俺は頭に浮かんでいた質問を言おうかどうか考えあぐねていたが、腹をくくって口に出した。
「あ、あの、お二人って普段のクラスではどんな感じなんですか?」
「私はモブとして同級生の女子たちと普通に接してるぞ」
バレたら財閥の力で生徒の存在を消してるとかしてないですよね。
「私はねー、ギャル友いっぱいいるよー (๑´ڡ`๑) 」
今、てへぺろの顔文字、口に出して言った?
怖いよこの人……。
「は、はあ……」
聞いた俺がバカだったか。
その時、俺のスマホが鳴った。絵美里からの電話だ。
さっき番号交換したばかりなのに、普通、いきなり掛けてくるか?
あ、普通じゃなかったか、あれは。
はいはい、俺は執事ですしね。
出ないわけにはいかない。仕方なく電話を取った。
「はい」
「あ、広川? 私、生徒会に相談に行きたいんだけど、一緒に来てくれないかな?」
「は? 生徒会!?」
「そう。私、生徒会執行部に入ろうと思ってるの。ゆくゆくは生徒会長になるつもりだし。生徒会のことなら、広川に相談した方がいいかなって思って」
しっかり呼び捨てにしてくるよ。でも何でだろう。悪い気はしないんだよなあ。
「ああ、でも俺、この学校の生徒会のことは知らないけど……」
「それは構わない。ついてきてくれるだけで心強いから」
「え?」
まあ、俺に憧れていたというのは嘘ではなさそうなので、頼られるのはまんざらでもないが、彼女についていくのはリスクしかないような気もするしなあ。
「お願い。広川……く……ん」
「え?」
絵美里が甘い声を出した。生まれてこの方、女子からそんな呼ばれ方をしたことがなかったので、ちょっとドキドキしてしまった。
「ね?」
「わ、わかった。行くよ」
もしかして計算ずく? とも思ったが、ついそう答えてしまった。
「よかった。教室で待ってる」
絵美里はそう言って電話を切った。
あれ? 命令口調にならなかったな。
「今、生徒会って言ってなかった?」
部長さんがちょっと怖い顔をしている。
「あ、はい」
「あそこはMO部の天敵だから」
「あ、まあ大抵の部はそうですよね」
「そうじゃない、MO部とガチンコで敵対しているんだ」
「はい?」
「やつらはMO部が何もしていないと言って廃部を迫ってきている」「え?」
そりゃあ確かに何もしない部はないのと同じですからね。
「何かやったらモブではなくなってしまうではないか。そう言って突っぱねてはきたのだが」
「はあ……」
まあ、それも一理ありますけど。
「今度は正式部員が二人しかいないということを突いてきてな」
「はい……」
嫌な予感がする。
「だから、君にはどうしても入ってもらわなければならないんだ」
「あ、はあ……」
ほら来たよ。