「頼む、広川博斗君、君だけが頼りなんだ」
部長は俺の目を真っすぐ見詰めてそう言った。
いやまじまじと見るとやっぱり、めっちゃ美人じゃないですか。
俺はちょっとドキドキしてしまった。
「はあ……わかりました」
こうなると断れないよなあ。
「本当に? よかった。君がいれば千人力だ」
「は?」
また悪い予感がした。
「君のポテンシャルは生徒会以上だ。場合によってはMO部のために君には生徒会を支配してもらうことになるかもしれないから覚悟しておいてくれ」
「はい?」
いやそんなの聞いてないし。
「あの、それはちょっと……」
「表向きはモブのまま、陰で操るなら構わないだろ?」
「はあああ!?」
俺はただ普通の目立たない高校生になりたいだけなんですけど。
だいたい陰で人を操るなんて俺の流儀に反するし。
っていうより、そんなことしたらモブどころか悪役じゃないですか。
「頼む、ヒロト」
そう言って部長は俺の手を握ってきた。
しかも……下の名前呼び捨て!
こんな美人が俺なんかに……って引っ掛からないぞ!
「おねぴー。xくん、☆(ゝω・)v」
いや最後なんて言いました? また顔文字でしょ。
それにやっぱりオレの名前呼んでくれる気なさそうだ。
でもμさんもよく見るとかなりかわいい。
ギャルの恰好しなければきっと清楚な感じで、クラスに咲く一輪の花みたいになっちゃいそうではある。
ギャルでモブってのは無茶苦茶だけど、そうするしかないってことか。
いやいや、さっき天然って言ってたぞ。もうわけがわからん。
「はあ……」
俺はため息をつくしかなかった。
「で、行きますって言っていたが」
「あ、ああ、同じ中学出身の女子が生徒会執行部に入りたいって言って、俺についてきてほしいって……」
「あ、μさっき会ったよ。超かわちかったね、(≧◇≦)」
なんか、かなりオーソドックスな顔文字来たみたいだな。
でもまあ、確かに絵美里もキュートなんだよなあ。中身知らなければ。
「はあ……」
「まあいいか。敵情視察ってことならな」
なんですかそれ? 俺、今度はスパイ?
「ただ、生徒会長のには気を付けろ。この学校創立以来の秀才だ。冷静な分析力には定評があるから、君のステータスやスキルを見抜くかもしれない」
へ? ステータスやスキルって何?
もしかしてその人、鑑定眼持ち!? ここ異世界でしたっけ?
「まあでも、君からすればあの程度の男は四天王の中でも最弱レベルでたいしたことはないだろう。一蹴してもらってもいいぞ」
それじゃあ一蹴どころか一瞬でモブどころか勇者になっちゃいますって。
「はあ……とりあえず行ってきます」
俺は力なく立ち上がった。
「力-ノ ノ ヽ" |/○(ゝω・*)o」
「おお、ついにμの頑張れが出たな。こいつあ春から縁起がいいわえ」
ああ、はいはい。歌舞伎の「」ですね。突っ込むとキリがなさそうなんで黙っていた。
予想だにしなかっためくるめく高校生活のスタートに、俺の胸は高鳴る……どころか果てしなくメンブレだよ。俺は普通に目立たず、どこにでもいる高校生として学園生活をエンジョイしたいだけなのに。はあ……。