ショッピングモールから少し離れた場所に、タカヤの家はあった。
二階建ての一軒家で外には
『この家はね、祖母の家なんだ。もう死んでしまったけどね。』
タカヤはそう言ってマユミを招き入れる。
玄関で靴を脱ぐと、上がり
居間は部屋の中央に大きなテーブルと座椅子が置かれていた。
『ここで待ってて、何か飲み物を持ってくる。』
マユミは泣きつかれて喉がカラカラだった。
小さく頷いて居間のテーブルの傍に座ると周りを見渡す。
綺麗に掃除されているが一人では不安を感じる広さだ。
とりあえず鞄を下ろして眼鏡を外した。
ウィッグも取ってしまいたかったけど、なんとなく取れずに俯いた。
さっきの質問にはまだ答えをもらっていなかった。
どうして何も言わずに・・・それだけでも知りたいと思うけど、知りたくない気持ちもある。
『マユミ君、どうぞ。』
タカヤはグラスを手渡した。
氷が入ってその上で炭酸がはじけている。
『ありがとうございます。』
『マユミ君、それウィッグだよね?この間と違う。』
『うん・・・マユってばれると色々あるから・・・。』
『ああ、取ってくれる?』
目の前に座ったタカヤに頷いてマユミはウィッグを外した。
ネットも外すと柔らかい髪がぐちゃぐちゃだったのか、タカヤは手を伸ばして髪を整える。
『うん、こっちのがらしい。』
『なんか・・・恥ずかしい。』
『さっきの話の続き、しようか?』
テーブルに置いたタカヤのグラスを彼は一口飲む。
『ここは祖母の家だって言ったよね。あの日、俺はここに帰ってきた。教師になるっていうのはその通りだったんだ。実際それに向かって動いていたからね。祖母はね、結構名のある人でさ。一つ孤児院を経営してたんだ。そこにいたのがカナエ。頭の良い子だったけど、家庭環境が最悪で孤児院にいたんだよ。で、祖母に言われて彼の勉強を見ることになった。所謂家庭教師みたいなやつね。けどなんだかんだやってるうちに祖母が死んでしまったんだよ。で、教師の道は
『・・・大変だったんですね。』
『まあね、俺としては教師になってマユミ君とちゃんと向き合って、そんなことを考えてたから、いきなり足をすくわれた気分だったよ。』
マユミが俯くとタカヤはその顎を指で持ち上げた。
『ちゃんとこっち向いて。顔が見ていたい・・・本当に我慢ばっかりで・・・君にも会えない、きっと嘘をついたことになってる、そんな罪悪感がいっぱいだったよ。それでも君のことは色んな伝手で聞いていた。ちゃんと卒業して大学に行った事、モデルになった事、でもこの街に住んでるってのは微妙だった・・・。』
『微妙?』
『どっちみち会いにもいけない。・・・どんな顔して会えばいいのかわからなかったよ。それに君はもう忘れてしまってる、そんな気もしていたし。』
『・・・そんなことは。』
『うん。だから嬉しかった。あの日、カナエが本屋に行きたいと言って、あの子が君を見つけなければ会えなかった。でもあの子が君に告白するなんて考えもしなかったけどね。』
ああ、とマユミが苦笑するとタカヤはマユミを睨みつける。
『笑いごとじゃない。本当に油断もすきもない。』
『・・・でも先生、車の中でカナエ君はまだ未成年だって言ってましたよ。』
『そう、だから問題。マユミ君と年が近いのはカナエだ。あっちのが有利だからな。』
タカヤは