『ちょっと・・・待って。』
ベットの隅に逃れるように手を伸ばすカナエを捕まえて、タカヤは彼をベットに沈めた。もう長い時間こうして愛を貪っている。
愛したい、愛されたい、そう願っているのは自分なのだとタカヤは気付いていた。腕の中にいるこの少年が愛を願うようにタカヤも願っている。
手の平に指を這わせて、指の間に指を滑り込ませるとぎゅっと握った。快感に反応する体と連動してぴくりぴくりと動いている。
唇から熱が漏れるたびにまた同じことを繰り返し。
ベットの軋む音がやたらと大きくて、タカヤはカナエの声を探す。
指で、舌で、感じるところなんて全て知っている。だからこそカナエの声を聞きたかった。
『先生・・・ま・・・。』
カナエの声が少し枯れて、泣き出しそうだった。
『いいよ。』
タカヤの声にカナエが大きく反応する。ぐったりと倒れこむと息を吐いた。
『少しだけ・・・待って。』
小さく頷いたもののタカヤはそれに従わずに好きなようにした。腕の中にある花は今は自分だけのものだから。
いつからこんなに自分勝手になったのか・・・いや、元々だ。好きな女と初めて寝たのは十五だったか、年上の女でやたらと簡単だった。だからどこかするのなら女の子で満たされていた。男としたのは何時だったか・・・やたら酔っ払ってやったのは覚えている。くだらないゲームで酒を飲んで、やって。
それもあってかカナエを抱くというのも簡単な気持ちだった。カナエは顔は綺麗だし、実際のところオヤジに抱かれるよりはタカヤのほうがいいだろう、そんな愚かな気持ちもあった。
それからはカナエの顔を見ながら、つなぎ止める形になっている。パパ活しているとカナエの口から聞くことはあまりないから、言ったとしても本当はしていないんだと思う。
やっと冷静になったタカヤはカナエの隣に寝転がる。眠るカナエの頭を撫でて、タカヤもまた目を閉じた。
『先生が好きだよ。』
タカヤの絶望した気持ちを救いあげてくれたのはカナエの言葉だ。
怖くて仕方なかったのに、ただ一言、好きだ、と言う言葉だけで胸が満たされる。
カナエを失うのは怖い。それと同時にマユミの顔が浮かんだ。
マユミはどうしても手に入れたい人だ。隣で眠るカナエもきっと同じだろう。
人は皆、自分にないものを見つけたら、それが欲しくなる。
タカヤとカナエは愛しあえるし、愛を与えることはできる、けれどマユミのように包み込むような優しさが欲しい。
きっとマユミは与えてくれるだろう。タカヤとカナエの両方に。どちらか選んだりせずに平等に与えてくれるだろう。
きっとそれが耐えられずにマユミを責めてしまうのはタカヤ、そしてカナエになる。
なんで・・・マユミ君は二人いないんだろうな。
そんなくだらないことを考えてタカヤは隣で眠るカナエを抱き寄せると眠りについた。