自分の異能力が大嫌いだ。
だってお父さんの能力と同じなのだから。
お父さんは嫌い。だって、お母さんをおいて出て行っちゃったんだもん。
私は今どこにいる?
雫が一粒落ちる。それは涙なのか、水なのかもわからない。
『あと少しだ。おいで……ここだよ。』
声の方に足が進む。
そう、わたしは水槽から出るのだ。
出るのだ。
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自分の能力が嫌いだ。
周りを不幸にするから。
そのせいで死人が出たから。
そのせいで僕自身も不幸になったから。
”気にするな、ボウズ。お前はもっと自信を持て。な?”
「そうは言っても、隊長。もうあなたは………」
「何を独り言をしゃべっているんだ?不気味だぞ。」
「あぁ、すまないね。考え事をするといつもこうなんだ。さぁ、続きを始めよう。」
「ならば、今度こそは当ててくれよ。」
拳を構える
「バカ力が。」
「ほら、そのゴム弾、当てて見せろ。」
難場はゴム弾を射出するがゴム弾の勢いは空気に殺される。
なんの意味もなさない銃を放り投げて難場はため息をつく。
「
異能名
使うたびに不幸の度合いが、範囲が、威力が変わってくる。
1度の使用で効果が5分程度。切れたらまた異能力名を名乗り使用する異能力である。
転入早々のテストでは1回しか使わなかったが、実際彼の戦い方はこの不幸と不幸探知を武器にして戦うのである。
難場は走り出そうと、準備をするがその際、
「は?」
「ん?」
目のゴミが取れた難場は滑って転んだ
その小石は
「危ないことするね。今の運が悪かったら死んでいたでしょ?俺が。」
「さぁ、どうでしょう。不幸って異能力以外でも起こりうる現象だからね。さて、と、ここにさっきの石があります。これを今から山の奥へと投げ入れます。どうなると思いますか?」
言わずもがな、何か不幸が起こる。と気づいた
「
2度目の異能力使用。
先程のすね強打の何倍もの激痛が額と鼻を襲う。顔周りを触ると鼻血が出ている。
難場は体勢を立て直し
その場にもだえる難場はどことなく笑っているようにも見える。
「何が、おかしい。」
「おかしくないさ。ただ、順調に行っているかなと仲間を心配しているだけさ。」
お互いに息を整えて構えなおし難場は再び能力を使う。
三度の能力使用。
振り向くと、元気によだれをたらした熊がこちらに視線を向けていた。
まるで目の前に宝の山があるかのような目。食欲に満ちた獣の目。
「さっきの揺れで起きたようですね。」
「君はさっきから何か計算しながらたたっているな?」
「なんのことやら…それよりも、この状況は絶対に避けられませんよ。目を合わせてゆっくりと下がるか、大声を出しながら半狂乱で向かっていくか、止まるか。三択に一つですね。」
難場はそのまま静止を貫こうとしたが鼻がむずむずとうずく。
恐る恐る後ろを振り向くとえへへと照れ臭そうにする難場がこちらを見つめていた。
そんなことのせいで熊は難場と
その瞬間、難場は四度目の能力使用をした。
飛ばされたクマは丁度ハチの巣にぶち当たり落ちたハチの巣からは大量のハチが出てきた。
ただのハチではない。オオスズメバチ。大きな顎が特徴的ないかついスズメバチの仲間であり、凶暴なスズメバチの代表である。
たまたま、攻撃範囲の中にいた難場と
「さっきから君の能力は厄介だな!!」
「さぁ、これは異能力の物ではないかもしれませんよ?」
スズメバチを拳から出る空気法で一掃すると再度、難場に殴り掛かる。
今度は見事に攻撃を当てた
拳を避けては当たり、当たってはよけを繰り返す難場の体はボロボロであったが、本人は至って普通。
「はぁぁぁぁ!」
拳をもろに受けた難場は吹き飛ばされ、その先にあった川に落ちた。
流れのはやい川は難場の足を取り難場を押し流そうとする。
それでもなお、難場の表情は余裕そうだった。その表情が気に食わなかったのか
「
五度目の能力使用。
先程も説明した通り、この異能力は使うたびに不幸度合いが上がってゆく。
威力も、何もかも上がっていく。
そのため、ほんの少し水位が増したとしても人の目にはあまりわかるものではない。
ただ、川の水位がわからなくても、異能力が使用されているのをわかっている状況ならば馬鹿でも、猿でもわかる。
川の水位が上がる。だが、
ずぶ濡れの難場を何度も殴る。そのたびに威力がます拳に難場は泣きそうになるが、笑うことを辞めない。だんだんと血まみれになる顔面。だが、笑うことを辞めない。
ほぼ気を失おうとしていた難場の体を持ち上げ岸までもっていこうとした
はやっと気づく。川の水位が先程よりも数センチいや、数十センチ上がっていることに。
「お前!!まさか!!」
その声と共に上流部分から濁流が流れるのを確認した。
しかし、水に足を取られたいる
仕方なく、難場を岸に投げ濁流を吹き飛ばそうと拳を構え、濁流が来るタイミングを待つ。
「本当に逃げなくていいのか?」
「何を言って……」
「
六度目の使用。
難場を岸へ投げた
難場は立ち上がろうと膝をついたが右足が動かない。それどころか激痛が流れる。
「骨折ですか。まぁ、あの異能力者を流したことに比べればまだ幸福でしょう。まぁ、なんといいますか、不幸中の幸いかな…なんて……」
痛みでなのか、はたまたべつのことを思ってなのか難場は涙を流す。
「やっぱ痛いです。東隊長。」
その場に動けずに寝そべる難場は我楽隊長に通信をつなげた。
Ep17:FIN