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第12話 ふたりで

『それでどこ行くんですか?』

先ほどまでいたスーパーマーケットを振り返ってマユミが笑う。

『俺の家。この間行ってたでしょ?レシピの話。』

自転車の篭には食材の入った袋が入っている。

なんでスーパーとは思ったが、まさかの返答にマユミは驚いていた。


『・・・それはお邪魔じゃないですか?それに・・・あの。』

『ああ・・・そっか。マユミ君は悪くないわけ。実は行こうとしてた店が休みだったんだよ。それで急遽きゅうきょ。ごめんね、勝手に決めちゃって。』

とタカヤが頭を掻く。

『いいえ・・・。』

と言っても、実際は頭がこんがらがっていた。

先生の家?

行っていいんだろうか?

それに問題にならないだろうか?


不安が見えたのかタカヤは苦笑した。

『そんな気にしなくても大丈夫。何もしないから。というか料理の手伝いはしてもらうけどね。』

ほどなくしてタカヤのマンションについた。

綺麗な色の外壁で彼の部屋は三階にあった。

自転車を駐輪場に停めて、エレベーターに乗り込む。

箱がたどり着くと、廊下の一番端が彼の部屋だ。


『どうぞ、入って。』

鍵を開けてドアを開くと、中は奥まで続いていて明るい陽が射している。

モノトーンのインテリアに観葉植物が置いてある。

ベットルームは別にあって、リビングは広々としていた。

『わあ、綺麗ですね。』

『ありがとう。その辺に鞄置いて、さあ、料理するよ。』


袋を片手にキッチンへと入っていくタカヤの背中を見て、マユミは『はい。』と返事をすると彼の後を追った。

『マユミ君、これ切って。』

エプロンをかけて二人で並んで調理が始まる。

タカヤは焜炉に鍋を置く。

手際の良いタカヤにマユミは声を上げた。


『先生、すごいね。』

『そうか?ほら、手を動かして。それ切ったら鍋にいれて。俺はこっちで付け合せを作るから。』

シンクに幾つか野菜を放り込むと、ボウルで水洗いする。

『簡単だから覚えて。包丁の使い方も上手だから、すぐに出来るようになる。』

『・・・そうですか?』

『うん、ご飯は炊けてるから、後は作るだけ。ほら頑張って。』

『はい。』


二人で作った料理が出来上がるとリビングに運ばれる。

テーブルの上には、カレーライスとサラダ、スープが並んでいる。

『はい、お疲れ様。』

マユミの前に冷たいグラスが置かれた。

氷の上でシュワシュワ炭酸がはじけている。

『ありがとうございます。』

『いや、礼を言うのはこっち。長い間待ってくれてただろ?マユミ君、ごめんね、ありがとう。』


『え?』

『自転車置き場から校門を出るのを上から見てたから。』

ああ、とマユミは俯くと苦笑した。

『嘘ついたわけじゃないです・・・。』

『知ってるよ、マユミ君は優しいね。』

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