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第5話 これが、いわゆる異世界転生!

 前回の女神ちゃん! 私とは別のポンコツ女神(?)ちゃんにひどい目にあわされたと激おこの元勇者。今度こそはと私の職業ガチャ(今回はスキル)で付与されたスキルがこれまたわけが判らない。なんなの「重金属粒子ビーム」ってバカなの? 死ぬの?


 ——これは今回も大荒れ確実ですわね。


   ◯ 転生ガイドルーム


「ズズッ、はぁ〜お茶がうまいのぅ」

「ここはロクなお茶菓子がないネー。がりっ、ボリボリバリ」

 ったく神様は、相変わらずだなぁ……って、ちょっと!

「あんただれ? あ! 三つ編みに眼鏡!!」

「ヨっ! 新入りチャン! アタシが話題のカワイイかわいい三つ編み女神ちゃんヨ」

 自分でかわいいって言うな。

「さっき、あんたが二度転生させて送り出した元勇者を、うちから送り出したところよ。」

「あんた相当恨まれてるわよ?」

「エー!ちゃあんと『使える』最高のギフトを付与したハズなんだけどナー」

 まあ、わかる。あいつも勇者らしからぬ、おかしな奴だったし。

 さて気になるその勇者の様子を見てみましょうか——


   ◯ 異世界は、かくあるべき


(ナレーション)ここは剣と魔法が支配する世界――その繁栄は、実に三千年にも及ぶ。ターガ・マハラ王国。その王家一三〇代目の国王、バキ・ハーアラは、最近悩んでいた。彼には子宝にめぐまれず王女ばかりが九人もいるのだ……。これまた一癖も二癖もある、困った子ばかりで……。

 鉄壁の王都グングニルは、街の中心にそびえる高層建築の城が街を一望出来る。街の周りはぐるっと城壁で囲まれ外部の魔物や盗賊から街を守っている。また王家直属の近衛師団を中心に——


 東は青いマントを靡かせるアークウィザードの精鋭「青龍兵団」。

 南は天駆ける紅のドラグーン騎士団「朱雀騎士団」。

 西は剛腕ぞろいのタンク集団「白虎新撰組」。

 そして北は盾と魔法結界防衛の「玄武守備軍」が街を護っている。


   ◯ 勇者登場


 明け方。まだあたりは薄暗く、日の出まで時間がある頃。突然、北東の城壁にある見張りの塔が、昼間になったかと思う程の眩しく光る閃光の一撃で、轟音と共にくずれた。


「ほーら! やっぱりこうなった!! バキッ! ガリッガリガリ」

 転生者モニターで見ていた私は、センベイにイライラをぶつけながら、思わず呟いた。

「ズズッ……ほっほっほ、こうでなくちゃな! さすが勇者ぢゃ」

「アイツ、なかなか張り切ってるみたいネーボリボリボリ」

「あんたらねえ……魔王討伐に行くはずが、なんで王都を艦対戦級ビームで攻撃すんのよ!」


 一瞬の事だった。歴戦をくぐり抜けてきた精鋭揃いの、東地区担当アークウィザードの兵団長以下、何が起きているのかを、まったく把握出来ずにいた。

 そこに一人の軽装ではあるが、いかにも冒険者然とした男が倒れている。左腕に奇妙な魔道具のようなものが装着されている。赤く点滅する光も、なにか精霊のささやき、と思っているのか、学のある兵団長もよく判らないらしく首をかしげていた。


「あっ第七王女さま! 危険です!! 何が起きる判らないので不用心に近づかないでくださいッ」

 そこに一癖も二癖もある王国の第七王女登場。(女神の声:はぁ……)

「気になるのよね、その魔道具……ちょっと私の部屋まで連れてきてくれないかしら?」

「はぁ……王女様またはじまったよ、ホントどうすんのこれ」

「しっ! 兵団長! 声が出ちゃってますよ! ダメダメ」


   ◯ その王女は、見境がなく


「ん……ここは……?」

 勇者が目覚めたその場所は、第七王女の寝室だった……。

「お目覚めのようね、私、その腕に装備している魔道具に興味があってよ?」

「……これか……そういや勝手に動き出してなにか喋ったと思ったら……」

「やっぱり! 先ほどの爆裂魔法エクスプロージョンは、その魔道具の仕業なのですね!!」

「ちょっとよく見せていただけません? うふふ」

「ん? あんたよく見ると美人じゃねぇか。」

「そうですか? うふふ、あなたがその気なら私は……わかるわね?」

「話が早いのは嫌いじゃない……」すっと、距離をつめる勇者——


 ビーッビーッビーッ。


 静かな寝室に響き渡る電子音。

 しかし二人は何が起きたのか、まったく理解していない。

「装着者の危機を察知しました。未発達な文明人との過度な接触は、粘膜による感染症を引き起こし、生命にとって非常に危険な為、これを排除……ヴゥン!」

「攻撃シーケンスに移行……ピッピッピッピッ」

「あ、ほら、これ……この魔道具、さっきも訳がわからい事をブツブツ喋ったかと思ったら……」

「え? なに? え? また爆裂魔法?」


 ピシャアアアアアアアアアン。ゴォォォォ。


   ◯ そして、すべてが灰燼に帰す


(ナレーション)それはまさに一瞬の出来事であった。激しい落雷が、まとめて千も万も落ちてきたかのような衝撃と閃光。三〇〇〇年の栄華を誇った鉄壁の王都も、超古代文明が残した超兵器、重金属粒子ビームガンによる暴走により、無人の荒野に変えてしまった。草木一本残っていない。瓦礫さえもきれいに分子レベルにまで崩壊。

 ただし、兵器の補足説明には致命的な誤りがあった。

 超文明時代の正式名称は——


   《次元波動縮退重力波原子素粒子化対消滅装置(カテゴリー:最終兵器)》


   ◯ 転生ガイドルーム


「おいィィィィ」

 たまらずいつものフレーズをさけぶ私。

「ちゃんと取扱説明書は、読まんとダメぢゃぞ、ほっほっほ。ズズッ」

「ネー! でも今回は山田さんの担当だしネー。アタシ知らないネー。ポリポリポリ」

 そして、素粒子レベルにまで分解された元勇者と第七王女の魂が……っておい。


「あら? ここはどこです?」

「またここに来てしまったか。おいクソ女神! あー、お、お前!! 三つ編み眼鏡チビ女神じゃねーか!」

「おー久しぶりだネ。お前やるじゃん! あのビーム。次の転生でも持ってくか?」

「えっ? あなた達は女神様ですか? もしかして私、死んでしまったのでしょうか」

 わけがわからない超兵器の暴走に巻き込まれた、気の毒な王女様にかける言葉などみつからなかった。

「……」気を取り直し、テンプレセリフを棒読みする……

「ヨウコソ、イセカイテンセイ ノ マチアイシツ ヘ。ココハ マヨエル タマシイ ヲ……」


「ふむ、何もかも、予定調和ぢゃよ。神だけにな? ほっほっほ」


「おいィィィィ」

「おいィィィィ」

 勇者とハモってしまった。


 ——ほらね? やっぱりこうなった。もう好きにしてよ。


   次回、勇者シリーズ最終回


「なんだろうこの感じ……とても懐かしい。しかし美人だなぁ。」

「あれ? なんだろう……あたしこの人を知らないハズなのに、なぜかとても愛おしい」


「第六話:この世界の果てで、もう一度君と」あるいは

「第六話:古き誓いは風に舞い、収穫の宴で交わる」または

「第六話:それでも、また君を好きになる」そんなバカな!?

「第六話:(※だからボクは少しだけ中途半端なのです)」


          —— つづく ——


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