振り子時計が夜を告げている。
畳にぐったりと寝転んでいるマユミは、すぐ傍で座っているタカヤを見る。煙草を
『マユミ君、大丈夫?』
『はい。』
ゆっくりと体を起こして服を調える。
まだ心臓がドキドキしていた。
『ごめんね、今日はここまで。』
そう、途中で終わりにされてマユミはうずく欲求を抑えながら頷いた。
『いいえ・・。』
そう
タカヤは膝を立てると頬杖をつく。
『・・・君のせいじゃないよ?』
そう言われて答えを探すも見つからず、マユミはタカヤを見つめる。
確かに二人の間には、そうするべきムードがあった。
けれどそれを途中で切ったのはタカヤだ。
『君のせいじゃない・・・ただ、今は準備ができてない。俺は君を傷つけたくはないし・・・ちゃんとしてあげたい。この意味わかる?』
長く煙を吐いてタカヤは笑った。
準備・・・マユミは頭の中をめぐらせたが、うんと首を捻る。
それを見てまたタカヤは笑う。
『女の子はいらないから。大体はね。けど違うでしょ?』
『・・・!』
言葉の意味に気付いてマユミは俯いた。
顔が熱く火照っていく。
そうだ、確かにそうだ。
女の子は準備するのは一つでよかった。
けどどう考えたって難しいんだから・・・。
片手で口元を抑えると、それを見たタカヤはマユミの髪を撫でた。
『やっぱり賢いね。マユミ君。次までには準備しておく・・・だから君も心の準備をしておいて。もうあの時みたいに無理矢理なんてしないし、お互い大人でしょ?』
『はい。』
気遣いはとても嬉しい・・・でもとマユミは顔をあげた。
『先生、お手洗いお借りしてもいいですか?』
『うん、部屋を出て廊下の突き当たり。』
立ち上がり一歩踏み出したところで、タカヤがマユミの手を握った。
『・・・してあげようか?』
『え?』
マユミの緊張がピークに達して頭に血が上った。
『ば、バカ!』
タカヤの手を振りほどいて部屋を出るとトイレに駆け込んだ。
その場に残されたタカヤは噴出すと声を殺して笑う。
けれどその笑い声はトイレまで聞こえていた。