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エピソード2:元勇者編

第4話 王道!? 異世界転生勇者現る!

 前回の女神ちゃん! 二度目の転生ガチャの結果、願いとは裏腹に《戦闘系保育士(夜泣き対応レベルMAX)》として、再び過酷な異世界にぶっ飛ばされた詩織さん。

 ——いや、どうして毎回ピンポイントで地雷職引くんだよ詩織さんは。もはや呪い?


   ◯ 異世界・託児所の朝


 今回の舞台は、魔法王国王都にある近衛騎士団専属の王立託児所。

 可愛いチビたちとの、ほのぼの生活……なわけがない!


 ガシャアアアアアン!


 窓が粉砕した(またかよ)

「マジでこの世界、子どもまで戦闘力あるのどうなってんの……」

 俺(女神)はモニター越しに託児所の様子を見て、ガクブルしていた。今、窓ガラスを割ったの、三歳児な?

 神様は例によってお茶すすりながらポツリ。

「この世界、離乳食から魔力込めてるからのう……丈夫に育つぢゃろ」

「それチート育成じゃん!! もはや保育士という名の近衛騎士養成教員!!」


 一方その頃、詩織さんは全身フルプレート保育士装備で奮闘中。

「はい、お着替えしましょうねー」


 ピキィィィン!


「ぐわああああ!! 静電気ッ!? なんでオムツに魔素充填されてんの!?」

 子ども「キャハハハ!」

 子ども「保育士さん、またビリビリしてるー!」

「くっ……! この世界の育児、肉体がもたない……! 教師の時よりハードだわ……!」

 だが、元・戦闘系教師。詩織さんは折れない。むしろ燃える。

「よし、次はお昼寝タイムよ!」

 しかし……。

 子ども「……ネンネ、しなーい」

 子ども「おなかすいたー」

 子ども「魔物つれてきたー」 ← !?

「最後の子、サラッと恐ろしいこと言ったわね!?」

 魔物登場。保育士の本領発揮の時間だ。

「寝ないなら——寝かせるまで!!」

 必殺、子守唄レベルMAX(物理)!!


 ズガァァァァン!!(※戦闘BGM:激しめで)


   ◯ 帰還


 その夜。詩織さんはボロボロになって、彼女の自宅に戻ってきた。

 全身ススまみれ、保育士服(だったもの)がほぼ灰。

 あまりにも過酷な転生先だったのでそれを見かねた神様と女神の俺は詩織さんの家に降臨していた。


「はあ……はあ……もう、無理……三歳児が空間魔法使うの聞いてない……」

「そりゃそうだろ!! なんで未就学児でポータルゲート開けるんだよ!!」

「ぶーーーーーーーっ! ゲフンゲフン」

 神様、ついにお茶を吹いた。

 それでも詩織さんは、ボロボロの顔にふっと笑みを浮かべた。

「でもね……なんか、不思議なのよ。戦ってるはずなのに、怖くなかった。……子どもたちの中に、未来が見えた気がして」

「え……」この人何言ってるの。

「この世界、悪くないかもって……ほんの少しだけ、そう思えたの」

 俺は、胸の奥がキュッとなった。なんだよ、詩織さん……。

「もうちょっとここで頑張ってみる。怒ったり、泣いたりしながらでも。——今度こそ、誰かのために生きてみたいのよ」

 そう言って、詩織さんは託児所に戻っていった。

 背中は、あいかわらずボロボロだったけど。でも、なんか、やたら頼もしかった。


 詩織さん、無事に定住(たぶん)。


 詩織さんの二度の転生を見て、つくづく思う。

 この世界の法則は、本当に気まぐれだ。教師志望をジャングルに送り、次は戦闘系保育士。一体、誰がこんな適性診断をしているんだ? そもそも、この転生システム自体が、まだ謎だらけだ。

 神様はひょうひょうとしているし、俺もただのガイド役。

 いつか、この世界の秘密や、魂が転生する意味を知る日が来るのだろうか……。

 まあ、今は目の前の仕事を淡々とこなそう。また一波乱ありそうな予感しかしないしな!


 転生ガイド女神の俺は、新たな魂を導くべく資料を確認。

 次なる転生予定者は——


   《ワケアリ異世界転生勇者(今度で転生三回目)》


「なあ……俺、ガチャの呪いでも受けてんのか……?」


 ——勇者だし無茶もしているのだろうが…… 女神の胃に、さらなる試練が迫る。


          —— つづく ——


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