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Ep.12 第二任務 参

お前を殺す。


その発言は腹の底のもっと奥深くから出た本気の本音だろう。

サングラスで隠れているが、その目は怒りと憎しみで染まっていた。

港のコンテナにて焔戸 燃はプロフェッサーFフェスタを見上げていた。

その横には今回、保護命令が出ている水辺 彗星が力なく椅子にもたれかかっていた。


「な、なぁーにが”殺す”だ。俺だってお前をぶん殴ってやりたいぜ。」


Fは画面上で見せていた陽気な雰囲気を完全に消し去り怒りに震えていた。

への字口からは強く噛み締める犬歯が見えており今にも歯ぐきから血が出そうなくらい強く噛み締めていた。その顔を見て焔戸は真顔になり殺気の籠った目をFへと向ける。

ぶつかり合う視線。お互いを絶対に許さないという目をした二人は数分の間無言で見つめ合った。

そして、焔戸が一歩動くと、Fは指を鳴らし周辺で踊っていた機械を焔戸へと仕向ける。

学校用機械人形が2体。工事用無人機械が5台。医療用機械が4台。その他Fが改造した様々なものを組み合わせた機械が数十体。その大軍が一斉に焔戸に襲いかかる。


焔戸は持ち前の身体能力でそれらをかわすと、BLACK D.O.G時代に身に着けたパルクール移動法を利用して最短でFの足元へと飛ぶ。だが、Fも抜け目ない人物で背後に忍ばせていた機械人形を焔戸へぶつける。

機械人形は突進と共に白く膨れ上がり黄色く膨張し、一気に爆発した。


「おわ……」


その爆発を避けようとステップを踏んだが、よけた先には水辺がいた。視界に水辺が入ると焔戸はもう一度同じ場所に戻り爆発から水辺をかばう。背中でかばったため、服には穴が開き素肌が見える状態となってしまった。見えた素肌は黒く火傷しており皮膚もただれていた。焔戸は痛みに耐え、水辺を抱えてFがいた2~3mはあるだろう足場を飛び、着地した。


「っ……あぁ…」


水辺が気を失っているのを確認したら、焔戸はコンテナの入り口へめがけて走り出した。

その行く手を機械たちが阻む。その影から学校用機械人形が殴り掛かってきた焔戸はその行為を花で嗤うと背中を向ける。機械人形の拳が焔戸の背中へ触れると、その拳は一斉に燃え出した。

特注のスーツが破れて素肌が丸見え+素肌を出すことが能力発動条件+動いたことでの熱量+制御できない異能力=高温の炎

この組み合わせにより焔戸の背中は白く燃えていた。


「がはっ!!」


「いかれてやがる!!」


「そりゃ、お互い様だろうに!」


燃え始めた機械人形を壁となっている機械たちへ蹴り飛ばすと、焔戸はコンテナの外へと出ることに成功した。外では焔戸gあ乗ってきた政府関係者のワンボックスカーが止まっており、車のドアを開けて待っていた黒瀬たちは急いで水辺を焔戸から受け取り、その場から走り出す。焔戸を乗せずに。


「焔戸さん、指示通りやりましたからね。あとは知りませんよ。」


そういうと焔戸はボロボロのままサムズアップをする。

そして、後ろを振り向くと先ほどよりも多くの機械軍団を引き連れFはコンテナから出てきた。焔戸は再びFを見つめるとストレッチしながら質問をした。


「で、なんで俺”だけ”って指定した?無能力者の黒瀬の方が俺より狩りやすいだろ?それともなんだ、俺のことが好きなのか?」


今まで黙っていたFはその質問に口を開く。


「違うね。これは僕のリベンジだ。」


「リベンジ?」


「そうさ、リベンジさ。あの日、BLACK D.O.G君らにつかまったあの日。僕の美しい計画を君がいとも簡単に燃やしてくれたあの日のことだ。」


そういえばと焔戸は思い出す。

初めてFと対面したあの日。

世界の電子機器を操り思いのままにしようとしていたFは電子世界の中心ともいえる場所でそれを実現しようとしていた。だが、計画は水の泡となって消えてしまうどころか炎にくべられた薪のように灰となって消えてしまった。

あの日は初任務だったということもあり、焔戸は胸が昂っていて能力の調整がいつもより下手になっていた。下手な加減のせいで仲間ごと燃やしてしまうところだったのを思い出す。

そしてそれと同時にFのあの恨みに満ちた顔を思い出す。


「あの炎のせいでひどい火傷負ってしまってね……右側の感覚以外があまりないんだ……そのせいで……」


そういってFは服を脱ぎその体をあらわにした。

つぎはぎの体。色の違う皮膚。そして、異質な左腕。

火傷のレベルというものはⅠ度からⅢ度とあり、それぞれで治療の仕方などが変わってくる。一番ひどいのがⅢ度で皮下組織以外にも脂肪や血管にまで影響が出ており、感覚などがなくなり、治療にから完治まで一ヶ月を要するときがある。だが、Fはそのレベルで済まさせるものではなかった。完全に焼き切れた神経に骨まで燃えた左腕はすでに切断して義手を装着しなければならない状態魔まで来ていた。

治療期間一年以上。

義手の左腕に自らの能力を応用した機械を作るのに一年。

その間に彼はこの世の機械を操ることなど等を諦め自分をこんなみじめな姿にしたあの燃える少年だけを目指してここまできた。何度もBLACK D.O.Gのあのやり方はやりすぎではないかと訴えたこともあったが、そのたびに自業自得だの、因果応報などと言われる始末だった。ならばと考えた。自分が抜け出し、当人に謝罪させるべきだと。


「責任を取り給え。」


「ただの逆恨みじゃねぇか!バカが。そんな下らんことに俺のクラスメイト巻き込んだのか!!」


「下らんだとぉ?」


お互いにまたにらみ合う。

今度はFから動き出す。異質な左腕をむき出しのまま焔戸へ飛び掛かる。

焔戸はその突進と同等の攻撃をかわすと地面が大きく抉れてクレーターになった。


「何だよその左腕。」


「生まれ変わったのさ。もう油断はしない。」


そして間髪入れずに襲い掛か狩ってきた。

その攻撃を避けようとステップを踏んだが、Fは指を鳴らし機械を操りその行く手を阻む。

焔戸はその鉄の壁を超えるとこができず凶悪な左腕につかまれる。

声を出すことができずそのままだんだんと閉まっていく腕に抵抗する間もなく押しつぶされる。


「あ”あ”ぁ”!!!」


やっと声を出すことができたがその痛みをどんな言葉で形容しようとしても叫び声にしかならない。

頭をつかう暇がない。そして、おもちゃのようにコンテナの中へと投げ飛ばされる。


「あ”あ”……」


「さぁて、これで終わりだ。」


Fは左腕を巨大なバズーカへと変形し、躊躇なく引き金を弾く。

コンテナは大きな爆発と共にキノコ雲を天高くにあらわにさせる。


Ep12:FIN

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