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第2話 野生児教師、さっそくピンチ

 前回の女神ちゃん! 女神ガチャ(ランダム)により、野生児教師(魔獣対応特化)として異世界にぶっ飛ばされた俺の元上司の課長・詩織さん。

 ——よりによって教師志望なのにジャングルに送るってどういうことだよ。ひどくね?


 そして今、転生ガイドルームでは俺(女神)がソファから起き上がって転生者観測モニターの前を右に左に歩きまわっていた。というのも……

「なんか、胸騒ぎがするんだよな」

 いや、俺が言うのもなんだけど、元課長の詩織さん、絶対やらかす気がする。


 案の定、空間モニターに映し出されたのは、ジャングルの中にある魔法学校っぽい教室の……。

 ——えっ? (困惑)

 窓の外から這い寄る魔獣の姿だった。

「おいィィィ! 初授業から魔獣襲撃ってどういうことだよ神様ァァ!」

 神様が横でお茶をすすりながらボソリ。

「まあ、特化してるから大丈夫……なんぢゃろ……ズズッ」

「特化してたら勝てるとは限んねーだろ!!」

「じゃが世界にバグがあるとはのう……」

 は? バグ??


   ◯ 異世界の教室


 一方その頃。詩織さんは初授業に挑んでいた。

「みんな、こんにちは。今日からこのクラスを担当する——」


 ズドォォォォン!!


 窓が爆発四散。突っ込んできたのは、うっすら火を吹いてる毛玉みたいな魔獣。しかしデカイ。よく教室に入れたな。辺りを見回して獲物を物色しているのだろうか。目付きが鋭い。どう見ても可愛くないポケmn……いや、なんでもない。

「先生ぇぇぇ!?」

「モンスターだあああ!」

「チッ……」

 詩織さんはスーツ(風)のジャングル用装備を翻して、即座に前へ出た。

「下がってなさい。ここは私が——」


 ズバァァァッ!


 魔獣の爪が一閃。

 詩織さん、生徒を庇うように前に押し出し、自身はまともに攻撃を受けて吹き飛ばされた。

 ドサッ。

「先生ェェェェ!!!」

 教室、阿鼻叫喚。詩織さんの身体はピクリとも動かない。


   ◯ 転生ガイドルーム・再来


 ピコン、とルームのゲートが開いた。

「ようこそ、異世界転生の待合室へ——」

「おーい、次の転生予定者かー……って、詩織さん!?」

 そこに立っていたのは、先ほど異世界に送ったばかりの詩織さんの魂だった。身体は半透明で、ぼんやりと光っている。顔には苦悶の色が浮かんでいる。


「速すぎません? マジで死亡なんですけど……」

 詩織さん、お疲れ様でした。と、心の中だけで労った。しかしあの魔獣……。

「速いよ!! もうちょっと手加減してよ、あの世界の魔獣!!」

「いや、あの爪は反則でしょ……生徒ひとりかばったら即死よ……」

「教師どころじゃなかったわ……」

 神様がまた茶をすすりながら苦笑い。

「命を投げ出すだけが教育ではないんぢゃがな……」

「まあ、お主らしいといえばそうじゃが」

「分かってるわよ……でも、なんか懐かしかったのよ」

「誰かを守るって、結局『部下を叱るのと同じ』だなって……」

「——黒板の前に立って、子どもたちの前にいる、それだけで、なんかね」

「でも、もう無理。次、お願いします」


 詩織さんの魂は、疲労困憊といった様子で、俺に次の転生を促した。

「……次はもうちょい特化した職業にしような? 生存特化とか……」

「できれば、平和なところで、ちゃんと子どもと向き合える職業がいいわね……」

 しかし相変わらずの適応能力だなあ。転生システムってそういうものじゃないんだけど、完全に詩織さん主導じゃないか。

 俺は苦笑いしながら、職業ガチャのダイヤルに手をかけた。


 そして、再びガチャが回り、表示されたのは——


   《職業:戦闘系保育士(夜泣き対応レベルMAX)》


「山田ァァァァァ!!!!」


 ——転生ガイド女神の苦労はまだまだ終わらない。


          —— つづく ——

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