「それで地球防衛部か……」
長い
「確かにそれだとボランティア部はダメですね。誰も正義の味方だなんて思わない」
「そういうことです」
黒いスーツ姿の青年が穏やかな笑顔でうなずく。
女生徒は腕を組んで思い悩んだ末に大きく息を吐くと、今度は机の上で頬杖をついた。
「そういう話を聞いてしまうと、地球防衛部って名前にも重みを感じてしまいますね。これじゃあ、もう変えろなんて言えないわ」
最後は独り言のようにつぶやき、机に突っ伏した。
「分かってくれてなによりです」
目を細くして青年が告げると、ちょうどそのタイミングで予鈴が鳴り響き、下校時間が近づいたことを告げる校内放送がスピーカーから聞こえてきた。
青年が窓から外の風景を覗くと、赤く染まったグラウンドで、運動部員達が後片付けのために走り回っている。
懐かしい想いが込み上げて青年は遠くを見つめるような眼差しになった。
あの頃、青年もまたこの学園で、彼らや傍らの後輩と同じように、笑って騒いで、時には涙して、宝石よりも貴重な時間を過ごしたのだ。
彼らも、いつかは自分と同じように、この時代を懐かしく思う日が来るのだろうか。
もう一度、青年はゆっくりと部室を見回した。
初代部長と、たった二人で始めたこの部は綱渡りながらも、伝統ある部活として今に続いている。
願わくば、十年、二十年と時が過ぎても、ここに地球防衛部が存続していますように。
青年は胸の裡で祈るようにつぶやいた。