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第15話 由良江ちゃんはイラついているのよ

『よっす、オラメーちゃん。そしてオラが魂を間借りしている主の名前は神楽坂新悟、つい昨晩自分に自信がなかった系の黒髪美少女の烏乃ちゃんを言葉巧みに言い含め一晩同じ屋根の下に泊っただけに飽き足らずその後何が起こるか分からない旅に一緒に出ると言い出したプレイボーイである』


『突然絶妙に嘘を混ぜた紹介をしないでくれますか?』


『あっ、このプレイボーイったら女の子の部屋に勝手に入ってくるなんてどういう神経してるの?』


『僕の魂空間にはドアもチャイムもないんですから仕方ないでしょう……と言うか呼んだのメーちゃんでしょう』


『あれ?そうだったっけ?

 まぁいいや、それで旅が始まったのはいんだけどさ』


 オラは首を可愛く傾げてみた。


『いつになったらこの森から出られるの?』


『………分かりません』


 昨日新悟と烏乃の旅路は始まった……のであるがこの二人揃って方向音痴なのかそれとも今迷っている森がとてつもなく大きいのか知らないが森から脱出できる気配がないのである。


『オラは色んな人と出会ったり烏乃ちゃんと新悟が面白おかしい試練に出くわしたりするのが見たいの。こんなんじゃオラつまんなーい』


『そんなこと言われても仕方ないじゃないですか……僕も烏乃さんも冒険初心者なんですから』


 その時、外界で烏乃が新悟に話しかけてきた。新悟は瞬時に魂世界から離れ意識を外界に戻す。


「どうしましたか烏乃さん?」


「新悟様……正直言って私たちは今迷っていますよね……どうしようかと思案していたのですが一つ思い出したことがあるんですよ」


 烏乃は腰に携えていた剣を取り出した。太陽(まぁこの世界のあの恒星が太陽って名前かは知らないけど)の光を反射して漆黒に光っている。


「この刀はお爺様からいただいた妖刀、銘を『夜鳴』と言います」


「『夜鳴』ですか?」


「はい……そしてこの刀は私を導いてくれる力を持っていると仰っていました。だから頼ってみようと思います」


 妖刀ねぇ……うーん、確かにちょこっと面白いオーラを纏っているけれどそんな上等なものとは思えないなぁ。人を斬ったこともろくになさそうな呑気な剣みたい。


 そんなことを考えていると烏乃は切っ先を地面に突き刺した。そして手を離す。


 コテンッ


「分かりました、こっちです!!こっちが私たちの行くべき道です!!」


 導くとか言うから何をするのかと思ったけれど、どうやら棒を倒していく方向を教えてもらっただけのようである。何と言うか面白くないなぁ……あの刀から羽でも生えて飛んでいくとかするくらいやってくれないと………やっぱり新悟の滑稽さを引き出すには由良江ちゃんしかいないのかなぁ……


『あーあ、面白くない……あんな面白くない方法で導き出した方向に面白いものがあるとは思えないし』


 オラはこう見えても数万年生きている。だから大抵の刺激は感じてきた……つまりこの世の面白さは大体味わってきたのである……そんなつまんない神生の中で久しぶりに出会った面白そうな奴が新悟と由良江ちゃんなのだ。


『まぁちょっとの間くらい我慢できないこともないけど………やっぱり暇なもんは暇だなぁ……溜まってたゲームでもするか』


 そうして新悟と烏乃は四方山話に花を咲かせながら歩いて行った。その途中、遥か上空にそこそこの力を持ったの生物が超速度でどこかに飛んでいく気配がする……ちょっとだけ面白そうだけどオラにはあれを見物する力はない……


 あーあ、つまんなーい。


~~~~~~~~~~~~ 


一方その頃


「新悟新悟新悟新悟新悟新悟………ああもう、どこに行ったのよ……あの変な爆発をしてから姿が見えないし………」


 まさかあたしの監視から脱出するなんて……せっかくあたしが新悟とイチャラブするために創った新世界なのに…………


「パルーチェ!!!新悟はまだ見つからないの!!!??」


「はっ、目下全力で探していますがどこにも見つかりません」


「………なんで見つからないのよ………本当にどうなっているの?」


 あたしのスキルの一つ『監視』(あたしの裸を見せるから新悟のスマホも裸も全部見せてね)でこの新世界のいたるところを見ているのに………


 新悟があたしに残してくれた服と下着を抱きしめてあたしは目をつむる。


「貴方はいつもそうよね……あたしがどんなに頑張っても、誰を味方につけてもあたしの想定から外れたところを行き、自分の我を貫こうとする……分かってる、あたしはあんたのそんなところも大好きだって……でも………でも」


 ダブルベッドに目をやった。


「寂しいわよ……馬鹿………」


 その時隕石のような凄まじい力を持つの光があたしから少し離れた岩壁にぶち当たった。


「何よ、人がナーバスになってるときに………」


 面倒に思いながらあたしはふわりと浮かんでその岩壁の方に行った。


「あんたら、あたしに用があるのかしら?」


 そこには思った通り3人の魔族がいるではないか………あたしがぶっ潰してやった魔王の配下たちと似たような気配がする。


「ようやく見つけましたぞ、鬼畜聖女!!!!」


「そのあだ名嫌いなのよ……由良江様と呼んでくれないかしら?」


「黙れ!!お前が魔王様を屠ってからずっと追ってきた!!異世界にまで逃げようと我々からは逃れられないぞ!!!」


「暇な奴らねぇ……あんなブラック上司のこと忘れて田舎でパンでも売って生きていればいいのに」


「この誇り高き魔王様直下四天王である俺様たちがそんなみっともない真似できるか!!」


 はぁ………面倒………


「ま、とにかく分かったわ。あんたはこんなところまで遥々魔王の敵討ちに来たってわけね……異世界を渡るほどの力とその天晴な忠誠心に敬意を表してあたし直々に相手をしてあげる」


 でもまぁ、ある意味ちょうどいいわ。


「さ、かかってきなさいサンドバッグちゃんたち。心が折れるまで付き合ってあげるから」


 思う存分ストレス解消させてもらうわよ。


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