焔戸と黒瀬は大型商業施設の一階で立てこもり犯の仲間たちを制圧し終わり、仲間を縄で縛りつけて王手達に通信を取る。
「そっちはどうよ。こっちは終わったぜ。」
『こちらもあと少しで終わりそうだが……そちらにはリーダーらしい者はいなかったか?』
「ん?あぁいなかったぜ。居場所を聞いても分からないの一点張りでよ。」
焔戸は鋭くにらみつけると、立てこもり犯の中は涙目で必死に首を縦に振る。
「そっちもいなかったか。んじゃ、こいつらの頭はどこにいるんだ……」
『ん~…こちらの能力でも運命を見ることができない。どこかに隠れているな。』
「俺らも探してみるわ。それじゃ。」
通信を切った瞬間、施設の大通りの天井が大きな音とともに爆発して崩れる。焔戸と黒瀬は立てこもり犯の仲間たちを急いで雑貨店の中へ移動させる。焔戸は仲間の一人の顔面を掴み睨みながら尋問する。
「おい、お前らのボスはどこだ。爆弾はまだあんのか?」
「わ、わからねぇ、ボスも爆弾の場所も全くわからねぇんだよぅ」
涙があふれているひげ面を放り投げて黒瀬に近づく。
「いたか?」
「いや、見当たらないな。爆弾もあったようには見えなかった……あそこまでの大爆発だったら普通俺たちが気づくくらいの大きさの爆弾になるはずだ。それがなんで……」
砂埃が晴れると王手達から通信がくる。焔戸はその通信に慌てて出て安否の確認をする。
「皇、大丈夫か!?」
『こちらは問題ない。口ぶりからするに爆発は君らの真上で起きたようだな……その規模の爆弾なら我々でも気づくはずだから相手の能力は自分を含めた物を隠すのに特化した能力だろう。こちらも尋問しながら創作を続ける。』
「おう、気をつけろよな。」
焔戸が通信を切り黒瀬へ目配せをする。黒瀬は無言でうなずいたまま、焔戸を後に雑貨店を出るとすぐそこに長身の男性が現れる。立てこもり犯たちと同じような姿格好をした男性だ。男性は二人と目を合わせるとにこやかに手を上げる
「やぁ…」
二人はその男性に向かって攻撃を仕掛ける。焔戸は組み付こうと走り、黒瀬はゴム弾を装填した銃を発砲する。男性は二人をあおるように突然消え、そして、二人の背後へ立つ。
「そう、興奮するなよ。」
「こいつ、瞬間移動しやがったぞ。」
「いや、それはない。王手が間違えるはずがない。こいつは能力を使って隠れたんだ。」
男性は二人と目を合わせるとそのまま近くの壁へ隠れた。二人は男性を追いかけて捕獲しようと追い詰めるが、そこに男性はいなかった。
「どうなってやがる。」
「この場から隠れて出ようとしたら、まず、俺と焔戸の誰かに肩がぶつかるはずだ……」
「やっぱ、瞬間移動の能力だろ。どこに行きやがった!」
焔戸は踵を変えて先ほどの位置へ向かう。黒瀬は焔戸の後を追いかけて冷静になるように口を開いたが焔戸の真上で大きな爆発音がする。黒瀬は焔戸を守ろうと焔戸に覆いかぶさり、一か八か能力を発動させる。
「
身体が粒子化して焔戸に当たる瓦礫の部分をすべて黒瀬が喰らい守った。実態が戻ると焔戸が黒瀬に手をかす。
「大丈夫かよ。」
「あぁ、だが、まだこれには慣れないな。」
そんな二人を見ていたかのように男性が拍手をしながら出てくる。
「てめぇ、どこに居やがった。」
「すぐそこにいたよ。君らの熱い友情も見ていたさ。」
焔戸と黒瀬は再び男性の前に立つ。
「どうするよ。」
「いや、このままでいいだろう。」
「は?お前何言って……」
焔戸は何か気づいたように目を見開く。そして、そのまま黒瀬とうなずきあって先ほどと同じように組み伏せようと距離を詰める。男性は何度やっても無駄だと言わんばかりに消えて現れてを繰り返す。
「学習しないな〜無駄なんだよ。そんなことをしても。」
その言葉に焔戸は肩で息をしながらも余裕の笑みを見せる。
「無駄かどうかは、うちの王が決めるんだよ。」
「何を言って……」
その時、王手と難場が到着した。
「待たせた。どうも手間取ってしまってね。」
「手間取る?」
「そうかい。そりゃご苦労。で、こいつの能力は分かったかよ。」
「あぁ、攻略法まで求め終わったよ。」
「何を言っている!?」
男性は話についていけず右往左往としている。
「お前が素直に能力教えてくりゃ、こんな荒々しいことしなくて良かったんだがな。」
「ガキが舐めるなよ」
ボタンを押すと再び爆発が起こる。次は焔戸と黒瀬のそばにあった植木鉢が爆発して破片が二人へ当たろうとしたその時、王手が口を開く。
「
破片は二人をそのままよけて二人は無傷のまま男性に近づく。男性はそのまま先ほどと同じように二人をよけようとしたが王手が再び口を開く。
「赤いもの物を持っている者はつまずく。」
「はぁ?赤いものぉ?私が持っているのは…黒い起爆スイッチだ。」
「ボタンは赤いはずだ。」
「は?」
男性はそのまま転び足をひねる。
「くぅ……なんだそいつの能力は…」
「理不尽だろうが、俺の能力は絶対だ。人の上に立ち、運命を操り、そして、必ず勝利をこの手に収める……さて……君の能力も分かってきたよ。」
王手は男性が転んだ拍子にぶちまけた噛みを一枚拾い上げて表を見せる。そこにはリアルな爆弾の絵が描かれている。その絵を見て難場の能力を推測する。
「絵を現実にする能力ですかね。」
「いや、違う。これは絵じゃない。彼の能力は、物体を平たくする能力だ。能力名まで当て上げよう。
男性は苦虫を嚙み潰したような顔になると自らの体を紙のように薄く平たくして施設の壁の隙間へ逃げようとする。それを見た王手は難場へ合図を出して能力を使用させる。
「
「
男性が入っていった隙間の壁は突然倒壊を始め、黒瀬と焔戸は壁が倒れても問題ない方角へ全力で走ってよける。砂埃が晴れるとボロボロの男性がそこに立っておりバカにしたような笑みを向けてくる。焔戸と黒瀬は戦闘続行かと構えるが王手が止める。
「なんだ、最後は王様がとどめを刺すのかな?」
「いや、殺しはしない。ただ、
威圧
圧倒的な威圧感。
男性はそんな威圧感を放つ王手と目が合ってごまかそうとしたが、汗が噴き出て嘘が言えないような雰囲気に息が詰まりそうになる。自分よりも年下で、身長も低いはずなのになぜかだんだん巨大化してきて見えてくる。
「ば、爆弾は……ばく、爆弾は……これで全部だ。もう、施設内にはな……い。」
そのまま白目をむいて男性は倒れこんだ。
「よし、これで一件落着だな。」
王手がそういうと同時に警官が突入してきてこの一件は終わりを迎えた。
Ep.36:FIN