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第26話 数式の秘密

真夜中、静かに車が住宅街に止まる。

助手席から降りるとマユミは運転席のタカヤに軽く会釈した。

『先生、ありがとうございます。』

『いや、こんなに遅くまでごめんね。おやすみ。』

『おやすみなさい。』

軽く手を上げて去ってゆく車を見送ると、マユミは家に入る。

足音を響かせないように静かに移動すると部屋に入った。

とんでもない一日だった。

まさかタカヤに会えるなんて思いもしなかったし、また気持ちが通じるなんて・・・。

ベットに横たわり息を吐く。

目を閉じるとまだ感覚を思い出せる気がしたが、ぷるぷると頭を振った。


『だめ、ほんとだめ。』

体を起こして指で唇に触れた。

・・・すごく・・・気持ちよかった。

やっぱり相性が良いのだと思う。

女の子とキスをしても確かに柔らかいし気持ちは良い。

でも胸に火をつけるものはなかった。

どうしたってタカヤと比べてしまっていた。

マユミは長い溜息をつく。

今まで付き合ってきた女の子たちが悪いわけじゃない。

どう考えたってマユミが悪い。

ベットから足を下ろすと疲れた足取りで風呂へ向かった。



学校が終わり、クラスメイトのシバタとファストフードに入る。

注文し終えて席に着くと、やっぱり当たり前のように女の子の視線は飛んでくる。

シバタはにやりと笑うとポテトをかじった。

『やっぱり女どもは俺の魅力に気付いてる。』

『バカ。』

額に手を当ててマユミが笑うとシバタは残念そうにした。シバタという男は初めからそうで、マユミがモデルだと知ってからも何も変わらない。

こうして笑わせてくれる友人だ。

傍にいて安心できる一人でもある。


『そういやさ、カナエって知ってる?』

バーガーの包みを開けてシバタは齧り付く。

『カナエ?』

聞いたことのある名前だがとマユミは首を横に振る。

『なんかさ、くっそ難しい数式を解いたとかなんとかで・・・海外のほうで人気が出て、スカウトが来てるとかなんとか。』

『なに?そのなんとかなんとか・・・情報しっかりしてないじゃん。』

シバタはストローを口に含むと真面目な顔をした。

『いや、それがさ。もう情報が多すぎんの。なんかその子すごいんだよ、色々と。んですっげえ綺麗な顔してんの。俺びっくりしたよ。』

『へえ・・・シバタ好みの女の子?いいじゃん。』


『よかねえよ、男の子。』

『男の子?』

シバタは電子パットを取り出すと、モニターに映して見せた。

SNSの記事で写真は見覚えのある金髪の青年が映っている。

『え?』

見出しの派手さにも驚いたが、あの告白をしてきたカナエで間違いなかった。

『なんか孤児らしくて、海外のセレブがスポンサーに名乗りを上げてるうんぬん書いてある。本人はなんか断ってるらしいとかなんとか。』

『だから、そのなんとかはなんとかならんわけ?』

シバタは笑うと両手を挙げた。

『なんねえよ。』

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