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Ep.17 第二任務 XIII

自分の異能力が大嫌いだ。

だってお父さんの能力と同じなのだから。

お父さんは嫌い。だって、お母さんをおいて出て行っちゃったんだもん。


私は今どこにいる?


雫が一粒落ちる。それは涙なのか、水なのかもわからない。


『あと少しだ。おいで……ここだよ。』


声の方に足が進む。


そう、わたしは水槽から出るのだ。


出るのだ。


────────────


自分の能力が嫌いだ。


周りを不幸にするから。


そのせいで死人が出たから。


そのせいで僕自身も不幸になったから。


”気にするな、ボウズ。お前はもっと自信を持て。な?”


「そうは言っても、隊長。もうあなたは………」


「何を独り言をしゃべっているんだ?不気味だぞ。」


「あぁ、すまないね。考え事をするといつもこうなんだ。さぁ、続きを始めよう。」


「ならば、今度こそは当ててくれよ。」


拳を構える猛攻猛将ザ・ストレングスステップを踏むとシャドーボクシングを始める。だが、それも攻撃の一環になる。空気がだんだんと音を立て始める。そして、難場の方へと空気が向かってくるとその空気もだんだんと強くなっていく。そのうち、猛攻猛将ザ・ストレングスが拳を引く時にも空気が動き始める。


「バカ力が。」


「ほら、そのゴム弾、当てて見せろ。」


難場はゴム弾を射出するがゴム弾の勢いは空気に殺される。

なんの意味もなさない銃を放り投げて難場はため息をつく。


XIII XIII XIIIサーティン


異能名XIII XIII XIIIサーティン不幸を呼ぶことができる能力。

使うたびに不幸の度合いが、範囲が、威力が変わってくる。

1度の使用で効果が5分程度。切れたらまた異能力名を名乗り使用する異能力である。

転入早々のテストでは1回しか使わなかったが、実際彼の戦い方はこの不幸と不幸探知を武器にして戦うのである。


難場は走り出そうと、準備をするがその際、猛攻猛将ザ・ストレングスの空気による影響か、木の葉が舞い目にゴミが入る。それを隙だと感じた猛攻猛将ザ・ストレングスは勝負を仕掛けようと踏み込んだ、その瞬間。どこから湧いたかバナナの皮で足が滑った。


「は?」


「ん?」


目のゴミが取れた難場は滑って転んだ猛攻猛将ザ・ストレングスに向かってその辺の小石を投げる。

その小石は猛攻猛将ザ・ストレングスのすね部分に直撃した。痛みにもだえる猛攻猛将ザ・ストレングスにゆっくりと近づき難場は首に腕を巻き付けて意識を飛ばそうと首を絞めるが、猛攻猛将ザ・ストレングスは最初の攻撃で難場の異能力の効果に気づいたのかすぐにその腕から抜け出した。


「危ないことするね。今の運が悪かったら死んでいたでしょ?俺が。」


「さぁ、どうでしょう。不幸って異能力以外でも起こりうる現象だからね。さて、と、ここにさっきの石があります。これを今から山の奥へと投げ入れます。どうなると思いますか?」


言わずもがな、何か不幸が起こる。と気づいた猛攻猛将ザ・ストレングスはすぐに石を奪おうと地面を思い切り叩き揺らす。難場はその揺れに耐えられずに石を放してしまう。猛攻猛将ザ・ストレングスは今度こそいけると踏み込んできた。


XIII XIII XIIIサーティン


2度目の異能力使用。

猛攻猛将ザ・ストレングスは難場の落とした小石に躓き顔面を強打した。

先程のすね強打の何倍もの激痛が額と鼻を襲う。顔周りを触ると鼻血が出ている。

難場は体勢を立て直し猛攻猛将ザ・ストレングスにつかみかかろうとしたが手を振り払った猛攻猛将ザ・ストレングスの手に指が辺り突き指する。

その場にもだえる難場はどことなく笑っているようにも見える。


「何が、おかしい。」


「おかしくないさ。ただ、順調に行っているかなと仲間を心配しているだけさ。」


お互いに息を整えて構えなおし難場は再び能力を使う。

三度の能力使用。

猛攻猛将ザ・ストレングスの後ろから獣のうなり声が聞こえた。

振り向くと、元気によだれをたらした熊がこちらに視線を向けていた。

まるで目の前に宝の山があるかのような目。食欲に満ちた獣の目。


「さっきの揺れで起きたようですね。」


「君はさっきから何か計算しながらたたっているな?」


「なんのことやら…それよりも、この状況は絶対に避けられませんよ。目を合わせてゆっくりと下がるか、大声を出しながら半狂乱で向かっていくか、止まるか。三択に一つですね。」


難場はそのまま静止を貫こうとしたが鼻がむずむずとうずく。

猛攻猛将ザ・ストレングスはゆっくりと後ろに下がったが、その後ろの難場の方からくしゅんとかわいらしいくしゃみが一つ聞こえてきた。

恐る恐る後ろを振り向くとえへへと照れ臭そうにする難場がこちらを見つめていた。

そんなことのせいで熊は難場と猛攻猛将ザ・ストレングスの方へ突進してきた。

猛攻猛将ザ・ストレングスは覚悟を決め、能力で熊を殴り飛ばした。


その瞬間、難場は四度目の能力使用をした。

飛ばされたクマは丁度ハチの巣にぶち当たり落ちたハチの巣からは大量のハチが出てきた。

ただのハチではない。オオスズメバチ。大きな顎が特徴的ないかついスズメバチの仲間であり、凶暴なスズメバチの代表である。

たまたま、攻撃範囲の中にいた難場と猛攻猛将ザ・ストレングスはその場から慌てて走る。


「さっきから君の能力は厄介だな!!」


「さぁ、これは異能力の物ではないかもしれませんよ?」


スズメバチを拳から出る空気法で一掃すると再度、難場に殴り掛かる。

今度は見事に攻撃を当てた猛攻猛将ザ・ストレングスの猛攻が始まる。

拳を避けては当たり、当たってはよけを繰り返す難場の体はボロボロであったが、本人は至って普通。


「はぁぁぁぁ!」


拳をもろに受けた難場は吹き飛ばされ、その先にあった川に落ちた。

流れのはやい川は難場の足を取り難場を押し流そうとする。

それでもなお、難場の表情は余裕そうだった。その表情が気に食わなかったのか猛攻猛将ザ・ストレングスは川に足を踏み入れ、素早く迫る。


XIII XIII XIIIサーティン


五度目の能力使用。

先程も説明した通り、この異能力は使うたびに不幸度合いが上がってゆく。

威力も、何もかも上がっていく。

猛攻猛将ザ・ストレングスと難場の入った川は幅の大きい川である。

そのため、ほんの少し水位が増したとしても人の目にはあまりわかるものではない。

ただ、川の水位がわからなくても、異能力が使用されているのをわかっている状況ならば馬鹿でも、猿でもわかる。

川の水位が上がる。だが、猛攻猛将ザ・ストレングスは気づかない。

ずぶ濡れの難場を何度も殴る。そのたびに威力がます拳に難場は泣きそうになるが、笑うことを辞めない。だんだんと血まみれになる顔面。だが、笑うことを辞めない。

ほぼ気を失おうとしていた難場の体を持ち上げ岸までもっていこうとした猛攻猛将ザ・ストレングス

はやっと気づく。川の水位が先程よりも数センチいや、数十センチ上がっていることに。


「お前!!まさか!!」


その声と共に上流部分から濁流が流れるのを確認した。

しかし、水に足を取られたいる猛攻猛将ザ・ストレングスはうまく進むことができない。

仕方なく、難場を岸に投げ濁流を吹き飛ばそうと拳を構え、濁流が来るタイミングを待つ。


「本当に逃げなくていいのか?」


「何を言って……」


XIII XIII XIIIサーティン


六度目の使用。

難場を岸へ投げた猛攻猛将ザ・ストレングスは案の定、体制を崩し、土砂崩れに巻き込まれて流されていった。

難場は立ち上がろうと膝をついたが右足が動かない。それどころか激痛が流れる。


「骨折ですか。まぁ、あの異能力者を流したことに比べればまだ幸福でしょう。まぁ、なんといいますか、不幸中の幸いかな…なんて……」


痛みでなのか、はたまたべつのことを思ってなのか難場は涙を流す。


「やっぱ痛いです。東隊長。」


その場に動けずに寝そべる難場は我楽隊長に通信をつなげた。


Ep17:FIN

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