目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第17話

 ということで朝食を食べた三人はまたまた神社に向かった。


「おーいキツネ、出て来いよ。また入れ替わっちゃったぞ、オレたち!」

「あれ? なんかはさまってる」

 アキト(体はハルタだけど)が石の下にはさまっている紙を見つけた。ハルタ(体はナツミだけど)が引き抜いた。


「日曜完全休業」


「なんだこれ? あのキツネ、俺たちが来るのわかってたんじゃないか?」「ということは、二回目の入れ替えも間違えたんじゃないってことだよね」

 アキトは冷静だ。

「どっちにしてもふざけてるだろ」

「でもさ、こうなったらやっぱり火曜日まであの神様は出てこないよ、はあ……」

 アキトはため息をついた。

「それだと私たち、あした学校にこの体で行かなきゃならないんだけど」

「げっ、マジかよ。オレ、女子の制服着るの?」

「当たり前でしょ、私なんだから」

「まあ、今もスカートはいてるけど。なんか涼しくてオレは好きかも」

「はあ……ハル、ホントは変態なんじゃないの?」

「なんだよそれ。そうじゃなくてさ、あした女子の恰好で学校行ったら、バレやしないかってことだよ。オレ、男っぽくしか歩けないぜ」

「私もアキトのふりするのは荷が重いかも。でもまあ、授業はまだないから大丈夫かな」

「ボクはハルタのふり、得意かも」

「ええ? オレのまねするの?」

「ああ、やってみようか?」

「マジかよ……」


「ゴホン!……うわあ、アキトの上から目線がうざい……」


「オレってそんな感じなの? 寒い……もう言わないようにしよう」


「じゃあ私、アキトのまねするね……ボク、ハルタがもっと勉強してくれるとうれしいんだけどなあ。はは」


「ええ? ボク、そんなふうなの? 自分じゃわかんないなあ。すごくいやなやつじゃん。反省します……」


「じゃあオレ、ナツミのまねする!」

「え?」


「もう、バカハル! 死んじゃいなさいよ!」


「うわあ……私……格好悪い……」

「へっへー。オレの勝ちかな」


 三人はもう一泊お泊り会をすることにして、ハルタとナツミの家を三人で回って二人の制服を回収した。アキトの家族は月曜の夜に帰ってくるけど、その時はその時だ。日曜の夜も昔話に花を咲かせた。

 お風呂は……今度はハルタ(体はナツミなので)に目隠ししてナツミ(体はアキトだけど)が洗った。

 ナツミは大好きなアキトの体をちょっと見ちゃったけど……やっぱり好きって気持ちは変わらなかった。


 月曜の朝。

「女子の制服って言っても下がスカートなだけじゃん」

「ちょっと! 身だしなみには気を付けてよね。私の体なんだから」

「はいはい」

「ボク、制服もちっちゃいなあ」

「あ、そういうこと言うなよアキト。オレ、傷つくじゃんか」

「私なんか、こうやって制服着ると男子そのものだよ」

「そりゃそうでしょ。ボクなんだから。でもさ、三人同じクラスでよかった。とりあえず、知り合いにバレないようにフォローし合わないとね」

「うん」

「オレはさ、自信ないなあ。女子らしくするなんて無理ゲー中の無理ゲーじゃん」

「きのう私がレクしたでしょ。小学校からの仲いい子には言った通り対応してね」

「うーん、大丈夫かなあ」

「やってもらわないと困るから」

「うーん」

「もう、しょうがないなあ。ちゃんとやったらデートしてあげる」

「え? ホント? オレ、頑張るよ」


「アキトも一緒だけどね」

「ええ?」

「アキトだってハルとデートしたいでしょ?」

「え、そんな急に振られても……っていうか、それならこれまでと一緒じゃない?」

「一緒じゃないよ、デートなんだから」

「ナツミがアキトとデートしたいんだろ」

「はは、バレたか。でもさ、元に戻ったらみんなでどこか行こうよ」

「そうだね。あ、そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ」


 三人はマンションを出て学校に向かった。

「私、おしとやかな方じゃないけど、絶対にガニまたで歩くのだけはやめてよね」

「はいはい。わかってるよ。女子っぽく歩けばいいんだろ」

 ハルタが(体はナツミなので)手を前にかばんを持ち、肩をちょっとだけすぼめて歩幅小さめに歩き始めた。

「ちょ、ちょっと。それじゃあお嬢さまみたいじゃない。普通にして普通に」

「なんだか難しいこと言うなあ」

「ナツミはボクっぽいね」

「え? そりゃあさ、いつも見てたからね」

「あ、はは、そうだったんだ……」

 アキト(体はハルタだけど)がはにかんだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?