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第7話 出会い

 牧原と霧島は、三匹のペケチュウを伴って体育倉庫へ向かう。

「大沢の説明は役に立ちましたか?」

「ええ。ただ、あの説明をモンスターを作らされる前にして欲しかったよ」

「あいつ。悪い奴じゃないんだけど、偏屈だから。あれで元の姿になっても結構可愛いんだけど、性格があれだから友達も少なくてね」

 牧原は、作り笑いを浮かべる。

「とりあえず、当面モンスターを上手く作れる様に練習しないといけない訳ですよね。ただ……」

「何か心配事でも?」

「出来損ないができたら、大沢さんの様に処分できるかなぁと思ってね」

 霧島は、思わず吹き出す。

「あいつ。容赦なく殺していたもんな」

「僕も出来損ないができた時の処分用に手斧を購入しないといけないかなぁ」

 霧島は、さらに、思わず吹き出す。


 牧原と霧島が体育倉庫へ行く。そして、ボコボコに凹み、モンスターの体液で汚れた金属バットを借りる。

「失敗作のモンスターができたら、そのバットで殴ると良いよ」と、言うと霧島は笑う。

 牧原は、複雑な表情で「それも嫌だなぁ」と言った。


 牧原は、霧島と別れた後、家に帰ろうと校門まで来る。校門の外に野生のモンスターが三体いた。校門を少し開け、ペケチュウ三体を外へ出すと門を閉める。そしてペケチュウにはモンスターと戦うように命じる。

 モンスターの一体が口から矢を拭き、三体のペケチュウを次々と倒して行く。しかし、構内にいる牧原には一切攻撃してこない。

 牧原は、ペケチュウを作っては、モンスターにけしかけるが、あっさり倒されていく。それでもめげずに作り続ける。

 異変に気付き、別れたばかりの霧島がやって来る。

「牧原さん。あれ、退治していいですか?」

「どうぞ。退治しないと帰れないし」

 霧島は、校門を一人通れる程度に開き、外へ出る。牧原はめげずにペケチュウを作ってけしかけながら、霧島の後に続く。


 三体とも霧島一人で倒す。牧原は、一体を弱らせただけで、ペケチュウはあっさり全滅した。

「僕のペケチュウも僕自身も全然役に立たなかった」

「囮として役に立ちましたけどね」

「ちゃんとモンスターを弱らせていましたよ。その金属バット。役に立ちますので、使ってください」


 牧原は、霧島に送ってもらい無事自宅に帰って来れた。

 その後、家の前を通ったモンスターに自分のモンスターを戦わせたが、まったく役に立たない。とは言え、自分で作ったモンスターを自分で処分しなくて済むので気が楽だった。最後に、ペケチュウ三体を門番代わりに木戸の傍に置いておく。

「戦闘の役に立たなくても、門番代わりぐらいはできるだろう」

 この日の夜、ペケチュウは門番を継続していた。


 翌日の朝。天気は良く、異常に暑い。

 日曜日の為、牧原は遅い時間に起きる。魔法少女に変身せずに、木戸へ行くとペケチュウはいなくなっていた。

 殺されたのか、生きたまま連れ去られたのか、命令を無視して勝手にどこか行ったのか、わからない。

 モンスターの魔法少女のスキルで生み出したモンスターが、命令を無視するなんてあり得るのか?

 また学校へ行き、大沢に聞くことにする。

 牧原は魔法少女に変身し、ペケチュウを三体作り、門番をさせる。


 朝食を終えた牧原は、超感覚の魔法少女に変身し、金属バットで武装し、ペケチュウ三体を連れて見回りを始めた。感覚を研ぎ澄ますと、近所の家の中に、人の気配がするのが分かる。そして屋外には誰もいない。

 しばらく歩いていると、曲がり角の向こうから、誰かが歩いてくる気配を感じる。昨日は、十字路を曲がった先にいるモンスターが見えた。見ようと思えば見えるはずだと思い、意識を集中すると、魔法少女が見えた。

 曲がり角から魔法少女が現れる。髪は、こげ茶色のポニーテールで、スカイブルーの和装のような服を着ていた。胸元が少し開いていて、胸の谷間が少し見える。

「やったー。モンスターだ」

 現れた魔法少女は、剣を出すと斬撃を飛ばし、ペケチュウ一体を倒す。他の二体は直接剣で斬った。

「お嬢さん。大丈夫だったかい?」と、言うとポニーテールの魔法少女は近づいて来る。

「人のモンスターを勝手に殺すなよ」

 魔法少女は驚く。

「お嬢さんはモンスターの魔法少女なのかい? 申し訳ない。君の作った物とは思わなかったんだよ」

 牧原は、モンスターの魔法少女へ変身すると、新たにペケチュウを三体作る。

「へぇ。簡単にモンスター作れるもんなんだね」

「野生のモンスターでペケチュウはいないから」

「俺の名前は江波。お嬢さんの名前は?」

「僕は牧原。今は魔法少女だけど、中身は男だから」

「あちゃー。滅茶苦茶美人なのにな。残念。俺も中身は男だけどな」

 そう言うと江波は豪快に笑う。

「この三体以外に同じ奴を殺してない?」

「いや。初めてだと思うけど。そもそも、この小さいサイズのモンスターは珍しいからね」

 そんな会話をしていると、牧原の後方から、野生のモンスターが三体やって来る。

「あれは君が作った物じゃないよね」

「あんな大きなモンスターは作れません」


 新生パーティで、モンスター三体との戦いがスタートした。

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