北斗が戻ってきたのは日が暮れたあとだ。
取り分け新しい情報があるわけではなく、ミーティングではむしろセラフについての情報を提供する側だったようだ。
セラフとの戦闘経験はマーティンにもあったが、北斗にはそれに加えて希枝と千里から伝えられた知識がある。それは円卓にとっても貴重な情報だった。
肩が凝ったと苦笑する北斗に、咲梨は熱いコーヒーを入れてやった。
この季節にホットにしたのは島の夜が、やや肌寒いくらいだったからだ。こういう時、暑さも寒さも遮ってくれる地球防衛部のマントは実に役立つ。
満天に星が浮かぶ中、それぞれが思い思いにくつろいでいると、千里が花火をやりたいと言いだしたが、さすがに円卓の人々が真面目に待機している中で、ハデなことができるわけがない。
とりあえず線香花火で妥協して、皆で輪になっていたら、カーライルが打ち上げ花火を持ってきて、結局ハデな騒ぎになってしまった。
当然のようにマーティンが怒髪天で駆けつけたが、あとから現れたアーサーが許可を出し、いつの間にか円卓の人々も交えての、ちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
組織嫌いを自称していた咲梨も、さすがにこうなると心が和み、騎士や魔術師との会話に興じる。
気がつけば他の仲間達も思い思いに楽しんでいるようだった。
火惟はカーライルと意気投合して大騒ぎをし、それを希枝が呆れ顔で見ている。
北斗とマーティンは、なぜか線香花火を手に親しげに言葉を交わしているが、あるいは日本発祥のその花火についての知識を北斗が語っているのかもしれない。。
千里に至っては大胆にもアーサー相手にいつものノリでとぼけたことばかり口にしていたが、なぜか大受けのようだった。
誰もが幸せそうで、見ているだけで微笑ましい気持ちになる。
しかし、心の片隅で昏い気持ちが首をもたげるのを咲梨は感じていた。
(いったい、この中の何人が生きて帰れるのだろうか……)
できることならば、すべてを守りたい。
地球防衛部を設立するとき、誰一人仲間に犠牲者は出さないと誓った咲梨だが、理想を実現し守り抜くことが、いかに困難なことかを知らないわけではない。
(それでも、わたしが始めたことは間違っていない)
咲梨は、それだけは信じることができる。
もし地球防衛部がなければ、こうしてキーア・ハールスの計略に備えることもできず、世界は未曾有の厄災にさらされていたことだろう。
ぼんやりと考えていた咲梨は、ふと真夏と華実の姿が見えないことに気づく。
(もしや、逢い引き?)
わりと本気で、そんなことを思うが、なにしろこれだけの人数だ。見当たらなくても不思議はない。どちらにせよあの二人に心配は必要ないだろう。
決戦が厳しいものになるのは疑いの余地もないが、それだけに今は楽しもう。咲梨が気持ちを切り替えたところで、一際大きな花火が上がり、夜空を華々しく彩った。
おそらく、この夜のことは生涯忘れることはないだろう。
らしくもなく感傷的な気持ちになっていたが、今はそれも悪くはない気がした。