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【白夜】虎と狼は再び

殺し屋グララス・ロマネスクは雑多の中で黒服を見つけて目で合図をする。黒服はグララスに気づくと手に持ったアタッシュケースを持ってグララスに近づく。二人はそのまま路地裏へと移動しグララスはアタッシュケースの中身を確認した。番号の書かれた注射器が三本見えるとそのまま懐へと入れた。


「では、私はこれで。」


「ちょっと待て。」


グララスは黒服を止めるとそのまま流れるような動作で黒服の首を切り裂いた。黒服は何が起こったのか分からずにそのまま静かに倒れる。黒服がグララスへ目を向けるとグララスは無表情を保ったまま汚れたナイフを白いハンカチで拭きとり黒服の顔へと被せた。


「二ホンでは、死人にこうやると聞いた。では、ありがとう」


グララスは言うとそのまま路地裏から出ていった。その日の午後に不審死した黒服のニュースが流れるが影戸はライブで見ていたのでため息をついた。


───────────


一攫千金ウェブに動きを見たカラスマは実行員を集めてライブの様子を見せた。


「殺し屋……ですか……」


「みたいだね~」


パソコンの画面に映る刺客の情報に八雲とローズマリーは表情をこわばらせる。


「グララス・ロマネスク……か……」


「厄介な方が参加していますわね……」


深刻な顔の二人にカラスマと一狼は二人へ視線を集中する。


「知ってるの?」


八雲が答えようとするとローズマリーが口を開いた。


「彼は…前回のゲームの時にも参加をした殺し屋です……」


「それって……」


ローズマリーは無言でうなずきLWO創立前、カラスマと出会う前のことを話した。


「……というわけですわ。ですから今回はお気を付けくださいまし。」


「……わかりました。」


その場の空気が少し重くなる。その時、カラスマのパソコンの画面に砂嵐が流れる。そして、画面が真っ白になると文字が打ち込まれた。


『この画面をみているターゲット。無駄なあがきはよせ。自分の運命を受け入れろ。』


画面が元に戻るとカラスマは冷静にパソコンを初期化しローズマリーに今使っているWi-Fiの解約を頼んだ。


「ハッキングとかもできるの?厄介だね~」


「彼は「何でもできる殺し屋」ですから…目をつけられた最後死ぬまで追いかけてきます。」


「そんな殺し屋から逃げ切れたローズマリーさんはどんな方法で……」


「仮死を利用した見事で華麗な作戦勝ちですわ!」


ローズマリーの表情に一狼は絶望し八雲はやっと口を開く。


「仮死作戦は今回使えなくはないけど、死体を首謀者が回収しに来るかもしれない。あと、今回は億の金が動くからね、多分グララスも首謀者は必ず一狼くんの安否は確認するだろうね。」


四人は頭を抱える。パソコンにメッセージを送れるということは場所は割れている。よって、籠城は不可能。仮死作戦は安否を確認されるため不可能。ありとあらゆる作戦を考案するが、それらもローズマリーによって却下される。


「全部試しましたが、一狼様の言った作戦という作戦は全てダメでした。」


「そんな……全部だめだったんですか?」


「はい、罠3件、おとり1件、不意打ち4件、そのほかにもいろいろ試しましたが、全て躱されて逆に追い詰められました。」


「そんな…だったら」


「もう殺し合うしかないね。」


カラスマの言葉に一狼はさらに絶望した。その様子を見ていた八雲が口を開く。


「とにかく、今ここにいるのは得策じゃない。出よう。一狼くん。」


「確かにそうですね…カラスマさん仕事とか入ってますか?」


「ん~入ってないね。戦いが終わるまではいつ帰ってきてもいいよ~」


「その間LWOはどうしますの?」


「そりゃ、大沢くんと櫻井ちゃんにお願いするよ?」


奥の部屋が空くと櫻井が顔を出した。


「私は拒否します。仕事を任せてきたら今すぐにでも出ていきます。」


ドアが閉まると静寂が広がった。


「と、申しておりましたが……」


「ん~ボクが頑張るか☆大沢くんもいるし。」


その場の空気がまた静寂に包まれると八雲はため息を吐きながら一狼の手を引き事務所を出ていった。


────────────


芽吹市の路地裏にて、無防備に寝ている女性が一人。そこに違法薬物の取引をしたくて入ってきた青年が一人。ボロボロで青年と呼ぶには老け顔の男である。そんな男は寝ている女性を見つけると体に触れようと手を伸ばした。


「触るな。」


女性は伸びてきた手を掴み骨を折る。男は叫び声をあげて女性から離れると、折れた右手を抱えながら女性をにらみつける。


「てめぇ!」


「許可なく……いや、許可があっても私の体に触れることは許さん。」


女性はベルトを手に持ちながら、踵を返すが青年は女性の背中に抱き着く。


「だから触る……な!」


女性は青年を背負い投げして青年の意識を完全に飛ばした。熱に侵されるその体を引き釣りながら月下琥珀は正午の路地裏を抜けて表通りへと向かった。もうろうとする意識を振り払うように歩き続ける。そのとき、鼻孔にディウスの濃い匂いが入り込んでくる。匂いを追って車道付近に出ると一台の車とすれ違った。すれ違いざまにその車の中を見ると見覚えのある顔が飛び込んでくる。


「八雲藤四郎と確か明星とか言ったか……?」


月下はそのまま車を追うように人混みをかき分けて行った。


続く。

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