政府関係者の予知能力者は次なる未来を見始めた。
大きな獣を扱う一人の少女が無表情に町を破壊する。
『みんないなくなっちゃえ。みんな消えちゃえ。私だけがいればいい。私が一人ならそれでいい。』
額に汗を浮かべて目を開く。
「次の予知が出ました……例のクラスの中の少女……
関係者は急いで我楽へ連絡を取る。
「それでは、よろしく頼む。
『了解しました。必ず遂行します。』
電話を切った我楽は送られてきた生徒のデータに目を通しながら自分のクラスの出席簿を見て確認する。
「出席番号20番……
HR中も多くの綿に囲まれて寝ている女子生徒を思い出す。
「あの子か……」
成績は下の中、授業にも出ているし、提出物もしているが、やはり授業態度を他の教科担任からも注意を受けている。
「どうしようか…」
我楽は机に置いてある焔戸、難場、皇、黒瀬以前の隊長らしき人物との写真を見て安堵と不安の混ざったため息を吐く。
「まぁ、あいつら四人が揃ったんだ。きっと大丈夫なはずだ。」
写真を倒して資料をまとめて我楽はパソコンを閉じた。
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翌朝、学校にて元BLACK D.O.Gの四人は相変わらず王手が引き連れてきた女子生徒に囲まれながら登校している。
「なぁ…コレ、いつまで続くの?」
「知らないんですか?焔戸。このイベントはシリアスな展開以外とか、王手のボロが出て人気が普通になった時にしか解除されないイベントなんですよ?」
「むぅ…なんだか、異能力みたいだな。」
「そうなんですよ。異能力みたいで不思議でしょ?僕もどうやってこのイベントを終わらせるか悩んでいるんですよ。これまた厄介なことに皇は出すボロがない完璧イケメンなんですよ…さて、どうしようか……」
焔戸、難場、黒瀬の三人は一旦王手を取り囲む女子生徒たちの群がりを抜けて改めてゆっくりと歩き出す。焔戸と黒瀬は何やら二人で話をはじめ、難場は小説を読みながら王手の人気を丁度良くしようと考えて歩いていると何かに躓いた。
「あいたた…いや、僕ってば相変わらずだな。」
躓いた箇所を見ていると白い綿毛があった。
「これは……なんでしょうか……」
白い綿毛をかき分けていくと中に死にかけている少女がいた。
「え?」
「……し、死に……お腹……」
「死にそう?これは大変です……焔戸!黒瀬!手伝ってください。」
難場が二人へ手招きしていると白い綿毛が難場を取り込み動き出した。二人はそれを見て慌てて白いモフモフの塊を追いかけた。必死に追いかけて二人がやってきたのは、保健室だった。急いで入るとモフモフから解放された難場が恍惚とした表情になって椅子に座っていた。
「おい、大丈夫かよ……」
「ふえ、モフモフ……じゃなかった……はい何もけがはしていませんでした。それより、彼女は?」
「女なんていなかったぞ。ただのモフモフは散り散りになったがよ……」
二人が話していると黒瀬が何か見つけたようで二人へ手招きする。二人は黒瀬のほうへ向かいベッドのカーテンを開けると白いモフモフに囲まれた少女が顔だけを出してベッドに眠っていた。
「難場が見たというのは彼女じゃないか?」
「えぇ、この子です……大丈夫でしょうか……」
死にかけている少女は目を開けると三人へ向けて細々と口を開いた。
「ご、ごはん……お腹すいて……死……」
三人は慌てて昼ごはんに買った総菜パンを一つずつ分け与える。包装を開けずにそのまま手渡しすると首を振って「あ、あけ、開けて……食べさせて」と言い始めた。焔戸はパンの包装を開けてパンを差し出す。その時、難場が口を開いた。
「あ、コレ、腕ごと……」
難場がそういった時には遅く、焔戸の手はパンごと少女の口の中へ入っていた。
カヂッ!
ゴリッ!
「あぎゃぁぁぁぁぁ」
学校中に響き渡りそうな声に養護教諭が飛び込んできた。三人は養護教諭と目が合い、数分の沈黙のあと少女がまた顎に力を入れた。
カヂカヂ!
ゴリゴリ!
「だぁぁぁぁ!離せ!放して!痛ぇ!!」
数分後、やっとかじりつきから解放された焔戸は養護教諭に治療されてベッドに横たわる少女へ声をかける。
「メイトちゃん。起きて。保健室は寝るところじゃないわ……あなた達、クラスメイトよね?連れて行ってよ。」
「いや、そんなこと言われたって……」
焔戸がそういうとメイトは白いモフモフを出して自分で教室へ向かった。
「
三人が了承する前に、メイトは教室へ向かっていった。同時にチャイムが鳴り響く。
「おい、お前ら、遅刻だぞ。行くぞ」
「言われなくとも。」
「うむ…急ごう」
三人はそのまま間に合わずに遅刻した。
Ep.37:FIN
不思議な生物