目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

Ep.13 第二任務 蒼焔

錆っぽい臭いで目が覚める。土煙とコンテナのホコリであまりはっきりと見えないが、半壊したコンテナに差し込む光で先のプロフェッサーFの影が見える。

思考がやっと巡ってきた焔戸は立ち上がろうと膝をつくが力が入らずうまく立てない。

それでも、立ち上がり、何とか土煙の中から出てみる。

その瞬間、背後にいた機械人形が襲い掛かってきたが焔戸は無意識にその奇襲を避けて機械人形を蹴り飛ばす。頭部パーツが損傷した機械人形は明後日の方向へ向かい、さらに後ろにいた機械人形たちの大群へと突っ込み爆発した。


「何をした?」


「いやぁ?何も?」


それこそ完璧な存在の機械人形に無意識なカウンターは効かないはずなのだ。

だが、焔戸はその訓練すらBLACK D.O.Gで学んでいた。

少々動揺したFは続けて機械軍団を焔戸へ仕向ける。だが、焔戸は紙一重でその攻撃をかわし、さらに向かってきた機械は壊れてこちらへと向かってくる。


「どうした?俺はただ歩いているだけだぜ?」


焔戸の心音は高鳴る。

大量の血液を流していて今にも死にそうなはずなのに焔戸はそのピンチすらもワクワクしていた。


ドクン


ドクン


ドクン


高揚した肌は赤く染まり、目は血走っている。


ドドドン


ドドドン


ドドドン


詰まった息を機関車が蒸気の汽笛を上げるが如く白い息を吐く。

その光景にFは胸の奥に殺していた恐怖が浮上してきた。

そして、思い出すあの日の恐怖。

あの日、Fは炎に恐怖を覚えていた。自分の思い描いた理想を燃やし尽くした焔。

その恐怖に打ち勝つためにFは焔戸を指定したのだ。

今日は焔戸に勝つと同時に恐怖にも勝つのだ。

冷や汗を流し始めたFは深呼吸をすると、左手を握り足を踏み込み焔戸をめがけて走り出す。


「行くぞ、行くぞ、行くぞ、行くぞ……」


Fはその言葉をつぶやきながら走る。

焔戸は力なくその場に立っている。

二人の距離がだんだんと縮まってくる。


50M


30M


25M


15M


9M


6M


1M


Fは左腕に再度力を入れ焔戸へとその拳が触れるその瞬間。

焔戸は力なく微笑み、周囲の機械類が機能を停止した。それと同時にFの左腕は完全に機能停止し、ごとりと地に落ちる。何が起こったかわからないFは左腕を必死に持ち上げようとするがその重量故、持ち上がらない。そんなことは焔戸には関係のない話だ。


「どう……した……?殺すんじゃ……なかったのか?」


「貴様!!何をしたぁ!!」


Fの大声と共に次は蒼い炎が周りに上がる。

轟々と上がる蒼炎の温度は焔戸の体温も上げていく。


「簡単な…こと…さ。政府関係者に言ってここら一体の機械全てを指定の時間にジャミングするように頼んだのさ。」


「そんなことがあるはずない。ここ一体の機械の主導権は僕が握っているはずなのに……」


「そうさ、そんなことあるはずない。でもできたんだよ。ここから数十キロ離れていればな。」


焔戸がここへ来る前に政府関係者に依頼したこととは、焔戸が言ったようにここ一帯のジャミングを依頼したのだ。多少、民間人へ迷惑が掛かるが後日ごまかしてもらうというわがままを聞いてもらったのだ。

力なく微笑む焔戸はゆっくりとゆっくりとFへ近づく。左腕が完全に重しになったFはその場から逃げることができない。たとえ逃げられたとしても燃え盛る蒼炎がその退路を塞ぐのだ。つまりここまで、大けがすること以外は焔戸の計算である。


「さ、俺はお前の顔を見たときからお前をぶん殴りたいと思っていたんだぜ?」


「や、やめろ……」


「お前はどうだった?俺の苦悩の表情を見て、どう思った?」


「やめろぉ……!」


焔戸は拳にゆっくりと力を入れていく。

前身は青く燃えており、本人かどうかも怪しい状態である。

ただ、Fの目にはその姿は地獄の悪魔に見えているだろう。

一歩踏み出すたびにFは呼吸を荒げて逃げようと後ずさる。


「無駄だぜ。売った喧嘩を買ってやったんだ。お釣りぐらいくれよ。」


ほとんど人の言葉をしゃべらなくなったFに焔戸は力いっぱい拳を振りかぶりそして、振り下ろす。


「おら!!よ!!」


Fの顔面は焔戸の拳でひどく歪む。

だんだんとブラックアウトしていく眼前には蒼炎を纏った地獄の悪魔が不気味に笑う。

完全に気を失ったFを見つめると、焔戸は痛い拳をさすりながらその場に座り込む。

そして、腰に携えていた銃を真上に撃つ。発砲音が寂しく鳴り響いた五分後、ワンボックスカーが走ってきた。


「焔戸さん!」


政府関係者と共に黒瀬、難場そして、水辺が降りてきた。


「わりぃ、水辺さん俺の体消火してくれね?」


その顔は軍人の顔からかけ離れた普通の高校生の笑顔だった。

水辺は何が何かもわからずに焔戸の炎の消火をした。

その後はFを政府関係者へ引き渡し、高校生四人組は検査ということで政府関係の医療施設へと送られた

その道中。


「あの、あなたたちは何者なんですか?」


水辺の言葉に三人は少し言葉に詰まる。

そして、関係者と目を合わせる。関係者はかまいませんというと三人は自らの素性、過去を打ち明けた。

最初は信じられない顔をしていた水辺は次第にその話と今回のことを照らし合わせると納得し始めた。


「と、言うわけだ。」


「なぜ、私に話してくれたんですか?」


今回の件とは別にまた保護命令が出ていることも教える。


「なるほど、私にも何かしらの問題が発生するかもしれないから保護ということね。」


「まぁ恐らく、今回の件がそれだと思うけどな…とりあえず、今回のことはクラスの奴らには内緒で頼む」


「わかりました。でも、保護期間が終わったら恐らく記憶は抹消されるだろうな。」


そうですかと少し悲しそうな表情に焔戸たちもしょんぼりとする。

そうこうしているうちに高校生四人組は医療機関へと到着した


Ep13:FIN

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?