前回の転生ガイド! 闇の組織の元幹部を、よく分からんまま「異世界農家」として送り出すことに成功。疲労困憊の俺(女神姿)、ソファでぐったり中。
「……転生ガイドって、ブラックじゃね?」
女神業、一日目にしてメンタルが摩耗している俺に、第二の刺客がやってきた。
「ここ……どこ?」
その声を聞いた瞬間、俺は全身の血の気が引いた。
冷静なトーン。ピンヒールで床を打つような歩き方。目元はシャープな黒縁メガネ、スーツのようなワンピース姿の美人——
間違いない。
「…………かちょおおおん(課長)!?」
「は? ……山田?」
心臓止まるかと思った。いや、もう死んでるけど。
「え、課長……なんで……?」
「こっちのセリフよ。気がついたらこんな白い部屋にいたと思ったら、なんか知らないけどアナタがいるし……ていうか、なんで女になってるの!?」
「あ、いや、これはその……転職したというか……いや、転生して女神で……えっと、ちょっと説明させて……」
「はあ? ちゃんと要点まとめて説明しなさいよ」
「はいっ、すみません!」
——反射的に立ち上がって頭を下げていた。身体は女神なのに、心はまだ社畜。
「ていうか課長……死んだんですか?」
「……そうみたい。駅の階段でスマホ見ながら歩いてた子を庇って……バカよね」
「うわ……え、マジで……」
「そしたら目の前にアナタがいて、しかも美少女化してて、女神で、転職してて……もうワケわかんないわよ」
こっちのセリフだよ!
だが、さすが元上司。状況把握は早いらしく、俺がたどたどしくガイド業について説明するのを聞いて、あっさりと現実を受け入れた。
「なるほどね。じゃあ私は、転生先を選べるの?」
「えっと、ある程度なら……ご希望があれば」
「次こそ、本当に人の役に立つ人生を生きたい。ちゃんと、子どもたちに向き合える教師がいいな……」
……課長の、少しだけ寂しそうな横顔を見て、俺は思った。
この人、実は——不器用だっただけなのかもしれない。
生前、怒鳴られた回数数え切れないけど、俺のこと、本気で叱ってくれてたんだなって、今さらだけど、ちょっとだけ思えた。
「……わかりました。全力でサポートします、課長」
「うん、ありがとう。山田くん……って、今は女神さまかしら?」
「ああっ、はいっ、女神さまっです!」
(慣れてきてる自分が怖い)
そして、課長の転生先が決まり——
目の前に表示されたのは、でかでかと書かれた職業名。
《職業:野生児教師(魔獣対応特化)》
「……え?」
「……は?」
「ちょっ、ガチャ間違ってないこれ!? なんでジャングル!? なんで魔獣!? 教室どこ!?」
「山田ァァァァ!!!!!」
——俺の、転生ガイド生活は今日も波乱万丈である。
—— つづく ——