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第10話

 俺は頭に浮かんでいた質問を言おうかどうか考えあぐねていたが、腹をくくって口に出した。


「あ、あの、お二人って普段のクラスではどんな感じなんですか?」


「私はモブとして同級生の女子たちと普通に接してるぞ」

 バレたら財閥の力で生徒の存在を消してるとかしてないですよね。


「私はねー、ギャル友いっぱいいるよー (๑´ڡ`๑) 」

 今、てへぺろの顔文字、口に出して言った?

 怖いよこの人……。


「は、はあ……」

 聞いた俺がバカだったか。


 その時、俺のスマホが鳴った。絵美里からの電話だ。

 さっき番号交換したばかりなのに、普通、いきなり掛けてくるか? 

 あ、普通じゃなかったか、あれは。

 はいはい、俺は執事ですしね。


 出ないわけにはいかない。仕方なく電話を取った。

「はい」


「あ、広川? 私、生徒会に相談に行きたいんだけど、一緒に来てくれないかな?」

「は? 生徒会!?」

「そう。私、生徒会執行部に入ろうと思ってるの。ゆくゆくは生徒会長になるつもりだし。生徒会のことなら、広川に相談した方がいいかなって思って」


 しっかり呼び捨てにしてくるよ。でも何でだろう。悪い気はしないんだよなあ。


「ああ、でも俺、この学校の生徒会のことは知らないけど……」

「それは構わない。ついてきてくれるだけで心強いから」

「え?」


 まあ、俺に憧れていたというのは嘘ではなさそうなので、頼られるのはまんざらでもないが、彼女についていくのはリスクしかないような気もするしなあ。


「お願い。広川……く……ん」

「え?」

 絵美里が甘い声を出した。生まれてこの方、女子からそんな呼ばれ方をしたことがなかったので、ちょっとドキドキしてしまった。


「ね?」

「わ、わかった。行くよ」

 もしかして計算ずく? とも思ったが、ついそう答えてしまった。


「よかった。教室で待ってる」

 絵美里はそう言って電話を切った。

 あれ? 命令口調にならなかったな。


「今、生徒会って言ってなかった?」

 部長さんがちょっと怖い顔をしている。

「あ、はい」


「あそこはMO部の天敵だから」

「あ、まあ大抵の部はそうですよね」

「そうじゃない、MO部とガチンコで敵対しているんだ」

「はい?」

「やつらはMO部が何もしていないと言って廃部を迫ってきている」「え?」

 そりゃあ確かに何もしない部はないのと同じですからね。


「何かやったらモブではなくなってしまうではないか。そう言って突っぱねてはきたのだが」

「はあ……」

 まあ、それも一理ありますけど。


「今度は正式部員が二人しかいないということを突いてきてな」

「はい……」

 嫌な予感がする。


「だから、君にはどうしても入ってもらわなければならないんだ」

「あ、はあ……」

 ほら来たよ。



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