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第28話真緒、配信の真相を語る

 「はいはーい!今日も『Maoのフルオ生活』、はじめるよ~!」


 ぱちぱちぱちと、自分で拍手エフェクトを鳴らしながら、Maoが元気に挨拶をする。画面の中、キツネ獣人のアバターがふわふわの尻尾を大きく揺らしていた。


 今日の配信テーマは、話題沸騰中の『家畜・ペット機能』春霞の洞窟で素材を集めながら、日々コツコツ練度を上げ続けたMaoが、ついに解説に乗り出すということで、配信開始早々から視聴者が続々と集まってきた。


 コメント欄はすでに大盛り上がりだ。


 『ペット機能解放されたのに、使い方わかんない!』

 『捕まえたのに飼えないんだけど!?』

 『職人さまァァ!救ってください!!』


 「わーわー!ちょっと待ってね、順番に説明するから~!」


 Maoは笑いながら、まずは自分のキャラのクラフトメニューを開いた。ぴょんと跳ねる耳。揺れる尻尾。楽しげな雰囲気に、リスナーたちのコメントも緩んでいく。


 「えっとね、まず……。」


 Maoは指を立てて、しっかりとした声で説明を始めた。


 「ペットを捕獲できるようになる条件は、どの職業でも、最初に作れるシリーズの上位互換シリーズの練度をSSランクまで上げること!」


 『SS!?』

 『レベル99ってこと!?』

 『ひぇぇぇ!』


 「そうなの。つまり、練度カンスト必須~!」


 アバターの尻尾をぶんぶん振りながら、Maoが続ける。


 「そして、捕まえたモンスターを飼うには、レア度に合わせた飼育施設がないとダメなんだよね~。」


 画面には、Maoが愛用しているクラフトテーブルが映り、実際に制作できるリストが開かれる。


 リスナーが息を呑む中、Maoは「木製ペット小屋」のレシピを選択して、詳細を映し出した。


『え、うちのメニューにこんなのないけど!?』

『木工師だけど出てない……』

『詐欺か!?w』


「違う違う!ちょっと待って、ちゃんと説明するからっ!」


 あたふたと手を振るMao。


 「この木製ペット小屋のレシピはね──屋外装飾制作とツール制作の練度を両方SSにしないと出ないの!」


 『そんな条件聞いてない!』

 『生産職、想像以上にガチすぎた』

 『ドM職人の世界へようこそwww』


 「でも、やりきれば絶対できるから! ……まぁ、ちょっと根気はいるけどね。木工以外の人は購入しかないけど……。」


 Maoは苦笑しながら、過去の自分を思い出していた。

ラフレア草原でもふもふの彩陽ヒツジを追いかけて、風詠樹を延々採り続けたあの日々。


 あの苦労が、今こうして誰かの役に立てるなんて。


 思わず、胸が温かくなった。


 「施設系アイテムは店売りされないから完全自作!もしくはクラフターからの購入になるね。でもたぶん人から買い取っても自分がいくつのレシピをカンストしてるかで成功率や使用解禁とかが変わると思うからみんな、クラフト生活頑張ろうね!」


 元気よくガッツポーズをするMao。その後ろで、尻尾がぴょこぴょこ跳ねる。


 『はい!Mao先輩!!』

 『神様仏様Mao様!』

 『地獄の練度マラソン、これで乗り越えられそうw』


「ちょっとみんな褒めすぎ! 地味プレイヤーですってば!」


 笑いながら、Maoはクラフト作業を再開した。木材を選び、ペット小屋を作成する過程をライブで見せながら、細かいテクニックも解説していく。


 「ここで注意したいのが、耐久値管理ね。途中で削れすぎると完成品の品質に影響出ちゃうから、定期的に補修を入れて──」


 と、丁寧に説明していると──


 『ねぇねぇ、Maoちゃん!なんで配信始めたの!?』

 『すっごく嬉しいけど気になる!』

 『スパチャ代わりに教えて~!』


 ぱらぱらと質問が飛んできた。しかも、スパチャ(投げ銭)もちらほら飛び交っている。


 「うわ、ありがとう~!ゲーミングチェア代にするねっ!」


 冗談ぽくお礼を言ってから、Maoはちょっと真面目な顔になった。


 「えっとね……たぶん、これからギルド機能が実装されると思うんだよね。単純にどのファンタジーゲームでもあるから実装不可避な機能だと予測してる。」


 リスナーたちが一斉にざわついた。


 『マジか!?』

 『ギルドくるの!?』

 『職人ギルド作る??』


 「たぶんね!フィールド拡張もそうなんだけど、メンテで自動的に解禁されるんじゃなくて、プレイヤーが何らかの条件満たさないと解放されないんじゃないかなって思うからいろんなパターン考えて練度上げもしてるんだけど、それで──」


 ふわりと笑いながら、Maoは続ける。


 「私みたいに、素材集めたり、レシピ探したり、コツコツするのが好きな人たちと、ギルド組めたら楽しいな~って思ったんだ。」


 コメント欄が爆発した。


 『それ最高すぎ!!』

 『入りたい!!』

 『職人の楽園作ろうぜぇぇ!』


 「ふふ、ありがとう~。でもね、もしギルドできても、組んでくれる人いるかなってちょっと不安で……。だから、配信で同じ趣味の人に出会えたらいいなって!」


 そんな素直な気持ちを吐露したMaoに、リスナーたちが次々に応えた。


 『一生ついていきます!』

 『ボッチなんかじゃないぞ!!』

 『Maoさんマジで神』


 そして、なぜかまた現れるおなじみのドMリスナーたち。


 『あの熱い指導、もっと叱ってください!!!』

 『クラフト失敗したら罵ってほしい!』


 「だから、叱りませんってば~!」


 Maoは頬を膨らませ、拗ねたポーズを取った。

その仕草すら「かわいい!」と絶賛され、さらにコメント欄が賑わう。


 クラフト画面の中では、完成した新レシピのアイテムがキラリと輝いた。その瞬間も、みんなが一緒に喜んでくれる。


 『完成おめでとう!!』

 『職人魂バンザイ!!』

 『Mao最高~~!』


 画面の向こう側に、こんなにたくさんの"仲間"がいる。

そう思うと、胸がじんわり熱くなる。


 「──みんな、本当にありがとう!」


 今日もまた、楽しくて温かい配信になった。


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