最近置かれたばかりの新しい自販機にはアイスクリームが並んでいる。
この間、女子がグループで買っているのを見て気になっていた。
2コインで買えるアイスは沢山の種類がある。
『へえ、凄いねえ。知らなかった。』
タカヤはそう言うと、ラズベリーのボタンを押す。
『どれにする?』
そう聞かれて、マユミはラムレーズンのボタンを押した。
『いい趣味。』
二人でベンチに座ってアイスクリームを食べる。
丁度陽が落ちて優しい色合いが空に広がっている。
『こんなことするのは初めてだ。』
タカヤはアイスを食べながら笑う。
『僕もです。やっぱり楽しいなあ・・・。』
『そっか。マユミ君の初めてを俺が貰ってよかったのかな?友達とか、恋人とかそういう人のほうが良かったんじゃない?』
『そんなことはないですよ。僕は先生とも一緒に来られて良かったし。恋人はわかんないけど、友達と先生は違うから。なんていうか・・・特別な感じ?』
『そっか。なら良かった。』
カシュっと音を鳴らしてラムレーズンの下のコーンにかぶりつく。
『あ、美味しい。先生これメッチャ美味しい。』
『まじで?』
二人してアイスクリームのコーンを
『まじだ。サクサクだな。』
『うん・・けど、よく考えたら家に帰ったら夕飯食べるんだった・・・。』
『あー、そうだよね。マユミ君はお母さんと二人暮らしだっけ?』
『はい。多分用意してくれてると思います。先生は一人暮らし?』
タカヤはうんと頷く。
『そうだよ。一人で全部用意する。炊事洗濯全部だ。大変だよ、だからこそお母さんには感謝しないとね。』
『はい。・・・大変そうだなって思うから、少しは手伝ったりするんですけど、なんか邪魔になっちゃったりして・・・、いまだにご飯は作れないし。』
『ふうん・・・簡単なレシピならあるよ?』
手の中のアイスクリームを食べ終わるとタカヤは手をパンパンと叩いた。
『簡単って・・・僕でも出来たりしますか?』
最後のひとかけらを口に放り込み両手を擦った。
『そりゃ簡単。今度機会があれば教えるよ、作り方。』
『是非。』
マユミが笑うとタカヤの手が伸びて頬に触れた。
指先でそっと
『ついてた。ん?』
至近距離で彼を見てマユミは顔を背けると俯いた。
『どうしたの?』
『いえ、大丈夫です。』
『さて、帰ろうか。マユミ君の家はここから一本道だよね。じゃあ、気をつけて。』
タカヤは礼を言うと行ってしまった。
マユミは彼を見送ってから、胸の辺りを押さえるとぎゅっと瞼を閉じる。
心臓・・・落ち着いてよ。
僕だってびっくりした。