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【極夜】共闘または三つ巴または乱戦

地を蹴り森を駆け抜ける。たまに地雷を踏んで体勢が崩れるが僕は空中で体勢を立て直しながら刺客を探す。次こそ地雷地帯が終わると次は落とし穴地帯に入った。日陰で足元が悪く落とし穴に落ちそうになる。淵に手をかけて何とか落下を阻止する。日陰の隙間から差す光で落とし穴の底がうっすらと見える。大量の槍?か、なにかが縦向きに天を向いている。これは落ちたらひとたまりもない。落とし穴から上がろうとすると淵を掴んでいる手の側に土煙が上がる。煙と火薬の匂い。これは誰かが僕の手に向かって弾丸を撃ってきている。


でもどこから?


というか、相手から僕らのことは見えるのに僕らからは相手の位置は見えない。


ふと、手に痛みが走る。


強烈な痛み。


だが、出血はしていない。最初は土煙が上がっているのを見て小石や土が弾丸によって弾けた影響だと考えていたが全くそんなことはなかった。そもそも、ただの小石なら変態した僕の体には痛くもかゆくもないはずだ。これは……


「刺客のセルの力?でもなんの力だ?」


分からない。ただでもこの痛みは今まで受けた攻撃で一番痛い。何とか痛みに耐えて僕は落とし穴から這い上がり林の中に入り状況を見ようと顔をのぞかせる。瞬間、頬が何かをすり抜けて後ろに土煙が上がる。


「位置は完全にバレている……なら動き回るしかない。」


足を動かしたがその位置を狙撃される。変態時、ディウスの体はディウスの攻撃でしか傷をつけることができないとカラスマさんから聞いた為、この狙撃自体が刺客のディウスの攻撃だと悟る。痛みも先ほどのものと比にならない。思わず叫び声をあげると弾丸がまた僕に向かってくる。次は右肩を狙撃される。人間体ならこの痛みは発狂ものだ。痛みで頭がおかしくなりそうなのをこらえて林の中をできるだけ早く走り回る。それでも刺客は僕に向かって狙撃をしてきている。


「いたい。痛い。痛い、痛い……」


喋っていないとこの痛みは軽減できないような気がする。いや、変わらない。痛い。痛すぎる。この痛みは何の痛みなんだ…相手の力にしてもそんな力が自然界に存在するのか?考えても仕方ない。痛みを和らげるため、僕はそこか水辺がないか林の中を突っ切って水辺を探した。


────────────


必ずや、ディウスを皆殺しにする。そのためにはまず明星……あの養殖型を殺さないと厄介なことになる。痛いはずの四肢を引きずりながら私は山道を歩く。感圧式の地雷を踏むがそれでも進む。足に破片が刺さっているのか出血もしている。


だからなんだというのだ。


それがどうしたというのだ。


あんなバケモノを野放しするくらいなら足や腕の一本、二本、どうということはない。


地雷地帯を抜けたのか地面を踏もうが爆発はしなかった。先へ進むと落とし穴があった。よく見るとこの辺は戦闘があったようで弾丸の痕跡や足跡が見える。ディウスの匂いも二つ残っている。まだ濃い。経っていて二分。ということは匂いを追えば確実に二匹は殺せる。その一匹は確実に養殖型だ。足を引きずりながら私は気づく。弾丸の痕にうっすらキラキラとした粒が見えるのだ。うっすらとキラキラと言っても本当に小さく、肉眼ではとらえるのもやっとのサイズ感だ。


「薬、ではないな……なんだこれは……」


触ろうとしたが、手を止める。


「毒か?」


鼻孔に本当に微妙に感じるくらいの匂い。嗅いだことはないが、これは危険だと頭の中の本能の部分が警鐘を鳴らす。私はそのキラキラから離れて林の中を裂けてなるべく道を歩き遠回りになるが匂いをたどり進んだ。


────────────


薄っすらと感じた水の匂いに僕はまっしぐらに走る。その間も弾丸は僕を撃ち抜こうと襲ってくる。痛みのせいで罠とか相手の作戦とかは考えてない。とりあえず川が見えてきたので僕は痛みが軽減されると思い川に痛む箇所を浸し擦る。しかし、やはり痛みは取れない。だが、最初よりはマシになったかと自ら上がると弾丸が足元を撃つ。破片が足へ散らばると新たな痛みが僕を襲う。


「痛い。痛い、痛い。痛い。」


痛すぎる。死んだほうがましだ。でも、死ぬわけにはいかない。刺客め、絶対許さないぞ。とりあえず、敵を僕の前に出そう。話はそこからだ。ベルトの突起を押し込み、足にエネルギーを充填する。


EXECUTIONエクスキューション


そのまま突起を何度も押し込み、さらに充填する。鈍い光は眩い輝きになりこれを放ったらここら一帯は揺れる。そう確信した僕は思い切り飛び上がりエネルギーが充填された足を地面に向かってぶつける。爆発音と共にぞの一帯はグラグラと揺れる。直後、林から物音がした。小石を持って思い切りそこへ投げた。林の物音は小石を避けるため僕の前に現れた。



────────────


人を自殺に追い込む植物が存在する。イラクサ科イラノキ属グループで2mの高さに20㎝の葉をもつ見た目は普通の植物。オーストラリアに自生するその植物の名は「ギンピギンピ」である。ポピュラーな名前に葉っぱもハート形で可愛らしいが人を自殺まで追い込む凶暴な食部tである。葉や枝に生えたグラスファイバーのような細かい刺毛の先に含まれる有害な神経毒が激痛を生み、触れた者は激痛に耐えられずに自ら死を選ぶのだとか。文字通り触れるだけで激痛が走るこの植物、刺さってしまったらワックスなどでその刺毛取り除くのだが、その過程で刺毛を内部で破壊してしまうと体内に残った破片によって長期の痛みに悩まされることになる。


小石を避ける為グララスはその身を一狼の前にさらした。しかし、その表情は余裕そうで一狼を前に慌てる様子もなくゆっくりと礼をする。一狼はグララスが自己紹介しなくてもそれが刺客だと理解し戦闘態勢に入るが、ギンピギンピの神経毒の痛みのせいでうまく拳を握れない。


「聞いているようで安心した。最初このセルを引いた時は驚いたがね。」


グララスは持っている銃を一狼に向けて引き金を弾く。一狼はその弾丸を大げさだがかなり距離を空けて避ける。グララスは少し笑いながら一狼の行動を称賛する。


「ふふ…そうだね。触れるだけで痛みが走るからね。そのくらい大げさに避けた方がいいよ。」


「くっそ……」


今にも叫びたい一狼はベルトの突起に手を添える。押し込もうと手に力を入れ始めるとグララスは引き金を弾く。一狼はそれを避けてどうするか考える。


距離を詰めてもいいが弾丸に当たった時のリスクが大きい。


距離を離したままでは狙い撃ちされる。


考えをまとめようとしていると、二人の全身に突如殺気の霧がかかった。互いに探り合うが、どうやらこれはお互いの殺気ではないらしい。殺気が明確に二人の間に流れると源へ自然に目が向いた。


「ディウスが二匹……だな……乂る……」


ボロボロの身なりでベルトを片手に持った月下琥珀がそこにいた。ベルトを巻き、注射器をセットして突起を押し込む。


ζώονゾーオン


熱水蒸気を振り払い月下は一狼へ向かって走り出した。


続く。

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