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EMG2:白い悪魔

怪獣や怪人には等級が存在する。注意級、警戒級、危険級、災害級、特別大災害級の五段階レベルでそれぞれの対応が変わってくる。その中でここ十年で四件しか確認できないのが一番等級が高い特別大災害級だ。


№1 海の怪獣


日本近海で確認され、体長が60mまたはそれ以上の大きさの大怪獣だと確認できた。黒い体色にサメ肌の様にザラザラとした皮膚を持っている。見た目はクジラだが、直立二足歩行ができ、非常に凶暴な性格をしている。原因不明の津波が立て続けに発生したことを受けて調査に出たところ発生源にいたところが発見されている。船で近づいた際、クリック音やホイッスル音で怒っていたことが最近の研究で明らかになった。当時は船で近づき調査をしていたところ船は尻尾で飛ばされ乗員10名が即死した。その調査以来、№1は姿を見せていない。


№2 山の怪獣


富士山付近の樹海の地面から突然現れた怪獣。体長45mの巨体で富士山周辺を歩き回り道路や施設に莫大な被害をもたらした。そして、体からは有毒物質が常に溢れ出ており一帯は草も生えないほど汚染された土地になった。こちらは特定の人間だけが聞こえる声を発して周辺に誘いこみ、その人間を食物として食べていた。特定の人間というのは、体内でコルチゾンを分泌しやすい血液型A型の人間だと言われている。初調査が昭和〇×年でそこから毎年初夏に活動していることが分かったので今年も初夏に対策が寝られている。


№3 大量殺人怪人


平成〇年。東京を中心に活動していたとされる怪人、一日数百人単位を殺傷しており、命からがら逃げた被害者(後に死亡が確認された)の証言による見た目と殺害方法は以下の通り。


見た目:黒いコートを纏った身長が2mいくかいかないかの細身で腕は常に脱力している。

目が合うと三日月形に口角を上げる。


殺害方法:すれ違った人間に肩をぶつけて謝らせて会釈のタイミングで首を切り落とす。


調査を開始した翌年に目撃情報が減り現在は観測がされていない。


№4 白い悪魔


怪人や怪獣あるところに白い悪魔あり。平成〇×年の後期から見るようになった怪人。190㎝ちょっとの身長で白い体色と鹿のような角が特徴的。怪獣が出現した際には小さな体で怪獣の巨体と渡り合い、そして怪獣を撃破していた。怪人には変わりないが、今のところ人間への被害は出ていないが、その圧倒的な力が特別大災害級に匹敵するためこのレベリングになった。


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白い怪人は倒れた怪獣の腹部に乗ると固めた拳を思い切り振り下ろす。怪獣はいきなりの衝撃に周囲を揺らす咆哮を上げるが白い怪人は構わずに拳を叩き入れていく。やがて怪獣の腹部に拳が食い込んでいくとついに怪獣の腹部は敗れて紫色の液体が勢いよく噴き出た。白い怪人は怪獣の血を拭うと拳を抜き、腹部でトランポリンの様に跳ねて跳躍した。高く上がった空から白い怪人は落下速度を利用して怪獣の空いた腹部へ飛び蹴りを叩き入れてとどめをさした。開いた腹部からは先ほどよりも多くの紫色の血が噴射し辺りを汚していく。怪獣はその痛みに耐えられずに絶命した。


「倒したのか……?」


氷室が動揺していると死んだ怪獣の腹を突き破って白い怪人が出てきた。隊員たちは兵器を構えて臨戦態勢に入るが、白い怪人はこちらを見ると何も言わず静かに踵を返して森の方へと生んでいってしまった。


「白い悪魔……」


氷室は逃げた方向へ視線を張り付けて白い悪魔が何者なのかを考えた。


────────────


某市伯朧はくりゅう神社の森の中にて白い悪魔と呼ばれる怪人は見事に着地した。怪人は眩い光に包まれ体を小さく変化させていった。


「ふぅ……まぁ、あんなもんか……」


六代むつしろ伊吹はため息を吐きながら頭にタオルを巻きなおして神社の階段を上がっていった。境内に入ると庭の手入れの途中で投げ出された巫女が顔を膨らませて待っているのが見えた。


「仕事を頬りだして遊んでいるとはずいぶんと偉くなったもんですね?六代さん。」


「いや~すまない…ここの森って自然豊かなんで少しテンションが上がってしまって……すみません。」


巫女はため息を吐きながら近づいてくる。そして顔の前まで来るとふくれっ面を見せつけるように口を開いた。


「私は、今怒っているんですよ?六代さん。それがわかりながらなんでそんなへらへらとした態度なんですか?六代さん。仕事がないから雇っているのに職務怠慢されては困るんですよ六代さん。」


ふくれっ面のまま淡々と言葉を並べる巫女に伊吹は困った顔で謝る。


「本当にすみません。今日はサービスするので許してください。」


「それならいいでしょう。この件は伯朧神社の巫女として見逃すことにします。」


伊吹は踵を返して戻っていく巫女を見つめた。


『随分と楽しそうじゃの~』



微笑んでいる伊吹の耳に声が入ってくる。高いような低いような女性のような男性のような声。その声に伊吹は煩わしそうに声に向かって言う。


「うるさいですよ。白龍様。」


『おいおい、うるさいとはセミが四方八方で絶え間なく耳障りに騒いでいることを言うのだぞ?ワシはただお主に楽しそうだねって語り掛けているだけじゃよ?』


「それがうるさいって言ってんですよ。耳障りなのには変わりないんで」


『けっ!ワシが助けてやったことも忘れおって……実に不愉快じゃ。寝る。』


声の主、白龍はそういって静かになった。


「さて、と作業を再開するか。」


伊吹は深呼吸すると今回のサービス分の手入れも始めた。


EMG2:白い悪魔


次回 EMG3:白龍との出会い

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