『昨日、学校前で救急車が来る喧嘩があった』程度には昨日の事件は広まっていた。
噂程度で広まるのは問題ないが、一番は目撃者がいることだ。
昨日のとてもショッキングな惨状を表に出さないため、政府の人間が動かないといけなくなるのだが。
恐らく今日は学校の”周り”が少し騒がしくなるだろう。
など、思いながら昨日の傷をさすりながら黒瀬 零は階段を一段一段踏みしめる。
時折ため息をつきながら少し肩を落としているようにも見える。
そんなくらい背中へ向かい走ってくる足音が一つ。
黒瀬はもちろん自分へ向かってくるものではないと気にせずに歩き階段を登り切ったその時、黒瀬の背中へ声がぶつかる。
「てーんにゅーせーいさーん!!!!」
その声に一度は無視しようかと思った黒瀬はため息をつき声のする方へ体を向けると一人少女が走ってきた。大きなレンズのメガネが特徴的な少女。元気な声でそこそこ真面目そうな雰囲気。
クラスにはいない少女だと認識した黒瀬は初対面のメガネ少女を待つ。
少女は右手にペン、左手にメモ帳をもっており左腕の「新聞部」と刻印された腕章をつけている。
新聞部女子は待ってくれている黒瀬に近づくにつれ速度を落とし黒瀬の前で止まると肩で息をしながら話始める。
「どうも、私、新聞部部長の
元気よく挨拶を終えると描書は瞳をキラキラを輝かせ黒瀬にグイグイとさらに距離を詰めていく。
”新聞”やら”記事”やら”取材”などという言葉が大の苦手な黒瀬は描書へじっとりとした視線を送る。
「あれ?何か嫌なことでもありました?」
「あぁ、たった今な。」
頭に「?」マークを付けた描書へ黒瀬は嫌味を言うがそんなことは気にならいのか、はたまた取材対象に夢中で気がつかないかその言葉を無視して話を続ける。
「そりゃ、どうもすみません。って今は取材許可……ということで、えっと…放課後!放課後でいいので新聞部の部室へ来て4人で取材を受けてくれませんか?」
「断る。」
「ありがとうございます。で、部室の場所は……えぇ?!断るぅ?!」
「あぁ、正確には俺じゃなくて他の奴に許可を取ってくれ。」
「でも、取材許可は転入生であるあなたにしか……」
「違う、他の転入生に許可は取れ。俺はその手の話は正直に全部話してしまいそうになる。」
「?それでいいのでは?」
「人には言えないことの一つや二つあるものだ。」
そんな会話を続けていると、描書の後ろから焔戸と難場の声が聞こえてきた。
小走りで向かってきた二人はその光景に少し驚きながら話しかける。
「おはよう。黒瀬。なんだ?朝からナンパか?」
「いえ、これは僕の見立てでは放課後、体育館裏か校舎裏へ呼ばれるいわゆる”告白イベント”ってやつでね。」
「どっちも違う。新聞部の描書というやつから取材交渉が来た。焔戸、難場、許可をくれ。」
二人は顔を見合わせると黒瀬を引っ張り三人でスクラムを組む勢いで小作戦会議を始める。
「新聞部?マジで?なんで?」
「俺らについて知りたいらしい。」
「なぜですか?もしかして僕らのことを話したのですか?」
「いや、俺らが”転入生”としてきたから純粋に気になっているらしい。」
「「なるほどぉ?」」
二人はうなずくとさらに三人は作戦会議を続ける
「で、どうする。受けるのか?」
「いや、まぁ、待てうれしいっちゃ、うれしいし、これこそ”普通”なんじゃないか?おい、難場どうなんだ。ラノベとか漫画とかにはそんなシチュエーションないのか?」
「いや、そんなイベントあまり見かったですね……ですが新聞部は大体、学校で少し、いやだいぶ、嫌われる存在なので、ここは断るのが無難ではないでしょうか?」
「む?なぜ新聞部は嫌われているのだ?」
それはですね……と脱線しようとした難場にいつの間にかその作戦会議に参加していた描書が割って入る
「本の感想はどうでもいいので取材を受けるのですか?どうなんですか?」
固まる三人は思考を巡らせる。
そして、焔戸はほぼ勢いでその返事を決めた。
「いいぞ。」
その返事に黒瀬と難場は怪訝な顔を、描書は先ほどよりも表情を輝かせる。
「いいんですか?!」
「ただし、きっちりと真実を書くこと。あることないことは書くな。あと、記事を出す前に俺らに見せろ。その中で一人でも首を縦に振らなかったら書き直しか今回の取材事態をなかったことにする。これが条件だ。」
「わかりました!!では放課後、部室で待ってます!!」
描書は焔戸の言った条件をメモすると部室の場所が描かれた名刺を渡すと走り去っていった。
嵐が去った後のように三人は胸をなでおろすが、新たな問題にぶち当たる。
「どうする。」
「ま、いいだろう。で、話の続きだ。なんで新聞部は嫌われていると相場が決まってるんだ?」
「条件の中にありました。」
「む?」
「ん?」
「真実をゆがめて書くのですよ。どれだけこちらが条件を付きつけようと……」
「いや、気に入らなかったら俺らでもみ消せばいい。それが無理なら隊長に頼む。」
「むぅ…不安だ。」
BLACK D.O.G解散の原因は新聞記事であるが、その記事がすべて嘘の内容で書かれた記事のせいでBLACK D.O.Gは解散したのだ。
だから、三人は共通で”新聞”やら”記事”やら”取材”などという言葉が大の苦手なのだ。