目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第38話 ふたりで、始める

 長いキスの後、俺と陽翔は額をくっつけて、微笑みあった。ほんのり汗ばんだ肌と肌が触れ合う心地よさ。


 ――あぁ、陽翔さんは、本当に温かい人だ……。


「叶翔、愛してるよ」


 ぎゅっと優しく抱きしめて、愛を囁いてくれる。本当に好きな人と、恋人同士になれたんだ。そう思うと目が熱くなった。今まで怖くて拒絶していたことが、どれほど馬鹿げていたことか。


「俺も、陽翔さんのこと、愛してる」


「もう、さん付けやめて。陽翔って呼んでよ。恋人なんだから」


 ふふっと笑う声が耳元でじんわりと響いた。その吐息が耳に触れ、背筋がぞわりとする。


「陽翔……」


「うん?」


「呼んでみただけ」


 陽翔は朗らかにははっと笑って、チュッとキスをしてきた。その唇の柔らかさに、まだ慣れていない俺は、頬が熱くなるのを感じた。


「可愛い、叶翔……。離したくないな……」


「俺はどこも行かないよ?」


 ふふっと笑って、陽翔の背中を優しく撫でた。大きくて温かい背中。この背中に支えられたら、もう何も怖くないような気がした。


「あぁ〜、帰りたくねぇ〜」


 陽翔が空を仰ぎながら喚いていた。まるで子供のようないたずらな表情。俺は、陽翔のこう言う子供っぽいところも好きだ。一途で純粋で、まっすぐで。ステージ上の彼とのギャップが愛しい。


「明日も一緒に弁当食べるんだろ?」


「また明日も、愛情込めて作ってくるから、楽しみにしてて!」


 グッとガッツポーズをしている。全くこの人は、かっこいいんだか、かわいいんだか……。愛のこもった弁当を毎日作ってくれると思うと、胸がいっぱいになる。その姿を見て、思わず笑ってしまった。


 陽翔と二人なら、きっとこの先も大丈夫だ。もう目を逸らさない。まっすぐ彼を見つめて、彼に見つめられる関係を大切にしよう。俺たちの始まりはこんなに温かいのだから。


 俺は陽翔の胸に顔を埋めた。彼の心音が、俺の心と同じリズムを刻んでいるように感じられた。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?