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第12話真緒気づいちゃった?

 「最近さ、なんか……こう……“気のせいかもしれないこと”ってあるじゃん?」


 昼休みの休憩室、カップスープの蓋を開けながら真緒はぽつりと口にした。向かいに座っているのは、いつも明るい同僚の佐々原。

 少し年上の女性で、お昼の時間が被るとたまに軽くおしゃべりする相手。


 「気のせい、って?」


 「たとえばだけど……誰かに見られてるような気がするとか、どこ行っても同じ人とすれ違うとか……いや、ほんと気のせいかもしれないし、言ったら失礼かもしれないけどさ。」


 スプーンでスープを混ぜながら、言葉を選ぶ。


 「なんか……この間から同じ人が、私の後ろにいることが多くて。しかもすごく“黙ってる”タイプの。こう……何も言わないのに、“ずっと見てる”っていうか……。」


 「え、それ普通に怖いじゃん! それストーカーじゃないの?」


 「いや、わかんないの、場所とか状況的に。直接話しかけられるわけでもなくて、ただ同じところにいるってだけだから……間違ってたら失礼だし、言えないじゃん。

 “あなた私のことつけてます?”とか言って違ったら、こっちがやばい人じゃん。」


 佐々原は真緒の言葉に苦笑しながらも、真面目な顔で言った。


 「……でも“気のせいじゃないかも”って思うくらいには気にしてるんでしょ? それって、もう精神的にストレスになってる証拠だよ。」


 「うーん……かも。なんか、何してても視線を感じる気がしてきて……ちょっと疲れてるのかも。」


 「……真緒さん、SNSとかで誰かとやりとりしてる?」


 「ん~SNSはやってるけどやり取りするような相手はいないかな?」


 一瞬Reonのことを想い受けベルが知人と言えるほどの交流はない。


 「そっちの界隈、変な人もいるんじゃない? 気をつけなよ、ほんと。ブロックとか、記録とか残しておいたほうがいいって」


 (え、ゲームってバレてないよね……?)


 内心でちょっと焦りながらも、真緒は笑ってごまかした。


「ありがと、まぁ、念のために気をつけとくー。」


「なんかあったら本気で相談してね。ほんとに最近、リアルとネットの境目って薄いからさ。」



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