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Ep.34 王の帰還

朝方のアラームを止めて焔戸えんと もゆるは起き上がり携帯を見て時間を確認する。登校まであと三時間もあると二度寝を決め込もうとした時、メールの方に一件届いていることに意識を少し覚醒させてメールの内を見る。メールを読んで数分後、一気に意識がはっきりと覚醒する。焔戸は携帯を放り投げて登校の準備を始めた。


「マジか……帰ってきたのか」


同時刻難場なんば 十三じゅうぞうもメールを見て口角が自然と上がっていた。


「帰ってきたんだ…これは、漫画見たあの展開だ……」


漫画や小説などの本で埋もれた学生服を取り出して登校準備を始める。そして、黒瀬くろせ れいも登校準備を終えてメールも確認していた。


「帰ってきたか…すめらぎ。」


三人は心を躍らせながら登校時間が迫るのを待っていた。


空港近くのホテルにて、シャワーを終えた元BLACK D.O.G副隊長補佐 すめらぎ王手おうては時計を一瞬見て朝のニュース番組の「今朝の占い」を見る。占いの一位から十二位の内容とラッキーアイテム・パーソンなどを記憶する。


「ふむふむ、さそり座のラッキーパーソンは「中学時代からの友人」か……ラッキーパーソンごと運が向いているようで安心した。」


制服の袖に腕を通して王手はホテルからチャックアウトした。外では担任の我楽がらくおおいが待っていた。迎えに来ていた担任に王手は微笑みながら近づいていく。


「時間ぴったりですね。我楽先生。送迎ありがとうございます。」


「なぁに。BLACK D.O.Gの要が帰ってきたんだ。これで俺の気苦労が減るんなら靴だって舐めるよ。」


「はは、御冗談を。しかし、まぁ、確かに俺がいないとあの三人は最適解を見つけることができませんからね。では、このまま学校にお願いします。」


「あぁ、それじゃ行こうか。」


我楽は王手を車に乗せて学校へ向けて出発した。道中、大型商業施設が目に入った王手はその中に人が入っていくのを見てふと集団がカバンを持って中へ入っていくのを見た。



「ふむ…これは面白いことになりそうだな。」


「ん?今なんか言ったか?」


王手はなんでもないと言って前を向いて学校に着くのを楽しみに待っていた。


─────────────


焔戸、難場、黒瀬の三人は通学路で出会うとお互いに近づき例のメールの話をする。


「見たか?あのメール。」


「もちろん。これは、漫画的に言うと「再会イベント」という奴ですよ。」


「名前的にすごそうなイベントなのがわかる。一体どんなことが起こるんだ?」


「いや、イベント云々はどうでもいいだろ…それより今日から任務が楽になるんだぜぇ?」


悪そうな顔をしている焔戸をわき目に黒瀬と難場は強キャライベントが何たるかを語り合っている。


「おいおい、無視すんな~。」


「このイベントでは、以前の仲間と合流してその仲間の強さを読者に見せる神イベントです…いや~楽しみですね~」


「ほう、なんだかいい響きだ。早く皇に会いたいな。」


三人はわちゃわちゃとしながら学校へ入っていった。教室へ入りカバンを置いてわくわくしながら待っていると担任が三人を呼びに来た。


「お~い。焔戸、黒瀬、難場、ちょっと来てくれ~」


焔戸、難場の二人は先ほどのウキウキした表情から一気に無表情になる。担任は首をかしげながらも三人を連れていつもの空き教室へ向かった。教室に入るとそこには皇 王手が待っていた。担任はサプライズと言いたげな感じで三人へ顔を向けるが一人をのぞいて二人は無表情で我楽を見ていた。


「な、なんだ。うれしくないのか…皇だぞ?」


「いや、なんというか、この場では会いたくなかったかなって……」


「隊長、いや、先生、こういう再会イベントはこう、皆の前でやった方が気分が上がるというか……」


「皇、久しぶりだな」


ただ一人黒瀬だけは王手に近づき思いっきりハグする。王手は黒瀬のハグに笑顔でハグを返す。


「零。相変わらず純真無垢な奴だ……ほら、燃、十三も」


二人は無表情から少し照れたような表情になり渋々王手にハグをする。ここに元BLACK D.O.Gの四人が揃った。感慨深い光景に我楽も腕組をしてうなずく。


「さて、元BLACK D.O.Gの四人が揃ったな。今のところ任務は出ていないから今日は三人で皇を学校や町の案内をしてくれ。」

.

「今日の任務ということですか」


「まあ、そういうことだな。それじゃあとはHRでだな。」


「それじゃ三人ともまた後で。」


三人は王手に手を振って教室へ戻った。教室にはクラスメイト達が集まりだしており、三人はそのままHRまで各々過ごした。担任が入ってきて皆が席に着きHRが始まり王手を紹介する。


「え~、皆、忘れているようだったからサプライズ的に紹介する。転入生は四人いたよな?焔戸、難場、黒瀬、そして、もう一人だが、帰国時間が合わなくてすぐには来ることができなかった。では、改めて……入ってきて」


王手が教室へ入ってくるとクラスの女子はその美しい顔立ちに頬を赤らめて男はなぜか悔しそうな表情になる。王手はそんなことを気にせずに黒板に名前を書いて自己紹介する。


すめらぎ王手おうてだ。これからよろしく頼む。」


王手は席に向かおうとしたが、忘れていたことを思い出して教壇で異能力名を言う。


「異能力は絶対的な王の一手チェックメイトハンド。自分の所属するコミュニティを自分を含めて「駒」として設定して指示を出し、勝負に勝つという能力だ。」


驚くクラスメイトをよそに王手は先ほどあった三人の近くの空いている席へと向かっていった。焔戸は王手の説明に対して少々苦言を呈する。


「いや、お前にしては雑な説明だったな。」


「このコミュニティ内で事細かに説明しようとすぐに理解はできないだろう。俺がいれば勝てることは本当なのだからそれが伝わればいい。」


異能力名絶対的な王の一手チェックメイトハンド

自分の所属するコミュニティを自分を含め「駒」として扱い、指示を出して戦場の運命を操ることができる能力である。加えて運勢を上昇させる能力も持つ。「駒」の役はその日の運勢で決まる。能力の中心である王手は大体キングの役割をしており「駒」へ指示を出したり、時には操ったりもできる。そして、絶対に勝てると豪語する王手はBLACK D.O.Gで副隊長補佐を務めるほどの知力を持っている。


Ep.34:FIN


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