江波は斬撃を飛ばして一体に攻撃が命中し、牧原は、ペケチュウ三体に攻撃を指示し、金属バットを構える。
江波の攻撃を受けたモンスターは、ダメージで少し動きが止まり、他のモンスターはペケチュウを攻撃し、ペケチュウ二体が倒される。
江波は、同じ個体に斬撃飛ばしで追撃し倒す。牧原は、ペケチュウ一体生み出す。残りのモンスターは残ったペケチュウと新たに生み出されたペケチュウを倒し、牧原たちの方へ迫る。
江波は迫ってきたモンスターの一体を剣で斬って倒す。牧原は、金属バットで殴ったが、ダメージを与えたが、倒せない。生き残った一体のモンスターは、牧原の金属バットの攻撃で怯む。
そして江波が最後の一体に止めを刺す。
モンスター三体、ペケチュウ四体の死体が転がっているのを見て、『一人じゃ戦えなかったな』と牧原は思った。
「ケガはないかい?」
「大丈夫。でも、僕一人だったら、危なかったよ」
江波は、ニッコリする。
「俺も君がいなかったら、三体は倒せなかったよ」
牧原は、霧島が校門でモンスター三体あっさり倒していたのを思い出す。
「俺、斬撃飛ばしの練習をしているんだが、手伝ってくれないか?」
江波は、斬撃飛ばしの練習の為、動く標的が欲しいが、調達出来ない。そこで、牧原のモンスターで練習したいと言う。
モンスターの魔法の練習には、モンスターを作っては処分する必要がある。正直自分で作り出したモンスターを自分で処分するのは抵抗があったので、手伝う事にした。少なくとも自分で処分しないで、モンスターの魔法の練習ができるからだ。
二人は、近くの公園まで行って、牧原はモンスターの魔法の練習、江波は斬撃飛ばしの練習をすることになった。
公園に到着すると、モンスターの死体がいっぱい転がっていた。
牧原と江波の二人は、モンスターの死体を一ヶ所に集める。その際、牧原は元人間のモンスターの死体の額にある、元魔法石の残骸を回収していた。
「何やっているんだ?」
「元人間のモンスターの死体から魔法石の残骸を回収しているんだよ」
死体の一体から魔法石の残骸を取ると、ゲル状になって死体が崩れる。
「うわ。くっせ~」
牧原は、持ってきていたポケットティッシュに包むと小袋にしまう。
「そんなのなんで集めるんだ?」
「変身できる程じゃないけど、ほんの少し、魔力と言うか、エネルギーのような物が残っているから、そのエネルギーを集めて何か使えないかなと思って」
「そんなことできるの?」
「現時点では、なんとも」
そう言うと、牧原は苦笑いを浮かべる。
二時間程、練習すると、江波は牧原自作のモンスターにほぼ完璧に斬撃飛ばしを当てられるようになった。
そして、牧原はサブスキル、能力付与が使えるようになった。
「それじゃあ、そのサブスキルで何かやってみてよ」
「それじゃあ、食性の設定と言うのをやってみるよ。モンスターの死体のみを食べるモンスターにできるらしいんだ」
昨日、ネットで調べた情報だ。魔法少女の事を調べても、ゲームやアニメの話ばかりだと思いきや、結構魔法石の事や、スキルの話もネットにアップされていた。ちなみに、食性の他には、行動パターンや制約などを加える事ができる。
牧原は、球体の体に、目と口だけが付いているモンスターを作る。そして、食性を設定すると半分の大きさになる。
「急に小さくなったぞ」
「サブスキルを与えると大きさが半分になるんだよ」
「へえ。面白いな」
牧原が作ったモンスターはモンスターの死体を食べ始める。
「細かい破片から食べるんだ」
そう指示すると細かい破片から食べ始めた。
「コイツにモンスターの死体を全部食べさせれば、腐らせなくて済むな」
「コイツ一体だけで、これ全部は食べ切れないよ」
牧原は、追加で同じモンスターを二体追加した。
「これでも焼け石に水かな」
牧原は苦笑する。
十分後、牧原自作のモンスター三体は、一回り大きくなり、モンスターの死体を食べなくなった。
「食べなくなったぞ」と江波が言った。
「お腹いっぱいになったんだよ」
自作モンスターたちは、牧原の後はコロコロ転がりながら付いて来る。
「どうする。この死体腐るぜ」
すでにハエがたかっていた。夏の暑さで腐敗も早そうである。
「でも、僕たちが来る前から有った死体の方が多かったとは思うけどね」
とは言え、牧原が、魔法石の残骸を取り除いて発生したゲル状の物質や江波の外れた攻撃の流れ弾が死体に当たって飛び散った破片やらで、酷い有様いなっていた。
「死体の心配をしている場合じゃなくなったよ」
牧原が、江波に公園に面した道路の状況を教える。八体のモンスターがやって来ており、明らかに二人の方へ近づいて来た。
「逃げましょう。戦うには援軍が必要だ」
二人はお互いを見ると、一緒に肯く。
二人で戦うには三体までは余裕だが、四体で互角。五体以上は無理だった。
牧原は、自作モンスターをモンスターと戦うように命じると、二人一緒に走り出す。
「あのモンスターじゃ、時間稼ぎにもならないと思うけど」
江波が言った。
「僕たちの逃げる速さに付いて来れないし、放って置いて野生化して他人に迷惑かけたら困るだろ」
「なるほど」
モンスターからの逃走が始まった。