『それでどこ行くんですか?』
先ほどまでいたスーパーマーケットを振り返ってマユミが笑う。
『俺の家。この間行ってたでしょ?レシピの話。』
自転車の篭には食材の入った袋が入っている。
なんでスーパーとは思ったが、まさかの返答にマユミは驚いていた。
『・・・それはお邪魔じゃないですか?それに・・・あの。』
『ああ・・・そっか。マユミ君は悪くないわけ。実は行こうとしてた店が休みだったんだよ。それで
とタカヤが頭を掻く。
『いいえ・・・。』
と言っても、実際は頭がこんがらがっていた。
先生の家?
行っていいんだろうか?
それに問題にならないだろうか?
不安が見えたのかタカヤは苦笑した。
『そんな気にしなくても大丈夫。何もしないから。というか料理の手伝いはしてもらうけどね。』
ほどなくしてタカヤのマンションについた。
綺麗な色の外壁で彼の部屋は三階にあった。
自転車を駐輪場に停めて、エレベーターに乗り込む。
箱がたどり着くと、廊下の一番端が彼の部屋だ。
『どうぞ、入って。』
鍵を開けてドアを開くと、中は奥まで続いていて明るい陽が射している。
モノトーンのインテリアに観葉植物が置いてある。
ベットルームは別にあって、リビングは広々としていた。
『わあ、綺麗ですね。』
『ありがとう。その辺に鞄置いて、さあ、料理するよ。』
袋を片手にキッチンへと入っていくタカヤの背中を見て、マユミは『はい。』と返事をすると彼の後を追った。
『マユミ君、これ切って。』
エプロンをかけて二人で並んで調理が始まる。
タカヤは焜炉に鍋を置く。
手際の良いタカヤにマユミは声を上げた。
『先生、すごいね。』
『そうか?ほら、手を動かして。それ切ったら鍋にいれて。俺はこっちで付け合せを作るから。』
シンクに幾つか野菜を放り込むと、ボウルで水洗いする。
『簡単だから覚えて。包丁の使い方も上手だから、すぐに出来るようになる。』
『・・・そうですか?』
『うん、ご飯は炊けてるから、後は作るだけ。ほら頑張って。』
『はい。』
二人で作った料理が出来上がるとリビングに運ばれる。
テーブルの上には、カレーライスとサラダ、スープが並んでいる。
『はい、お疲れ様。』
マユミの前に冷たいグラスが置かれた。
氷の上でシュワシュワ炭酸がはじけている。
『ありがとうございます。』
『いや、礼を言うのはこっち。長い間待ってくれてただろ?マユミ君、ごめんね、ありがとう。』
『え?』
『自転車置き場から校門を出るのを上から見てたから。』
ああ、とマユミは俯くと苦笑した。
『嘘ついたわけじゃないです・・・。』
『知ってるよ、マユミ君は優しいね。』