二階建ての一軒家の門を開いて、カナエはドアの鍵を開ける。
靴を脱いでリビングへ向かうと、タカヤはそこに寝転んでいた。
カナエに視線を向けて、むくりと起き上がる。
『おかえり。』
『ただいま。』
カナエは入り口で立ち止まりタカヤを見下ろした。
『・・・髪切ったのか?』
ああ、とカナエは片手で頭を撫でる。
『似合うでしょ?』
『えらく路線変更したんだな。昨日は何処に?また誰かと?』
煙草に火をつけて煙を吐き出すとタカヤは口元を歪ませる。
『マユと。』
ぐらぐらし始めた胸の中を抑えて、カナエは冷たく言い放つ。
マユと聞いてタカヤの目が大きく見開いた。
『え?』
『だから、マユと。』
『お前・・・何を・・・。』
煙草を持つタカヤの手が震えている。
『聞こえなかったの?マユと一緒。』
この人こんな顔するんだ・・・カナエは鼻で笑う。
『昨日、マユと偶然会った。俺が帰りたくないって言ったら泊めてくれた。』
『・・・は・・・。』
言葉にならないようで、タカヤの顔がみるみるうちに青くなっていった。
カナエはタカヤの前にしゃがみこむ。
『どうしたの?先生。真っ青だよ?ねえ・・・俺が誰か他の奴と寝るのが気に入らないくせに、マユって名前出しただけで何慌ててんの?』
タカヤの目が一瞬カナエを捉えたが、すぐに逸らされた。煙草を
『マユ、可愛かったよ。酔っ払ってさ・・・俺が触っても何も怒んない。すごい優しくて・・・俺、一緒にベットで寝て。本当に触っても可愛い顔して・・・。』
半分本当で半分嘘。
散々文句言うくせに、カナエを心配するフリして抱くくせに、マユとなるとこのざま。
マユが好きなくせにカナエには素直に言わない。
雑誌でマユを見せた時の顔をよく覚えてる。
とんでもなく格好良いモデルの載った雑誌を捲るタカヤは完璧に恋をしてた。
カナエと出会って、カナエのパパ活を嫌がり、抱かれたいなら抱いてやる、なんて言ってそういう関係になった。
・・・そうなら良いと思ったのに。
『タカヤ先生・・・。』
カナエは畳に手をついてタカヤを押し倒した。
簡単に倒れて彼の指で煙草の煙が上がっている。
『カナエ・・・マユが好きなのか?』
問う瞳が揺れている。
やけに苛立ってカナエはその唇を塞いだ。
激しく唇を犯して、舌を解いた後に首筋に噛み付いた。
『好きだよ。・・・先生よりも。』
実際嘘じゃない。
マユと一日を過ごして分かったのは、彼はカナエの心を癒してくれる人だ。
優しく包んでくれる人。
今こうして組み敷いている男は、決して
カナエはシャツを脱ぐとタカヤの目を覗きこんだ。
『どうすんの?しないの?俺にマユの匂いついてるかもよ?』
売り言葉に買い言葉。
カチンと来たのかタカヤはカナエの腕を引いて自分の下に組み敷いた。
『力で俺に勝てるわけないだろ?』
指に持った煙草を灰皿で消して、タカヤはカナエの髪に触れた。
『長くても可愛かったのに・・・まあ、いい。お前はどんなでも可愛い。』
カナエの右手を掴んで押さえつけると、強引に唇を奪った。
『お前が悪い。』