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拾/肆之巻:夏休み、開始の巻

中間テストが中止に終わり、朧たちは期末試験に向けて、意気込みを新たに夏休みに突入した。六華の夏休みは7月の最後の三日間に登校日があり、その登校日は決まってギアの制度を上げるための合宿で全校生徒を1年生は山へ2年生は海へ3年生は離島へ送り出して修行させる。こまごまと登校日を作るよりもまとめて学校で過ごしたほうが効率が良いという校長の判断だ。これは六華特有の一種のイベントに当たる。茂木クラスは関心と驚きを見せて担任の話を聞き入っていた。


「すごいな。まるで修学旅行だ。」


「そうね、でも修学旅行は修学旅行であるの。」


「そうなんだ…楽しみだな。」


「そうかしら。兄曰く、山は一番地獄の修行位置なんですってよ。」


朧はその言葉を聞いて逆にわくわくとした表情をする。そんな朧に諸星は少し引き気味の視線を送る。担任の話が終わりホームルームが終了し、皆が席を立って授業の準備を始める。朧も席を立つと諸星が呼び止める。


「ちょっと待って。」


「……どうした?」


「この修行合宿は、4人10組に班を決めて行動するの。良ければ、私と班を組まない?九頭竜くんもいれて。」


「いいなソレ!だが、あと一人はどうする?」


「私を甘く見ないことね。友達は一応いるのよ。まぁ、班を決めるまで紹介はしないけど。」


「そうか、わかった。班決めの時を楽しみに取っておく。」


二人の会話を見ていた九頭竜は何も気にすることなく授業の準備を始めて机に突っ伏した。そこからいつも通りに授業を受けて昼休み。朧は九頭竜がいるであろう屋上に菓子パンをもって上がる。九頭竜はいつも通りに屋上から見える景色を見ながら昼食をとっていた。朧は九頭竜の隣に座り菓子パンの袋を開けた。


「ホームルームあと、諸星と何を話していた?」


「……?あぁ、合宿のことを話していた。どうやら4人10組で班を決めるらしい。それに誘われたんだ。もちろん誠も一緒って。」


「班か……でも噂によれば山の修行は地獄と言って先輩たちは苦労したみたいだぜ。」


「それも聞いたな。どんな修行内容なんだろうな。」


「ん~山だからサバイバルとか?」


「それなら離島でも、海でもできそうだし、ギアは関係ないだろう。」


「それなら、キャンプとかか?」


「それもピンとこないな。」


「なんだろうな~」


二人は修行内容を想像しながら昼食を堪能した。昼食が終わると九頭竜は何を考えたのか、ギアを起動しながら立ち上がり朧を手招きする。


「なんだ?」


「いや、時間もあるし、一戦やろうや。」


朧はニコリと口角が上がりギアを起動して九頭竜の対面に立つ。


「いいだろう……これも修行の一環だな。」


二人は互いにギアを構えて予鈴が鳴るまでギアを交えた。そして六時限目が始まると茂木は諸星の言っていた通り合宿の班決めを開始した。諸星と朧と九頭竜は自然に集まりそして、諸星は言っていた友達もつれてきた。度のきつい眼鏡をかけた黒髪のおさげがうつむきながら朧たちの前に出る。


「あ、え、えっと、武田たけだ 静乃しずのといいます。改めて宜しくお願い致します。」


朧は快く握手をして静乃へ挨拶を返す。九頭竜は若干表情が固まりながらも挨拶を返す。班が決まった朧たちは担任からしおりをもらい、どのような修行の内容が載っているか嬉々としてしおりをめくる。


夏休みの修行合宿のしおり


期間 7月28,29,30日


集合時間 8:00に学校に集合


移動時間 8:30~


到着時間 12:00頃


一日目 体のエナジーの扱い方、集中力を上げる修行


二日目 ギアを扱った模擬戦修行、ギアを扱わない模擬戦修行

三日目 仕上げ、修行終了


これ以外の情報は載っていなかった。朧と諸星はやはりギアの使い方以外も学ぶのかと内心納得しながら、静かにうなずく。九頭竜と静乃は訳が分からないというような表情になっている。そして、大体のクラスメイトが班決めを終えそのままホームルームへと移行して朝のホームルームでの再確認をしてそのまま下校した。


─────────────


画面に映し出されたのは朧がギア研究会と戦っている場面だ。朧がエナジーを放出したり、朧が刀で三人へ攻撃をしていたりと朧ばかりの映像が流れている。


「ふひひ……見つけました……」


目の下のクマをピクリと痙攣させると映像を途中で止めて朧の狂気の笑顔の横顔を画像におとしこんで印刷して部屋の壁に貼り付けた。その写真以外にも朧の様々な表情の写真を貼っていた。


「やっと見つけました。朧くん。」


病的に白い肌。細い体。赤色に染めた後のある黒髪の少女。少女はさらにパソコンのキーボードを打ち込み六華の情報を集める。そして、夏休みの予定を見つけてさらに口角が上がった。


「待ってね。朧くん。」


少女は、ギアを複数持ち部屋を出た。


夏休み編、開幕


拾/肆之巻:夏休み、開始の巻

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