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第25話 起き出した恋

振り子時計が夜を告げている。

畳にぐったりと寝転んでいるマユミは、すぐ傍で座っているタカヤを見る。煙草をくゆらせて視線を落とすと微笑を浮かべた。

『マユミ君、大丈夫?』

『はい。』

ゆっくりと体を起こして服を調える。

まだ心臓がドキドキしていた。

『ごめんね、今日はここまで。』

そう、途中で終わりにされてマユミはうずく欲求を抑えながら頷いた。

『いいえ・・。』

そうつくろってみても、やっぱり体は正直で反応しているのか背中を丸めた。


タカヤは膝を立てると頬杖をつく。

『・・・君のせいじゃないよ?』

そう言われて答えを探すも見つからず、マユミはタカヤを見つめる。

確かに二人の間には、そうするべきムードがあった。

けれどそれを途中で切ったのはタカヤだ。

『君のせいじゃない・・・ただ、今は準備ができてない。俺は君を傷つけたくはないし・・・ちゃんとしてあげたい。この意味わかる?』

長く煙を吐いてタカヤは笑った。


準備・・・マユミは頭の中をめぐらせたが、うんと首を捻る。

それを見てまたタカヤは笑う。

『女の子はいらないから。大体はね。けど違うでしょ?』

『・・・!』

言葉の意味に気付いてマユミは俯いた。

顔が熱く火照っていく。

そうだ、確かにそうだ。

女の子は準備するのは一つでよかった。

けどどう考えたって難しいんだから・・・。

片手で口元を抑えると、それを見たタカヤはマユミの髪を撫でた。


『やっぱり賢いね。マユミ君。次までには準備しておく・・・だから君も心の準備をしておいて。もうあの時みたいに無理矢理なんてしないし、お互い大人でしょ?』

『はい。』

気遣いはとても嬉しい・・・でもとマユミは顔をあげた。

『先生、お手洗いお借りしてもいいですか?』

『うん、部屋を出て廊下の突き当たり。』

立ち上がり一歩踏み出したところで、タカヤがマユミの手を握った。


『・・・してあげようか?』

『え?』

マユミの緊張がピークに達して頭に血が上った。

『ば、バカ!』

タカヤの手を振りほどいて部屋を出るとトイレに駆け込んだ。

その場に残されたタカヤは噴出すと声を殺して笑う。

けれどその笑い声はトイレまで聞こえていた。

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