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第17話戒視点

戒の配信部屋は、いつもよりも重い空気に包まれていた。

 画面の向こうでは、彼のアバターが静かに立っている。目立ったエフェクトも、華やかな演出もなし。


 「……こんばんは、戒です。」


 彼の声は、いつもより低く、少しだけ震えていた。


 「今日の配信は……ちょっといつもと違う。というか、これは“区切り”の配信だと思ってほしい」


 コメント欄がにわかにざわつき始める。

 その中に混じる「Maoさんのやつ、見た」「やばかったな」「戒、マジかよ」の文字。


 「うん。見たよ。Maoさんのあの配信。──“爆発”っていうの、ああいうことなんだな」


 彼は一度目を閉じて、小さく息を吐いた。


 「俺が、どれだけ無責任なことを言ってきたか、今さらだけど、あの爆発で本当にわかった。あれはもう、怒りとかじゃない。“諦めないで信じて頑張ってきた人”の叫びだった。なのに、それを俺は、何も知らずに、踏みにじったんだ。」


 彼の背後、VCで繋がっていた仲間の一人が、ぼそっと呟く。


 「……やっちまったな、俺ら」


 「……ああ。ほんとそれな。」


 「誰一人、ちゃんと止めなかった。面白いと思って、便乗して……最低だったって今ならわかる。」


 戒は、首を横に振った。


 「止めなかったのは、俺が一番悪い。言い出したのも、言葉を重ねたのも、最後まで責任を取らなかったのも俺だ。だから俺は、自分でちゃんとけじめをつけないといけないって思ってる。」


 一拍の沈黙。


 「この配信を最後に、しばらく休むことに決めました。配信も、SNSも、全部止める。……俺がまた何かを話すのは、ちゃんと、Maoさんに直接謝れたとき。それまで、俺に“発信する資格”なんてないと思うから。」


 コメント欄には賛否が飛び交う。


 「逃げるのか?」

 「いや、向き合うってことだろ」

 「今さら反省しても遅い」

 「でも何もしないよりマシだ」

 「Maoくんに届くといいな」


 その全てを、戒はしっかりと目に焼き付けるように見つめた。


 「……信じてくれとも待っててほしいなんて言わない。でも、俺はちゃんと償いたい。許されなくても、せめて、目を見て“ごめん”って言いたいんだ。それだけは、本気で思ってる。」


 最後に深く頭を下げて、静かに言う。


 「……ここまで、見てくれてありがとう。また、胸を張って戻れる日が来たら──そのときは、ちゃんと話をしよう。」


  画面が暗転する。

 「配信終了しました」の文字が、静かに浮かび上がった。



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