ということで朝食を食べた三人はまたまた神社に向かった。
「おーいキツネ、出て来いよ。また入れ替わっちゃったぞ、オレたち!」
「あれ? なんかはさまってる」
アキト(体はハルタだけど)が石の下にはさまっている紙を見つけた。ハルタ(体はナツミだけど)が引き抜いた。
「日曜完全休業」
「なんだこれ? あのキツネ、俺たちが来るのわかってたんじゃないか?」「ということは、二回目の入れ替えも間違えたんじゃないってことだよね」
アキトは冷静だ。
「どっちにしてもふざけてるだろ」
「でもさ、こうなったらやっぱり火曜日まであの神様は出てこないよ、はあ……」
アキトはため息をついた。
「それだと私たち、あした学校にこの体で行かなきゃならないんだけど」
「げっ、マジかよ。オレ、女子の制服着るの?」
「当たり前でしょ、私なんだから」
「まあ、今もスカートはいてるけど。なんか涼しくてオレは好きかも」
「はあ……ハル、ホントは変態なんじゃないの?」
「なんだよそれ。そうじゃなくてさ、あした女子の恰好で学校行ったら、バレやしないかってことだよ。オレ、男っぽくしか歩けないぜ」
「私もアキトのふりするのは荷が重いかも。でもまあ、授業はまだないから大丈夫かな」
「ボクはハルタのふり、得意かも」
「ええ? オレのまねするの?」
「ああ、やってみようか?」
「マジかよ……」
「ゴホン!……うわあ、アキトの上から目線がうざい……」
「オレってそんな感じなの? 寒い……もう言わないようにしよう」
「じゃあ私、アキトのまねするね……ボク、ハルタがもっと勉強してくれるとうれしいんだけどなあ。はは」
「ええ? ボク、そんなふうなの? 自分じゃわかんないなあ。すごくいやなやつじゃん。反省します……」
「じゃあオレ、ナツミのまねする!」
「え?」
「もう、バカハル! 死んじゃいなさいよ!」
「うわあ……私……格好悪い……」
「へっへー。オレの勝ちかな」
三人はもう一泊お泊り会をすることにして、ハルタとナツミの家を三人で回って二人の制服を回収した。アキトの家族は月曜の夜に帰ってくるけど、その時はその時だ。日曜の夜も昔話に花を咲かせた。
お風呂は……今度はハルタ(体はナツミなので)に目隠ししてナツミ(体はアキトだけど)が洗った。
ナツミは大好きなアキトの体をちょっと見ちゃったけど……やっぱり好きって気持ちは変わらなかった。
月曜の朝。
「女子の制服って言っても下がスカートなだけじゃん」
「ちょっと! 身だしなみには気を付けてよね。私の体なんだから」
「はいはい」
「ボク、制服もちっちゃいなあ」
「あ、そういうこと言うなよアキト。オレ、傷つくじゃんか」
「私なんか、こうやって制服着ると男子そのものだよ」
「そりゃそうでしょ。ボクなんだから。でもさ、三人同じクラスでよかった。とりあえず、知り合いにバレないようにフォローし合わないとね」
「うん」
「オレはさ、自信ないなあ。女子らしくするなんて無理ゲー中の無理ゲーじゃん」
「きのう私がレクしたでしょ。小学校からの仲いい子には言った通り対応してね」
「うーん、大丈夫かなあ」
「やってもらわないと困るから」
「うーん」
「もう、しょうがないなあ。ちゃんとやったらデートしてあげる」
「え? ホント? オレ、頑張るよ」
「アキトも一緒だけどね」
「ええ?」
「アキトだってハルとデートしたいでしょ?」
「え、そんな急に振られても……っていうか、それならこれまでと一緒じゃない?」
「一緒じゃないよ、デートなんだから」
「ナツミがアキトとデートしたいんだろ」
「はは、バレたか。でもさ、元に戻ったらみんなでどこか行こうよ」
「そうだね。あ、そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ」
三人はマンションを出て学校に向かった。
「私、おしとやかな方じゃないけど、絶対にガニまたで歩くのだけはやめてよね」
「はいはい。わかってるよ。女子っぽく歩けばいいんだろ」
ハルタが(体はナツミなので)手を前にかばんを持ち、肩をちょっとだけすぼめて歩幅小さめに歩き始めた。
「ちょ、ちょっと。それじゃあお嬢さまみたいじゃない。普通にして普通に」
「なんだか難しいこと言うなあ」
「ナツミはボクっぽいね」
「え? そりゃあさ、いつも見てたからね」
「あ、はは、そうだったんだ……」
アキト(体はハルタだけど)がはにかんだ。