ぐったりしたマユミを抱いたままで、タカヤはぼんやりと宙を見つめている。
マユミの部屋は昔のタカヤの部屋にとても似ている。もしかしたら・・・なんて
思うけど、きっと思い過ごしだろう。
少し落ち着いたのか、腕の中で体を返すと胸の上にマユミが寝転んだ。
『もう平気?』
『・・・はい。』
さらりとした髪に指を入れて頭を撫でる。それに反応してかマユミの体が小さ
く動く。
『・・・まだ、少し敏感だ。』
『タカヤさん・・・。』
少し心配そうな顔でマユミが見つめている。
『どうしたの?』
マユミはそっとタカヤの喉に触れると顔を赤くした。
『・・・その・・・喉、痛くなったりしませんか?大丈夫?』
一瞬何のことかと考えて、さっきまでしていたことにたどり着く。タカヤは頷
くと笑った。
『・・・もしかして、マユミ君は初めてだったの?』
先ほどよりも顔を赤くしてマユミは何度も頷いた。
『お、女の子と付き合ってた時に・・・その・・・してあげるって言われたんですけ
ど・・・なんか申し訳なくて・・・。』
ふうん、女の子と。一瞬胸の奥に火がついたのがタカヤにも分かった。前の女
?でもさせなかったのか・・・。
目の前のマユミは女から見ても魅力的だろう。鍛えられた綺麗な体に、美しい
顔、性格は温厚で優しく、どこから見てもパーフェクトだ。それにキスも上手
いのだからセックスでも満足させてもらえるだろうに。
でも俺は良かったのか・・・。
タカヤはマユミの顎に触れるとにこりと笑う。
『どうだった?』
『ど、どうって・・・。』
こうして慌てるところは昔と何も変わってない。容姿が磨かれただけで、中身
はあの頃のままだ。
『す、すごく・・・。』
言葉を止めた唇が開いている。吐息が漏れてタカヤの欲望がふつふつ上がって
くる。さっき満足したのはマユミだけなのだから。
『すごく?』
『・・・気持ちよかったです。・・・それにびっくりした。』
言いたいことがわかってタカヤはフフと笑う。
されるがままは自分で制御しているのとは違う快感がある。
ふと上に乗っているマユミが何かに気付いて体を浮かせた。タカヤは唇を噛む
と片手でマユミの頬に触れる。
『・・・ごめん。気にしないで。すぐにおさまる。』
腕の中に愛する者がいるのだから、こうなるのは仕方ない。けれど無理強いは
したくないし、彼が満足しているのならそれでいい。マユミだけは本当に無理
矢理はしたくない。例え彼がそうしたいと言っても、大切に扱いたいのだ。
『本当に・・・素敵な人になったね。』
心からそう思う。
本当は長く彼の成長を見ていたかった。雑誌の写真だけでは足りなかった。
それでも見られないよりはマシだ。
『マユミ。』
『・・・はい。』
瞬きするたびに睫毛が揺れている。
『愛してると言って。』
マユミの目に涙が滲んだ気がした。