目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

Ep.10 第二任務

早朝4時、陽が昇る前なのでまだ涼しい時間帯。

焔戸 燃は目を覚ます。体を起こしてその数秒後アラームが鳴り響くがそのアラームを止めるとベッドに再び寝転がる。ボーっとしていると眠気に襲われたのでベッドから起きて登校支度をした。

彼は能力の関係上常時、特殊なスーツやクリームをつけていないと汗腺から出る汗などが発火してしまう。

生ける危険物な彼は素肌を見せるときはクリームを塗っているのだ。


「あ、背中、火傷してる。」


鏡に映る自分の背中を見つめる。

燃えた後はないが皮膚が赤く熱くそして軽くただれていた。ため息をつき、浴室へと入る。そして焔戸が入った瞬間浴室の天井から勢いよく風が吹き始める。音が鬱陶しいのか焔戸はすぐにその音の元なのかボタンを押して電源を切る。蛇口をひねるとお湯ではなく水が出てくる。


「後で夏設定にしないとな。」


汗を流せない彼は大体水風呂で澄ませる。

お湯につかったり湯気を浴びた瞬間、汗腺から汗が出てお湯を干上がらせてしまうので夏は水風呂オンリーだ。さすがに冬は寒いので先ほどのように乾燥機をつけながらお風呂に入るのだ。歯磨きをするときも気を使わなければならない。発火するのは汗だけではない。体液が燃える能力なので実は唾液や涙なんかも燃えるのだ口に含んだ唾液を特殊な容器に吐き出す。すすいだ水なんかもその容器に吐き出す。支度を済ませると丁度いい時間なので昨日の資料を見ながら朝食をとる。そして、唐突に思い出す。


「そうだ、あの子俺の消火を手伝ってくれた子じゃん」


そう、転入正日のことを思い出したのだ。

能力テストのときに焔戸の燃やした機械人形などの消火を手伝ってくれたのが今回の目標の水辺 彗星だったのだ。その時はあまり意識しなかったが、昨日出くわした時や資料を見たときに覚えた既視感やデジャブが合致した。

だが、それより焔戸はどうやって話しかければいいかを考えていた。

昨日の今日に話しかけては不審に思われないか。などと考えていた。


「はぁ、難しいな今回は。」


朝食を終えると携帯に着信が入る。

”隊長”の二文字を見ると顔が一瞬ひきつるが頬を叩き電話に出る。


「お、おはようございます。」


「あ、おはよう。」


朝なのかそれとも昨晩の酒のせいなのか声がガラガラになった我楽が挨拶をする。

隊長から朝一に電話が来るのは大体しょうもないことだと考えている焔戸は挨拶を返す。


「朝からすまんな。任務のことで上から連絡があってな。」


そういうと我楽は話をつづけた。その話を黙って聞いていると焔戸の顔がだんだんとひきつっていった。そして最後には声を荒げてしまう。


「……はい……はい?!」


「んじゃ、そういうことだから。すまんがよろしく。」


焔戸は切れた電話を力なく落とすと大きな溜息をつく。


────────────


『今回の任務。ターゲットの監視ではなく、保護とする。』


「だそうだ。」


今朝のことをさっそく二人に伝える焔戸は大きな溜息をつく。二人は顔を見合わせ驚く。ターゲットの監視ではなく保護というのはつまるところターゲットの身に危険が迫っていることであった。


「何があったのだ?」


「さぁな……とにかく保護の命令が出ている。」


「でも、教室に入ってきたらイージーなのでは?」


「”教室に入ってきたら”な…」


その後、クラスメイトが教室の席を埋めていく中、最後の席が空いた。

入ってくるクラスメイトの中にも水辺はいなかった。

数分後我楽が入ってきて三人と目を合わせると目線で教室から出るように合図をする。その合図にうなずくと三人は速やか静かに教室から出ていった。


「あー……んじゃ、ホームルーム始めるぞー」


クラス委員が声をかけてE組のホームルームは始まった。


────────────


「で、具体的にどこ探すんですか?」


出てきたはいいものの三人は廊下を走り階段を降りて校内を後にする。

門を抜けると白いワンボックスカーが止まっていた。そのワンボックスカーからはスーツを着た大人が2人出てくる。三人はその二入が関係者だとすぐに気づき止まった。


「お待ちしておりました。」


「ターゲットに何かあったのか?」


「はい、昨夜から帰っていないと警察から報告がありました。」


「他は何かありませんでしたか?」


「特にそんな情報は聞いていません。」


その時、焔戸の携帯電話に非通知着信が入る。

その場の皆は焔戸の携帯電話に視線を集める。

鳴り響く着信音に焔戸は恐る恐る出てみた。


「も、もしもし……」


「やっほー!!!BLACK D.O.Gのお間抜け四天王!!!聞こえてるかぁい!!!」


その聞き覚えのある大声に焔戸は一瞬電話を切りそうになったが何とかとどまる。

声の主にイラつきながらも焔戸は、とぼけたふりをして煽り返す。


「あっれぇー??誰だったかなー??」


「んんんッ?!わかんないかい?やっぱ君らは部隊の名前みたいに知能が犬並みだねぇぇ!」


焔戸が歯ぎしりすると電話の声の主は自己紹介し始めた。


「頭の悪い君らのために改めて自己紹介しよう!!僕の名前は玩具遊びハッキングトイトイこと、プロフェッサーFフェスタ!!思い出したかなぁ!?」


「黙れ。」


「んんん?オコかなぁ?オコなんだねぇ?そうなんでしょ?」


我慢できずに焔戸は自分の携帯電話をその場にたたきつけ足で踏みつぶす。焔戸がバラバラになった携帯を睨んでいると、すぐに関係者の持っていたタブレット端末へ着信が来る。すぐに出るとFだった。


「ひどいなぁ。僕はうるさいのが嫌いなんだ。わかるよね?」


「何が目的だ!」


「そうカッとなるなYo!ゲームしようYo!」


「てめぇ!いい加減にしろよ!!」


するとFは能力操作でテレビ電話に切り替える。

そこに映し出されていたのは保護対象の水辺だった。

イスに縛り付けられて気を失っているようだった。


「さて、ゲームしよう。交渉ゲームだ。」


画面にいるFと思われる金髪の白いスーツの男はニヤリと笑う。


Ep10:FIN

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?